アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

立憲民主党は「期待」できる政党なのか

2017年10月23日 | 政治・選挙

     

 総選挙の結果は、事前の「世論調査」通り、「自民圧勝」に終わりました。公明、維新、希望を含め改憲勢力が3分の2を超え、いよいよ憲法「改正」が問われることになります。

 そんな中、「野党」で唯一「躍進」した立憲民主党に対し、「民進党の理念・政策や野党共闘を重んじる筋の通し方への共感もあった」(23日付朝日新聞社説)などと賛辞が送られ、「野党共闘」を望む人たちからも「期待」が高まっているようです。自党は議席を半減させた日本共産党の志位和夫委員長も、「立憲民主党が躍進して嬉しい」(22日夜各社のインタビュー)と述べています。

 しかし、果たして立憲民主党はそうした「期待」に応えられる政党でしょうか。
 立憲民主党の実態を3つの視点から検証します。

<生い立ち>

 ●民主党政権の責任…枝野幸男代表をはじめ主要メンバーは民主党政権時代に中枢にいた人たちです。民主党政権は市民の期待を数々裏切りました。辺野古新基地を推進したのも、朝鮮学校の無償化にストップをかけたのも、尖閣諸島を「国有化」して緊張を高めたのも、民主党政権です。枝野氏自身、菅直人政権の官房長官として、「3・11」で「ただちに人に影響はない」という無責任な会見を繰り返した本人です。
 こうした民主党政権の汚点を枝野氏らはどう考えているのか。責任ある総括はいまだになされていません。

 ●民進党と希望の合流の責任…前原誠司氏の希望の党への合流が、「野党共闘への背信行為」(共産党・志位委員長)であることは論を待ちません。小池百合子氏とともに前原氏は「自民圧勝」の陰の立役者です。
 しかし、その責任は前原氏だけにあるのではありません。民進党が希望の党への合流を正式に決めたのは、9月28日の両院議員総会です。ここで希望との合流が、「満場一致」で決まったのです。つまり枝野氏(当時代表代行)はじめ立憲民主党のメンバーも全員、希望との合流に賛成したのです。
 その後、小池氏による「排除」が始まり、排除されそうになったので枝野氏は立憲民主党を立ち上げました(10月2日)。もし小池氏がもっと巧妙にやっていれば、枝野氏らはあのまま希望の党にとどまっていた可能性は小さくありません。
 野党共闘に対する「背信行為」である希望の党への合流には、枝野氏らにも責任があります。この点を不問にすることはできません。

<政策>(以下、政策の引用は21日付中国新聞=共同配信の各党一覧表から)
 立憲民主党の政策は、果たして安倍・自民党との「対抗軸」になるでしょうか。

 ●「安保法制反対」の次は…同党が安保法制に反対するのは、集団的自衛権の行使にあたるという理由です。そこで安保法制を廃止したあとは、「領域警備法の制定と憲法の枠内での周辺事態法強化で…専守防衛を軸とする現実的な安保政策を推進」するとしています。
 しかし、集団的自衛権と個別的自衛権の境目はあいまいです。共産党は周辺事態法にも反対しています。「現実的な安保政策」とは何でしょうか。

 ●「9条改悪反対」も条件付き…憲法9条の改悪については、「安保法制を前提にした憲法9条の改悪に反対」としています。ということは「安保法制を前提」にしなければ9条の改定も否定しないということになります。

 ●辺野古新基地に反対せず…もともと辺野古新基地を推進してきた同党のメンバーたち。今回の選挙でも「辺野古移設については再検証する」というだけで、「反対」とは明言しませんでした。

 ●北朝鮮への圧力強化では自民と同一…「北朝鮮を対話のテーブルにつかせるため圧力を強める」というのは、安倍首相と変わりません。「平和的解決に向け」とは言っていますが、軍事的圧力も否定していません。経済的圧力の強化も市民を苦しめるだけで、人道に反します。

 ●あいまいな「原発ゼロ」…「一日も早く原発ゼロへ」としながら、「再稼働は現状では認められない」とし、状況が変われば「再稼働」を認めることを示唆しています。

 ●「消費税10%」も基本的に容認…「将来的な国民負担の議論は必要」としながら、「直ちに消費税率10%へ引き上げることはできない」と、今後の「10%へ引き上げ」容認に含みを持たせています。

<連合との親密な関係>

 立憲民主党の性格を見るうえで重要なのは、連合(神津里季会長)との親密な関係です。
 枝野氏ら幹部は党を立ち上げた直後(10月6日)に、そろって連合本部を訪れ、支援を要請しました。そして選挙が終わった翌日の23日にも、連合を訪れて神津会長と会談し、「連携」を確認しました(写真中)。

