アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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百田氏をNHK経営委員に任命した安倍首相の責任

2015年06月30日 | 安倍政権

         

 自民党若手議員の会合(25日)で百田尚樹氏と議員たちが「言論・報道の自由」へ圧力をかけた問題で、菅官房長官は29日、「百田氏の発言が問題になっている」と述べ、谷垣自民党幹事長も、「党のことは私が責任をもって判断する」と述べるなど、安倍首相に責任追及が及ぶの避けよう躍起になっています。
 
 しかし、自民党本部で行われた自民党議員(しかも安倍チルドレン)の会合で、おまけに加藤官房副長官まで出席していたのですから、総理・総裁としての安倍氏の責任は明白です。

 さらにそれだけではありません。安倍氏は百田氏ときわめて親密な関係にあります。そしてその関係から、安倍氏は総理の権限(放送法第31条)を行使して、百田氏をNHK経営委員に任命したのです(今年2月任期切れ)。

 放送法(第15条)でNHKは、「公共の福祉のために・・・良い放送番組」を提供する義務が定められています。経営委員会は「経営に関する基本方針」や「予算」などを決定する最高議決機関です(同29条)。
 特定の新聞・メディアを「つぶさないといけない」と公言する百田氏が、そのNHK経営委員に不適格であることはあまりにも明らかです。

 安倍首相の「百田氏任命」はけっして形式的なものではありませんでした。かつて2期6年経営委員を務めた小林緑国立音大名誉教授は自身が任命された経緯とくらべ、「問題の両委員(百田氏と長谷川三千子氏)が安倍首相と親しく、気脈を通じるお友達だからこそ選ばれた」ことの異常さを指摘しています(「バウラック通信」NO.5)。

 安倍首相が百田氏をNHK経営委員に任命した責任が、いまあらためて問われなければなりません。

 安倍首相はなぜ百田氏をNHKに送り込んだのでしょうか。その狙いをうかがわせるものが、第2次安倍政権誕生前に安倍氏が百田氏と行った「対談」です(「WiLL」2012年10月号=写真右)。抜粋します(小見出しは引用者)。

「左翼系メディア」
 百田 民主党ブームは左翼系メディアと手を組むことで作られましたが、橋下市長は逆に左翼系メディアと対立しながら改革を進めている。
 安倍 そこは橋下さんの才能だと思いますね。政治家はメディアとの対立を極力、避けます。
 百田 テレビにしても、反橋下の声が大きくクローズアップされてしまいますね。
 安倍 私も左翼系メディアの代表格である朝日新聞とは良好な関係ではなかったのですが、朝日は新聞だけでなく、テレビ朝日、『週刊朝日』とあり・・・それが全て敵に回るわけです。こちらはたった一人の戦いです。
 百田 多くの自民党議員も結局、朝日をはじめとするマスコミの声に惑わされたところが大きかったと思います。・・・マスコミに迎合する日和見によって、保守本道(ママ)にブレが生じてしまう。
 安倍 保守本流の道をたじろがずに進んでいきたいと思います。

「新生・自民党」
 安倍 これまでの自民党は、歴代政府の政府答弁や法解釈などをずっと引きずってきましたが、新生・自民党では、そのようなしがらみを捨てて再スタートを切れる。・・・新生・自民党として、河野談話と村山談話に代わる新たな談話を閣議決定すべきです。
 百田 それは大変心強いのですが・・・谷垣総裁の下では「新生:自民党」と言われても、非常に心許ない。

「靖国参拝」
 百田 ズバリ伺いますが、安倍さんが再び総理の座に就いた時には、八月十五日に靖国参拝を行っていただけますか。
 安倍 私ははじめから春季秋季の例大祭の参拝が総理として適切だろうと考えてきました。・・・当然のことながら、いずれかのタイミングで参拝したいと考えています。
 百田 僕は是非、安倍さんに総裁選挙に打って出ていただきたいと思っています。
 安倍 ありがとうございます。・・・政治家として勝負をかけたいと思っています。

 安倍首相が百田氏をNHK経営委員に任命したのは、百田氏のメディア観、歴史観、政治観が自分と一致する強力な応援者だからです。その百田氏が本音を吐露したのが今回の事態です。安倍首相自身の政治責任は免れようがありません。

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