朝鮮学校教職員と支援団体は18日、朝鮮学校生徒への日本人によるヘイトクライム(憎悪犯罪)が多発している現状に対し、これを許さないというメッセージを国として明確にすべきだと法務省人権擁護局に申し入れました(写真中=朝日新聞デジタルより)。
全国朝鮮学校校長会によると、4日の朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)のミサイル発射後、8日までに、「確認できただけで、抗議電話なども含めて全国6つの朝鮮学校で計11件の被害があった」(19日付琉球新報)といいます。
「4日の夕、東京朝鮮中高級学校生徒が電車内で、50代ぐらいの男性から足を踏みつけられ「日本にミサイルを飛ばすような国が高校無償化とか言ってんじゃねーよ」と威嚇された」(同)
きわめて悪質で、絶対に許すことはできません。
これは十分予想された事態です。なぜなら、在日朝鮮人に対するヘイトクライムは、一部の日本人の差別意識の問題ではなく、「国家」によって意図的に作り出されているものだからです。
この場合の「国家」には3つの意味があります。
第1に、政府です。
「拉致事件」や「核・ミサイル」を口実に、何の関係もない朝鮮学校生徒の人権を蹂躙する高校無償化排除を決めたのは安倍晋三政権です。直接手を下したのは今あらためて悪名をとどろかせている下村博文文科相(当時)です(2012年12月28日の記者会見)。
朝鮮学校の存在理由とその意義は、日本の植民地支配の歴史を抜きには考えられません。しかし、安倍政権は戦時性奴隷(日本軍「慰安婦」)、強制動員(「徴用工」)問題、さらには、長崎・端島(軍艦島)、佐渡金山の文化遺産登録などをめぐって、一貫して日本の植民地支配の歴史を改ざんし、責任にほうかむりしてきました。菅義偉前政権、岸田文雄現政権もそれを完全に踏襲しています。
第2に、国会です。
4日の朝鮮のミサイル発射に対し、衆議院(5日)、参議院(6日)はいずれも全会一致(高良鉄美参院議員は棄権)で「北朝鮮に抗議する決議」を挙げました(写真右)。この「決議」はきわめて問題の多いもので、それを「全会一致」で挙げた意味は重大です(8日のブログ参照)。
第3に、メディアです。
NHKはじめ日本のメディアは、朝鮮の「ミサイル発射」のたびに、例外なく、「北朝鮮の挑発」とコメントします。しかし、朝鮮のミサイル発射は米韓合同軍事演習に対抗して行われています。4日の場合は日本も加わった日米韓合同軍事演習(9月30日)が引き金です。
挑発とは問題の原因を作り出した側の行為です。この場合、挑発しているのはアメリカであり韓国であり日本です。
この関係を逆転させて「北朝鮮の挑発」と繰り返すのは、明らかな偏向報道です。
以上のように、政府、国会(全政党)、メディアが総がかりで朝鮮に対して差別と偏見による不当な攻撃を加えているのです。市民のヘイトクライムがなくなるわけがありません。
18日の申し入れに同席した外国人人権法連絡会の師岡康子事務局長は、「日本社会としてどうするのかが問われている。何もしなければ差別を放置しているのと一緒だ」と指摘しました(19日付琉球新報)。
最も問われているのは政府であり、国会(全政党)であり、メディアです。そして、その不当・不正を許している「国民」です。