 連合は労働組合の本旨に反し、大企業との協調をすすめる一方、組合員に対し「特定政党支持」という反民主的な締め付けを行って政治に関与しています。連合が共産党との共闘を強く嫌っていることは周知の事実です。同党が「原発ゼロ」の立場にきっぱり立てないのも、連合との関係があるからです。

 そのような連合に再三支援を要請し、連携するのは、立憲民主党自身の民主性に大きな疑問符を付けるものです。だいいち、連合との親密な連携と、共産党との共闘をどうやって両立させるつもりでしょうか。

 以上、立憲民主党の実態を3つの視点から見ましたが、根底にあるのは、同党が日米軍事同盟(安保条約体制)を容認・推進する政党だということです。
 自民党政治のほんとうの対抗軸になるには、安保・外交の面はもちろん、経済の面からも、日米軍事同盟に反対することが不可欠です。
 日米軍事同盟(安保条約)に反対する世論は現時点では多数派ではありませんが、その旗を掲げ続け、地道に支持を増やしていく以外にありません。
 日米軍事同盟を容認する限り、自民党の補完勢力にはなっても、真の対抗軸にはなりえません。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

共産・立憲・社民は正式な「政策協定」を締結せよ

2017年10月09日 | 政治・選挙

       

 あす公示を迎える総選挙は、安倍政権が危機を迎えているなか、それを補完する小池「希望の党」などとの「保守2大政党」に、改憲に必要な3分の2の議席を許すかどうかの重大な選挙です。

 それだけに、自民党政治に反対する平和・革新・民主勢力の役割は重大です。日本共産党などが主張する「市民+野党の共闘」の重要性がますます大きくなっています。

 ところが、いま行われようとしている共産党、立憲民主党、社民党3党の「共闘・選挙協力」には重大な欠陥があります。それは3党の間で正式な「政策協定」(組織協定を含む)が締結されていないことです。総選挙だけでなく今後の「市民+野党の共闘」を進めていくうえでも、これは看過できません。

 共産党の志位和夫委員長は8日のNHK討論で、「3党は政策協定を結んでいる」とし、それは市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合。山口二郎法政大教授ら、写真右)が3党に示した「7項目」だと述べました(写真左)。

 「7項目」とは次の通りです(要約は引用者)
①憲法改正とりわけ9条改正反対
②秘密保護法、安保法制、共謀罪法の白紙撤回
③原発再稼働を認めず原発ゼロ実現を目指す
④森友・加計・日報隠蔽疑惑の徹底究明
⑤保育・教育・雇用政策の飛躍的拡充
⑥生活を底上げする経済、社会保障政策
⑦LGPTや女性に対する差別撤廃

 これらが喫緊の重要課題であることは論を待ちません。3党がこの市民連合の要求に賛同し実現をめざすことは評価されます。
 しかし、これはあくまでも「市民連合」が3党に宛てた「要望」です。政党間の「政策協定」ではありません。市民の「要望」を政党間の「政策協定」だとすることはできません。
 その問題点は少なくとも4点あります。

 第1に、「7項目」は確かに重要な要望ですが、当面する重大課題はこれだけではありません。いくつかの重要課題が抜けています。その1つは、核兵器廃絶・核兵器禁止条約の署名・批准です(7日のブログ参照)。もう1つは、沖縄辺野古の新基地建設阻止です。

 市民団体の「要望」に完全を求めているのではありません。市民団体がそれぞれの関心事で要望するのは当然です。しかし、政党はそうはいきません。少なくとも、核兵器廃絶と辺野古新基地阻止は今度の総選挙でも重大な争点にすべきです。3党の「共闘」はこれらの問題にどう臨むのか、有権者に明確にする必要があります。しかし、3党間で「政策協定」が議論されていない状況ではこれらの課題は棚上げされています。

 第2に、「7項目による選挙協力」の位置づけが不明確なことです。立憲民主党の枝野幸男代表は、「あくまでも喫緊の重要課題で、この(3党の)枠組みで政権がどうこうという話ではない」(8日のNHK討論)と強調しています。では、選挙後に3党の「共闘」はどうなるのか。選挙後の国会では統一会派を結成するのかどうか。今回の「選挙協力」と「政権を目指す枠組み」(連立政権)はどういう関係になるのか。3党間で協議して公表されなければなりません。

