アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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翁長知事の「法的義務」違反と県政与党の黙認

2015年10月10日 | 沖縄・翁長知事

   

 安倍改造内閣は、あらためて「辺野古埋立工事強行」の姿勢をあらわにしています。安倍政権にその口実を与えているのは、翁長知事がいまだに「埋立承認の取り消し」を行なっていないことです。
 翁長氏は9日の時点でも、「連休明けの早い時期に取り消しに踏み切る考え」(10日付沖縄タイムス)を示したにすぎません。翁長氏の「取り消し先送り」はニュースにならないほど繰り返されていますが、けっして見過ごすことはできません。なぜなら、それは「政治判断」の問題ではなく、翁長氏の法的義務・責任の問題だからです。

 「当委員会の検証の結果、本件公有水面埋立出願は、公有水面埋立法の要件を充たしておらず、これを承認した本件埋立承認手続きには法律的瑕疵が認められる
 翁長氏自身が設置した第三者委員会がこう指摘した報告書を翁長氏に手渡したのは7月16日でした(写真中)。

 この報告書の意味は、「法に反する承認が行われたということだ。翁長雄志知事には違法性を是正する責務があ(る)」(仲地博沖縄大学長、7月17日付沖縄タイムス)ということです。

 オリバー・ストーン氏ら海外の著名29氏による「声明」(8月22日)も、「第三者委員会による検証・・・これが意味することは、翁長知事はこれを取り消す法的義務があるということである」と明確に指摘しています。

 仮に連休明けの13日に取り消したとしても、第三者委の報告からちょうど90日が経過したことになります。この間、「1カ月休戦」も含め、安倍政権は「辺野古」に頭を悩ますことなく、戦争法成立を強行することができたわけです。
 翁長氏の「90日の法的義務違反」の責任はきわめて重大です。

 ここで見過ごすことができないのは、こうした翁長氏の「法的義務違反」に対し、日本共産党、社民党、生活の党、社大党、県民ネットなど県政与党が、なんの異議もはさまず、翁長氏に唯々諾々と従っていることです。

 例えば7日終了した沖縄県議会9月定例会の代表・一般質問で、「与党は基地問題に関する言及を最小限にとどめ、(翁長氏への―引用者)配慮をにじませた」(9日付沖縄タイムス)のです。「与党から国連演説の意義を強調する言及はあったが、取り消し時期の明示を迫る場面はなかった。・・・与党のベテラン県議は、先月10日に知事公舎で開かれた知事と与党の連絡会議で、取り消しのタイミングを知事に一任した経緯を指摘。『与党各議員に、あのときの一任が共通認識としてある。こちらから取り消しをせっつくようなことはしない』と述べ」(同)ています。
 翁長氏の法的義務違反に、県政与党は白紙委任を与えてしまったのです。

 県議会の質疑で、もう1つ注目すべきことがありました。
 日本共産党の西銘純恵議員が6日の一般質問で、共産党がいま最重要課題としている「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」について、「知事の見解を問う」と質問したのに対し、翁長氏はなんと、一言も言及せず、スルーしてしまったのです。そして翁長氏に代わって町田優知事公室長がこう答えました。「個別の政党の動きについては見解を控える」(議会中継録画より)

 戦争法に対する見解表明など重要問題は町田室長に答弁させるのが翁長氏の常套手段です。それにしても、戦争法の廃止、そのための「国民連合政府」の提唱を「個別の政党の動き」と切り捨てるとは、どういう感覚でしょうか。翁長氏が戦争法に反対でないことは分かっていますが、それにしても、木で鼻をくくった答弁とはこのことです。
 問題は、党の最重要課題について、ここまでそっけない態度を示されながら、共産党県議団が追加質問どころかなんの異議もはさまず、言われるままにしていることです。

 共産党など県政与党は、いつまで翁長氏のやることにおとなしくついて行くつもりでしょうか。
 ただすべき見解はきっちりただし、「法的義務違反」にははっきり意義を申し立て、早急に義務を履行させる。それが与党の役割ではないでしょうか。


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