アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「平和の少女像」守るドイツの良識と日本

2020年10月15日 | 侵略戦争・植民地支配の加害責任

    
 ドイツの市民団体がベルリン市(ミッテ区)に設置した「平和の少女像」に対し、日本政府(菅政権)が再三撤去の圧力をかけたのを受け、ミッテ区当局は市民団体に14日までに像を撤去するよう命じていましたが、区当局は13日、これを見直す意向を示しました。

 ハンギョレ新聞(14日付日本語電子版)によれば、「少女像」を設置したドイツの市民団体(コリア協議会)は13日、約300人で「少女像を守るための」集会・デモを行いました(写真左・中はハンギョレ新聞より。写真右はTBSニュースより)。
 デモ隊はドイツ語で、「ベルリンは勇気を出して、少女像はその場にいるべき」と声を上げながら、ミッテ区役所まで行進しました。

 すると、ミッテ区のシュテファン・フォン・ダセル区長が、区役所前に予告なしに現れ、デモ隊を迎えました。人権団体や反性暴力団体のメンバーらが「少女像の存立理由」について発言すると、ダセル区長は、主催側に自由発言を申し込み、「少女像の存立を要求する人々の話を聞き、状況をよく把握した」とし、「いずれにせよ撤去には時間がかかる。その間、共に討論したい」と、事実上の見直しを表明しました。

 同区長は、「ドイツと日本の外交関係があるため、日本政府の抗議を無視するわけにはいかない」として、撤去命令の背景に日本政府の圧力があったことを認めながら、「ミッテ区だけの問題ではなく、ドイツ連邦とベルリン-ブランデンブルク州政府がともに討論しなければならない問題」だとの見解を示しました。

 これに先立ち、ミッテ区議員らが12日、ミッテ区に少女像の撤去計画の見直しを要求。また13日も集会が開かれる前に区長が所属している緑の党や左派党の議員らミッテ区議員の過半数以上が、ダセル区長に撤去の見直しを求める意見を伝えました(以上、ハンギョレ新聞より)。

 また、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の情報(12日)によれば、シュレーダー元ドイツ首相夫妻(妻は韓国人)が、ダセル区長あてに、「少女像」撤去の決定を撤回するよう要求する手紙を送っていました。

 シュレーダー夫妻は手紙で、撤去命令は「暴力の犠牲者として苦痛を受けた、いわゆる慰安婦ハルモニ(おばあさん)たちの痛みを見捨てる反歴史的決定」と批判し、「ドイツはナチスの歴史を清算して世界中から尊敬されている。ドイツの官庁は日本の戦争犯罪隠ぺいに加担してはならない」と述べています。

 なんという良識でしょう。「少女像」を守ろうとする市民、議員、元首相。それにこたえようとする区長…歴史に対するドイツの市民、政治家の見識、ドイツ社会の底力を改めて見る思いです。

 日本の市民も、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動がネットで緊急に署名を呼びかけ、13日、菅首相、茂木外相に対する抗議文を提出しました。

 その中で、日本政府が「少女像」の設置を妨害するのは「今回が初めてではない」(アメリカ、ドイツ、オーストラリア、中国、フィリピン等)と指摘。それらの碑文が「平和の少女像はあらゆる形態の暴力から保護するための約束である」(フランクフルト平和の少女像)など、「性暴力の根絶と平和」を訴えていることをあげ、「これに対して「日本政府の立場と相いれない」と言うことは、人権と平和の守護をめざす世界の流れに逆行する意思を表明しているようなもの」と指弾しています。

 しかし、メディアはこうした活動を報道しません。この問題に対する日本のメディア、市民社会の無関心・冷淡さは目を覆うばかりです。ドイツとは雲泥の差です。

 ここには、戦時性奴隷・植民地支配への無反省、「性暴力の根絶と平和」をめざす「世界の流れに逆行する思想」に侵されているのは自民党政府だけでない、という日本の深刻な実態が表われているのではないでしょうか。

 

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