 第3に、「連合」との関係です。連合の神津里季会長が小池百合子氏と前原誠司氏との秘密会談(9月26日)に同席し、希望の党の立ち上げ・民進党の解体に一役かったことは周知の事実です。その神津氏(連合)は、共産党とは絶対に共闘しないという反共主義です。
 ところが枝野氏はじめ立憲民主党の幹部は揃ってその連合を詣で、支援を要請(6日、写真中)。連合も支援を約束しました。
 立憲民主党と連合のこうした関係のなかで、はたして「3党共闘」はどういうことになるのでしょうか。

 第4に、共産党は市民連合が立憲民主党に「7項目」の要請を行う(3日)前から、枝野氏(立憲民主党の党首)が立候補する埼玉5区の候補者を取り下げました。志位氏は2中総でこれは「連帯のメッセージ」(4日付しんぶん赤旗)だと文学的な表現をしましたが、きわめて不可解です。ここには「政策」の前に「選挙協力」ありきが表れていると言われても仕方がないのではないでしょうか。

 こうして中央段階で正式な「政策協定」が締結されていないことによって、地方ではどういう現象が起こっているでしょうか。

 共産党は289の小選挙区のうち241で候補者を一本化しました。中国地方では4選挙区で共産党は候補者を取り下げ、「民進党出身者」を実質的に支援しています。ところがー。
 「共産党は現時点で推薦を出していない。岡山1区以外の3選挙区は政策協定も結ばれない。…民進党最大の支援団体の連合は共産党との協力への抵抗感が強い。民進党広島県連の幹部は「共産党とのタッグを前面に出せば失う票もある」と漏らす。…民進党島根県連の幹部は…言う「これで野党共闘といえるのかどうか。共産党が勝手に取り下げてくれた」」(8日付中国新聞)

 そもそも「政策協定」などそっちのけで共産党の票だけが欲しい、というのが民進党でした。枝野氏ら立憲民主党幹部もその点では民進党を受け継いでいるのではないか、という疑念は消えません。それは「市民+野党の共闘」への逆行です。
 
 こうした党利党略を許さず、民主的な「市民+野党の共闘」を前進させるためにも、政党間の正式な「政策協定」の締結が不可欠です。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ICANノーベル平和賞受賞」と「総選挙各党政策」の落差

2017年10月07日 | 政治・選挙

       

 10日の公示を目前に、各党が政策発表を行うなど、総選挙へ向けた動きが活発になっているそのさ中、今年のノーベル平和賞が、核兵器禁止条約に奔走した国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)に決まりました(6日)。

 時期が重なったのは偶然ですが、両者を対比して、「日本の政治・政党」がいかに世界の現実・平和の願いから遊離しているかを痛感せざるをえません。

 ICANのベアトリス・フィン事務局長は受賞会見で、「この賞は広島と長崎の被爆者、世界中の核実験の被害者のためのもの」と述べるとともに、「今こそ世界の国々が核兵器に反対を表明すべき」として、核兵器禁止条約に反対しているアメリカはじめ核保有大国とそれに追随する日本政府を厳しく批判しました。

 ノーベル平和賞の「授賞理由」もこう述べています。
 「一、核兵器禁止条約だけでは核兵器を一発も削減できない。現段階での核保有国とその同盟国は賛同していない。
 一、核なき世界実現に向けた次の一歩を踏み出すには、核兵器保有国の参加が不可欠ということを強調したい。核保有国には、核兵器削減に向けた真剣な交渉を始めるよう求める。」(7日付中国新聞)

 ICANにノーベル平和賞が授与された意味が、その活動を称えると同時に、核兵器禁止条約に反対する核保有国と日本など同盟国の責任を追及することにあるのは明白です。

 その日本の政党は、今度の総選挙で「核廃絶」をどう位置付けているでしょうか。

 米トランプ政権に追随する安倍・自民党はもちろん、”第二自民党”の「希望の党」はじめほとんどの野党も「核廃絶」には触れていません。
 日本共産党は「総選挙政策」(4日発表)で、10項目の「重点政策」の6番目に、「日本政府は核兵器禁止条約に署名せよ」と掲げています。しかし、「政策」の総論部分(前文)に「核廃絶」はなく、これを総選挙で前面に掲げようとする姿勢は見られません。「市民と野党の共闘」の「共通政策」(7項目)の中にも「核兵器廃絶」はありません。

 とりわけ重大なのは、政府に禁止条約への署名を求める共産党でさえ、核保有超大国のアメリカの責任には一言も触れていないことです。

 このことは、各党の「対北朝鮮政策」と密接に関連していることを見落とすことはできません。

 北朝鮮に対し、安倍首相は「対話」は無意味だとしてアメリカの武力行使を含む「圧力」「制裁強化」一辺倒です。これに対し共産党や社民党は、「対話」も必要だとしています。しかし、その「対話」は、「経済制裁強化と一体」(共産党の「総選挙政策」)というもの。「制裁強化」という点では自民党も共産党も変わりません。しかし、「経済制裁」が打撃を与えるのは北朝鮮市民の生活と健康・生命であることは言うまでもありません。

