アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

米兵集団女性暴行事件の裁判傍聴③-むなしい判決

2013年03月02日 | 日記・エッセイ・コラム

Tisaimae 米兵集団女性暴行事件の判決が3月1日、那覇地裁(写真)でありました。これにも抽選で傍聴することができました。むなしい判決でした。
 集団強姦致傷罪の1人が懲役9年(求刑10年)、それに強盗罪が加わったもう1人が懲役10年(同12年)。事件の悪質性からみても、米国内の場合と比べても、求刑をも下回る判決は軽すぎます。
 でもむなしさはそれだけではありません。判決文のどこにも「米兵」のべの字も「米軍」べの字もないのです。裁判長は「行為を冷静に判断した」とのべ、被告らが米兵であったことは考慮しなかったことを示唆しました。裁判の中で被告の1人は「米軍基地があるからこんなことが起こってと思わないでほしい」などとうそぶき、弁護人は「米兵だから裁かれるなら差別だ」と言いましたが、判決はそれに屈し、肝心な問題から逃げたのです。
 これでいいのでしょうか。被告らは米軍人であるから沖縄に立ち寄り、数時間後には軍命で沖縄を去りグアム基地へ移動(高飛び)できることが動機の一部であったことは被告ら自身が認めているのです。仮に量刑判断に「米兵」は考慮しないとしても、事件の背景として、相次ぐ米兵犯罪に対し米軍はどういう教育をしているのか、米兵は沖縄県民をどうみているのかなどを解明する必要があります。それがなければ再発防止にはなりません。
 県民である6人の裁判員はそうした米兵犯罪の特徴、米軍基地の存在について議論しなかったのでしょうか。とてもそうとは思えません。報道では判決後の記者会見で女性の裁判員の1人は途中で退席したそうです。苦悩がうかがえます。そうした議論が判決に微塵も反映されないのでは、なんのための「裁判員裁判」でしょうか。
 米軍関係者が弁護人の横でメモをとっていることはきのう書きましたが、判決のあと、その男たちと弁護人が廊下でなにやら相談しているのを偶然見かけました。男の1人とは英語で話していました。顔は日本人に見えましたが実はアメリカ人、おそらく米軍人か米政府官僚そのものだったのでしょう。裁判は終始、米軍の監視下でおこなわれ、その思惑通りの結果になったのです。

<今日の注目記事>

 ☆「求刑下回る理由示せ  中野正剛沖縄国際大学教授(刑法学)」(「沖縄タイムス」2日付社会面)から
 「職業裁判官は、量刑においても裁判員と協働して裁判所の意見を組み立てていくのが市民参加の趣旨だ。しかし県内では、最初の裁判の判決を除き、裁判員の意見を判決文の中に一部分でも明示的に取り上げた判決が見られない。今回の事件は性犯罪で、女性にとっては『殺人』に匹敵するものだ。全国的に性犯罪の裁判員裁判は、他の罪種と比べて検察の求刑通りか求刑を超える判決が少なくなく、それは市民感覚と職業裁判官の間の、性犯罪に対する感覚のずれがあるとみられている。今回の事件では求刑を下回ったが、その理由を判決で明確にする必要があるだろう。一方、今回の事件は、米兵による事件・事故が相次ぐ県内で、県民が裁く意義がある以上に、とりわけ全国でも米兵による強姦事件の起訴事案が少ない中で、判決文に量刑が求刑意見を下回った点の具体的な説明が見られないのは極めて残念だ。裁判所には、性犯罪被害者のためにも、市民の意見を分かりやすく盛り込んだ判決内容を示すことが求められている」


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