アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

地方自治法改悪と自衛官の“天下り”

2024年05月10日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 地方自治法改悪案の本格審議が9日の衆院総務委員会で始まりました。焦点は、国が自治体に命令することができる「指示権」の創設です。

 その意味について、片山善博・大正大特任教授(元総務相・鳥取県知事)はこう指摘します。

「国はかつて「指揮監督権」を持ち、自治体に「機関委任事務」をやらせることができた。要するに、自治体をアゴで使えた。それはおかしい、というのが00年の地方分権改革でした。国が自治体に指示や命令をするには、個別の法律に基づく根拠が必要だと改めました。国と地方の関係は「対等」になりました。
 改正案では個別の法律に根拠がなくても、国が「非常時」と判断すれば自治体に指示を出せるようになります。国と地方の「対等関係」は根本から崩れ、「上下関係」の時代に逆戻りしてしまう」(4月1日付朝日新聞デジタル)

 加えて強調しなければならないのは、この法改悪は「軍拡(安保)3文書」(2022年12月16日閣議決定)による急速な戦争国家化と一体不可分だということです。政府の念頭にある「非常時」とは「有事」にほかなりません(3月21日のブログ参照)。

 その点で、黙過できない重大な事態が水面下で進行しています。幹部級の自衛官が退職後、「災害担当」などの名目で自治体に再就職する“天下り”が増えているのです。

 7日朝のNHKニュースは、陸上自衛隊1等陸佐が「防災監」として市の職員になり、「災害対応」の指揮を執る訓練を行っている模様を報じました(写真左・中)。
 同ニュースによれば、こうした自衛官の地方自治体への“天下り”は、全国で653人にのぼっています(昨年時点)。

 その顕著な例が表面化したのが沖縄県です。
 
 玉城デニー知事は4月1日、元陸上自衛隊自衛官(1等陸佐)を「危機管理補佐官」に任命しました(写真右)。同ポストは知事部局に新設されたいわば知事直属の補佐官です(4月8日のブログ参照)。

 地方自治法改悪が法的に網をかけて上から地方自治体を支配するものだとすれば、自衛官の“天下り”は有事における自治体の行動、とりわけ自衛隊配備を自治体内部から支配する「トロイの木馬」と言えるでしょう。

 こうした動きが、「土地規制法」による住民運動の監視・弾圧、各地の民間空港・港湾を軍事利用する「特定利用空港・港湾」指定と無関係でないことは言うまでもありません。

 国が戦争を行うためには、地方自治は邪魔なのです。それを取り払って自治体を国の支配下に置く策動がさまざまな方向から強まっている。それが日本の現状です。

 
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