 さらに、自民党から共産党までの「対北朝鮮政策」の大きな共通点は、朝鮮半島の緊迫した情勢を作り出している元凶であるアメリカの責任にはまったく触れず、一方的に北朝鮮を「強く抗議・糾弾」(共産党)していることです。

 朝鮮半島情勢を平和的に解決するカギは、アメリカが「朝鮮戦争休戦協定」に違反する韓国との合同軍事演習をやめ、韓国から核兵器を撤去することです。そうすれば北朝鮮は平和的に対話のテーブルに就くと一貫して表明しています。

 アメリカの責任には触れず北朝鮮を一方的に「糾弾」する日本の各党の「政策」は、「平和的解決」に逆行するものと言わざるをえません。 

 ICANのノーベル平和賞受賞を機に、日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を迫るとともに、核保有超大国のアメリカに対し、同条約への賛同とともに、朝鮮半島はじめ東アジアから直ちに核兵器を撤去することを強く要求する必要があります。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「北朝鮮の脅威」口実にした安倍「国難突破解散」の危うさ

2017年10月05日 | 政治・選挙

       

 小池百合子氏の「希望の党」が自民党補完勢力であることが次第に明らかになるにつれ、世論調査の「期待」度も低下しています。早くも化けの皮がはがれつつあるといえます。

 それと反比例するように息を吹き返しつつあるようにみえるのが安倍首相です。政策を示さない小池氏を念頭に、「誠実に愚直に政策を訴えていく」などと言い始めています。
 しかし、もともと「政策」などそっちのけで、憲法上重大な疑義のある党利党略、私利私略解散を強行したのは安倍氏です。それが元凶であり、安倍氏に「政策」云々を語る資格はありません。

 安倍氏は9月25日の記者会見(写真左)で、「この解散は国難突破解散だ」とし、「国難」の中身として「少子高齢化」と「北朝鮮の脅威」の2つを挙げました。その後の街頭演説でも時間の大半を「北朝鮮」に使っており、「北朝鮮の脅威」という「国難」から「国を守る」と連呼してこの選挙を乗り切ろうとしていることは明らかです。

 「北朝鮮の脅威」を「国難」とするこうした安倍氏のレトリックはきわめて危険です。

 そもそも、安倍氏の言う「北朝鮮の脅威」なるものが本当だとしたら、そのさ中になぜ解散したのか。安倍氏が解散を強行したのは、「北朝鮮の脅威」がフィクションであることを自ら証明したことにほかなりません。
 そうでないというなら、安倍氏は「北朝鮮の脅威」のさ中に政治空白をつくって国民を危険にさらしたことになり、それだけで首相・政治家失格です。

 為政者が「国難」を声高に唱えるときは要注意です。

 ナチズム研究第一人者の対馬達雄秋田大学名誉教授は、ヒトラーと安倍氏を比較してこう指摘しています。

 「1933年、首相となったヒトラーは、大統領に緊急措置令を出させて政敵を弾圧し、さらに自分自身に全権を委任させる「授権法」を成立させました。一方、今の日本の政治はどうか。自民党の改憲草案には、首相に権限を集中させる緊急事態条項があります。「国民と国家を防衛する」としてナチスは独裁を進めましたが、「国難突破解散」と銘打った安倍晋三首相と、私には重なって見えます」(4日付中国新聞インタビュー)

 ヒトラーだけではありません。帝国日本は1941年9月、「帝国国策遂行要項」を決定し、天皇裕仁がこれを裁可しました。その冒頭で「帝国は自存自衛を全うする為、対米(英、蘭)戦争を辞せざる決意」を打ち上げ、日本は太平洋戦争に突入したのです。「敵」をつくって「脅威」をあおり、「国を守る」を口実にするのが、戦争推進勢力の常とう手段です。

 「北朝鮮の脅威」なるものが、安倍政権の延命とともに、日米軍事同盟と戦争法(安保法制)による日本の参戦の口実にされようとしていることを、歴史の教訓から学ぶ必要があるのではないでしょうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「政権交代」「二大政党制」という神話

2017年10月03日 | 政治・選挙

       

 「希望の党」の小池百合子氏や前原誠司らの動きの動機(口実)は、「政権交代」「二大政党制」の実現に尽きます。彼らの後ろには、それを持論とする小沢一郎氏がいることは明白です。
 「政権交代」信奉は他の野党にも蔓延しています。市民の中にも「政権交代」で政治はマシになるのではないかという思いは少なくないようです。
 果たしてそうでしょうか。

 直近の「政権交代」は、自民党政権から民主党政権(2009・9・16~2012・12・25)への交代でした。その結果はどうだったでしょうか。
 慶応大研究センターの世論調査によると、「政権交代で政治は良くなったか」との質問には、「良くなった」は3%にすぎず、「変わらない」が58%、「悪くなった」が36%という評価でした(2012年3月調査、小林良彰慶大教授『政権交代』中公新書2012年)。

 「どうして政権交代がもてはやされるのだろうか。それは、政治の神話に起因する。いろいろな政治の神話のなかでも一般に流布しているのが「政権交代神話」と「二大政党制神話」である。…政権交代さえすれば政治が良くなるというのは神話にすぎない。政策が変わらない政権交代では政治家の権力闘争に過ぎず、有権者にとっては意味がない」(小林氏、前掲書)

 では、何が必要なのでしょうか。

 「ここで問われるのは、政治家ばかりではなく有権者も同様である。選挙で自分たちの代表者を選択する際に、政策に基づいて投票を行っているのか。また、前回選挙から当該選挙までの間の政治家の業績に対する評価に基づいて投票を行っているかも問われることになる。
 こうした争点態度業績評価に基づいて投票行動を決定しているのではなく、そのときの首相の個人的な人気によって情緒的に投票を決定しているとしたら、有権者が選挙における「民意の負託」を通して、自分たちで自分たちのことを決定するという間接代議制の「擬制」(同一・実現の意ー引用者)は成立しない」(小林氏、前掲書)

 山口二郎北海道大教授も民主党政権を振り返ってこう指摘します。
 「日本の政治を立て直すために何が必要か…いま我々がなすべきことは、民主主義の回復である。何が我々のための政策か、我々自身によって議論し、定義することである。民主主義の欠乏を克服するためには、より多くの民主主義を我々自身が実現するしかない」
 「民主主義は国会の中や選挙の時だけ存在するのではない。街頭にも民主主義はある我々が主権者として、国の政策に声を上げることが今ほど必要な時はない」(山口氏『政権交代とは何だったのか』岩波新書2012年)

 「政権交代」すれば政治が変わる、良くなるというのは「神話」です。肝心なのは「政策」です。基本政策が変わらなければ政治は変わりません。

 同時に、「政権交代神話」「二大政党制神話」と密接不可分な小選挙区制の見直しが不可欠です。

 小選挙区制は大量の死票を生む(「4割の得票で8割の議席」)非民主的な選挙制度であることは自明ですが、同時に、日本社会の現状に照らしても見直さねばなりません。

 「小選挙区制は、②の点(国民の意思を公正かつ効果的に国会に反映させるという民主的代表の論理ー引用者)に大きな問題があり(第三党以下の少数党にきわめて不利に働く)、イギリスのような社会の均質性の度合いが比較的に強いところではともかく(そこでも近時多くの問題が指摘されているが)、国民の価値観が多元的に分かれている国においては、適切ではない」(芦部信喜『憲法 第五版』岩波書店)

 経済格差が拡大して貧困率が高く、価値観が多様化している日本で、市民の多様な考えを反映させ要求を実現する選挙制度として、小選挙区制はふさわしくありません。

 「民主主義を回復するためには、現在の衆議院の選挙制度、特に小選挙区制度を廃止すべきだという声が徐々に広がってきた。確かに小選挙区制は二大政党への集約化をもたらしたが、政党を無原則な方便にしたことも否めない。理屈としては、比例代表を基本とした選挙制度の方が、民意を反映しやすい」(山口氏、前掲書)

 どんな「政策」「選挙制度」を選択するのか。問われているのはわれわれ「主権者」です。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これが小池百合子氏の素顔ー右翼・核武装・原発推進・朝鮮敵視・・・

2017年10月02日 | 政治・選挙

       

 メディアは小池百合子氏をまるで安倍政権と「対決」するキーパーソンのように持ち上げていますが、とんでもない話です。安倍首相は小池氏とは「安全保障、基本的な理念は同じだ」(9月25日の解散会見)と認めています。

 小池氏が改憲・安保法制(戦争法)推進者であることはよく知られていますが、安倍氏との共通点はそれだけではありません。あまり表面化していない小池氏の素顔を見てみましょう。

 ★右翼・日本会議と深い関係…自民党議員当時(今年7月まで)は、日本会議国会議員懇談会(日本会議議連)のメンバーで、副会長(2014年4月現在、俵義文著『日本会議の全貌』)。日本会議は「皇室を敬愛する」(「日本会議がめざすもの」)改憲団体です。

 ★「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」メンバー(国会議員当時)。

 ★「核武装」論者…●「(日本の核武装について)今後の国際情勢によっては検討すべきだ」(2012年衆院選挙の候補者アンケート、毎日新聞HPより。写真右)

            ●「軍事上・外交上の判断において核武装の選択肢は十分あり得る」(2003年雑誌「Voice」の対談で。写真中)

 ★原発推進論者…「(2030年代の原発稼働ゼロを目指すことについて)支持しない」(同上毎日新聞アンケート)

 ★沖縄のメディア攻撃…「小池氏は沖縄担当相時代の2006年7月に、那覇市内での講演で基地問題を念頭に「沖縄のマスコミとアラブのマスコミは似ている。反米、反イスラエルでそれ以外は出てこない」と発言」(9月29日付沖縄タイムス)

 ★韓国人学校用地貸与を白紙化…都知事就任後初の定例記者会見で「都有地を韓国人学校の用地として有償貸与する計画について「白紙に戻す」と明言した」(2016年8月6日付毎日新聞)

 ★朝鮮学校への補助打ち切りの「調査書」を復活…「朝鮮学校が朝鮮総連の強い影響下にあると結論づけた平成25年の都調査報告書が、HPからいつの間にか削除されていたことが明らかになった。気色ばんだ小池が再掲載を指示。すぐに朝鮮学校の問題点を含めた報告書がHPにアップされた。即断即決だった」(2016年9月20日付産経新聞)

 ★朝鮮人大虐殺の追悼文拒否…毎年9月1日に墨田区内で行われる関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式に、1970年代から歴代都知事(あの石原慎太郎氏も含め)が送っていた追悼文を、小池氏は送ることを拒否。「(主催)団体側は、「震災時に朝鮮人が虐殺された史実の否定にもつながりかねない判断」と強く抗議」(8月24日付東京新聞)

 これが小池氏の素顔であり、安倍氏が「基本的な理念は同じ」という所以です。
 メディアは小池氏のこうした実態を棚上げして「小池人気」なるものをあおっていますが、空疎な劇場型「報道」はいいかげんに止めて、政治家・政党の真の姿を有権者に伝えるべきです。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

反自民勢力は「6つの緊急政策」で新たな共闘を

2017年09月30日 | 政治・選挙

     

 「希望の党」をめぐっていま起こっている事態は、複雑なようで実は単純です。

 安倍政権は「森友・加計問題」もあって支持を失ってきた。それに危機感をもった自民党政治擁護勢力(国家権力)は、安倍政権とは違う保守勢力をつくり自民党政治の継続を図る戦略に出た(「保守2大政党」による体制維持)。その新勢力の看板に据えられたのが小池百合子氏。小池氏は以前から思想・政策的に近い前原誠司氏を取り込んで民進党を解体し、「4野党共闘」を吹き飛ばした。

 メディアは選挙の構図を「安倍(自民)対小池(希望)」と描き、相も変わらぬ劇場型「報道」で他の党を選挙の土俵から押し出そうとしている。

 選挙の結果、自民が勝っても「希望」が勝っても、自民党政治は安泰。両者合わせて改憲に必要な3分の2の確保は確実。

 以上が自民党政治継続勢力のシナリオでしょう。そして事態はその思惑通り進んでいるように見えます。

 ところが、この中でおそらく彼らは想定しなかった(あるいは過小評価した)であろう、彼らとって好ましくない現象が生まれつつあります。
 それは、「反自民勢力」(「リベラル」も「革新」も「民主・平和勢力」もふさわしい言葉ではないので、それらの意味を総合してこう呼びます)が、新たな結集(共闘)をする条件・可能性が出てきていることです。

 「憲法や安保という政治の根本で違う者が一緒の政党にいるのはおかしい」という小池氏の選別の論理は、この限りでは正論です。したがって、民進党が解体・分裂することはけっして悪いことではありません。
 一方、共産党と社民党の間で選挙協力が行われようとしているのは好ましいことです。

 反自民勢力(市民・政党)は、いま、総選挙に向けて新たな共闘関係をつくるべきです。
 そのさい肝心なのは、言うまでもなく、共闘の一致点となる共通政策です。

 共産党の志位和夫委員長は、「安保法の廃止」を訴える民進党出身者とは連携すると言いましたが(29日、写真右)、「安保法」だけでは不十分です。

 日本の政治を根本的に変えるには、日米軍事同盟(安保条約)の廃棄が喫緊の課題ですが、残念ながらいまそれが一致点になる状況ではありません。
 そこで、今回の選挙で、反自民勢力が一致すべき、一致できる、「6つの緊急政策」を提言します。

 ① 戦争法(安保法)、共謀罪法の廃止。

 ② 憲法9条の改定反対。

 ③ 沖縄の辺野古新基地建設反対。

 ④ 対北朝鮮は制裁強化ではなく対話(協議)を促進。

 ⑤ 核兵器禁止条約の署名・批准。

 ⑥ オスプレイ購入はじめ軍事費を削減して福祉・教育へ。

 これは平和と民主主義(立憲政治)を願う者にとっては譲れない当面の課題(政策)です。同時に、思想・信条の違いを超えて、多くの市民が結集できる要求だと思いますが、どうでしょうか?


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自民大敗は当然も、政策論争なき選挙では政治は変わらない

2017年07月03日 | 政治・選挙

     

 都議選で自民党が過去最低を下回る大敗を喫したのは、安倍政権に対する世論の強い批判を反映した当然の、予想された結果です。安倍政権・自民党にとって大きな打撃であることは言うまでもありません。

 しかし、その意義を過大評価することはできません。なぜなら、この結果は安倍・自民党の「加計隠し」、失言・暴言が大きく作用したもので、けっして政策が批判された結果とは言えないからです。政策論争なき選挙では、いくら大臣の首をすげ替えても、日本の政治は変わりません。

 それを示す象徴的な問題が、稲田朋美防衛相に対する追及です。
 民進党や共産党は、稲田氏が選挙応援演説で「自衛隊としてもよろしく」言ったのは、「日本最大の実力組織」である自衛隊を政治利用するものであり、「中立性」を損ねるものだと追及しています。
 それはもちろん正論です。稲田氏や自民党を含めだれも否定できない正論です。だから稲田氏は「誤解」という言葉を乱発しているのです。しかし、これは建前論です。

 第1に、自衛隊は「実力組織」などというきれいごとではなく、軍隊であると明確に言う必要があります。軍事費の比較では世界第9位、アジアでは中国に次いで第2位の巨大な、対米従属の軍隊です。

 第2に、自衛隊と自民党・政権との癒着は周知の事実です。自民党の防衛族は中谷元前防衛相をはじめ多くの自衛隊出身者が主要ポストを占めています。

 第3に、そもそも自衛隊は前身の警察予備隊から、「反体制」の市民・団体を抑える治安出動を目的として設置されたものです。自衛隊法が第3条(任務)の第1項で、「必要に応じ、公共の秩序維持に当たる」と明記しているのはそのためです。

 自衛隊は国家権力の手先となる人民弾圧の軍隊です。「政治的中立性」とは自衛隊の本質を隠す建前論・空論にすぎません。

 問われるべきはこうした自衛隊の本質です。戦争法による日米安保条約の新段階でますます危険な軍隊となっている自衛隊、そもそも憲法違反の軍隊をこのまま放置していいのか。それこそが議論されるべき政策課題です。

 もう1つ、見落とされている重要な問題があります。
 「自衛隊」発言をきっかけに稲田氏のこれまでの発言の問題もあらためて取り上げられています。野党、メディアは、森友学園の弁護をめぐる答弁訂正や南スーダン派遣問題を挙げていますが、なぜか教育勅語の賛美発言が捨象されています。まるで「教育勅語」発言は問題でないかのように。

 しかし、稲田氏の「(教育勅語の)核の部分は今も大切なもの」(3月8日の参院予算委員会)発言は、「自衛隊」発言に勝るとも劣らない重大発言です。なぜなら、それは「誤解」などの言い訳が効かない(言い訳するつもりもない)”確信犯”だからです。

 稲田氏や安倍政権の教育勅語賛美は、日米軍事同盟、自衛隊の今日的危険性と一体不可分です。
 さらに、教育勅語賛美の背景には稲田氏や安倍氏と日本会議の関係があります。そして、日本会議を通じて、安倍氏、稲田氏と小池都知事もつながっています。タカ派思想において、安倍氏と小池氏はきわめて近い関係にあります。

 政策論争なき人気投票では、こうした本質的な問題は問われることがありません。

 暴言・失言・スキャンダル・政治資金問題が起こるたびに首をすげ替えて目先を新しくする。あるいは政策の違わない別動隊(党)が生まれ離合集散を繰り返す。それが自民党です。
 これを変えない限り、日本の政治も社会も変わりません。変えるカギは、「政策論争・政策選択」であり、メディアの「政局報道」から「政策報道」への転換ではないでしょうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

参院選の重大問題=低投票率と若者の「保守化」

2016年07月12日 | 政治・選挙

    

 (1)「投票率50%台の民主主義」でいいのか

 今回の参院選挙の投票率は54・70%でした。前回を2・09㌽上回ったものの、戦後4番目の低さ。60%を割るのは1982年以降9回連続です。

 投票率が低いのはもちろん参院選だけではありません。2014年の衆院選の投票率は52・66%で戦後最低。2012年(59・32%)に続いて2回連続60%を割りました。

 つまりは、この国は国政選挙で投票する有権者が10人に6人もいないということです。いわば「50%台の民主主義」。それによって「国家権力」がつくられ「政治」が展開されているのです。こんないびつな「民主主義」を放置していていいでしょうか。

 投票に行かないことを「政治的無関心」「責任放棄」と批判するだけでは事態は解決しません。なぜ投票率が低いのか。その調査・分析に本腰を入れることが急務です。

 参院選直前に共同通信が行った「トレンド調査」によれば、「参院選に関心がある」人は69・0%いました(6月14日付中国新聞)。関心がありながら投票に行かない。なぜでしょうか。

 主な理由は2つあると思います。
 1つは「支持政党なし」です。さきの「トレンド調査」では、「支持政党がない」と答えた人が64・2%にのぼりました。政治や選挙には関心はあるが、投票したい政党(候補者)がない。だから選挙には行かない。その是非はともかく、これが現実政治・政党に対する無言の批判であることは確かでしょう。

 ところが今の日本(世界も?)の選挙・政治制度では、こうした「無言の批判者」は「選挙に行かない不心得者」と片づけられるだけです。そうではなく、「支持政党なし」も民意ととらえ、その現実政治・政党に対する「無言の批判」が政治に反映される制度・システムを検討・導入する必要があるのではないでしょうか。

 もう1つは、「死票」(結果に生かされない票)の存在(多さ)です。どうせ投票してもムダ、という思いです。
 結論から言えば、その元凶は小選挙区制にあります。参院選の「1人区」もその一種です。逆に、「死票」が基本的に生じないのが比例代表制です。小選挙区制を廃止して比例代表制(できれば全国1区の)を導入(徹底)させる。そのための選挙制度改正が急務です。

(2)若者の「保守化」の根源は何か

 今回の参院選のハイライトは、18歳、19歳に初めて選挙権が与えられたことです。ところが、この層の投票率は45・45%。低い全体投票率をさらに9・25㌽も下回りました。せっかくの参政権が生かされたとは言えません。

 一方、共同通信の出口調査によれば、18、19歳が比例代表で投票した政党は、自民党40・0%(選挙結果35・91%)、民進19・2%(20・98%)、公明10・6%(13・53%)、共産7・2%(10・74%)、おおさか維新の会7・7%(9・20%)、社民2・8%(2・74%)、生活1・3%(1・91)でした。自民党へ投票した新有権者が際立って多かったのです。

 こうした結果は、若者の間に「保守化」が広がっていることを示しているのではないでしょうか。

 「関心のある争点」も、「社会保障」(年金・子育て・介護)や「経済」が上位でした。かつて勤労世代に「生活保守主義」が蔓延していると言われたことがありますが、いまや若者の間にもそれが広がっているのではないでしょうか。そのことと「自民党支持」の多さは無関係ではないでしょう。

 こうした若者の「保守化」は、これからの選挙(あるいは国民投票)を考えてもきわめて重大な問題です。
 根底には親の経済的困窮があり、「暮らし・社会保障」に関心が向くのはやむを得ないとしても、若者には別の選択基準もしっかり持ってほしいものです。世界の平和、人権、平等、環境、社会の人々の幸福…そんな理想・理念をもって行動するのが若者の特権のはずです。

 そのためには何が必要か。それを考えるのは、われわれ大人世代の責任でしょう。
 1つカギになるのは、「政党の政策対照表」など下手な「有権者教育」より、明治以降の「現代史」の学びを学校・社会で充実させることではないでしょうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

参院選・「野党共闘」は「大きな成功」と言えるか

2016年07月11日 | 政治・選挙

     

 今回の参院選の大きな注目点は、野党4党(民進、共産、社民、生活)が1人区で候補者を1本化した(具体的には日本共産党が自党の候補を取り下げた)いわゆる「野党共闘」です。それは今回の選挙に限らず、都知事選や衆院選など今後の選挙にも、そして日本の政治の行方にもかかわってくるものです。

 共産党の志位和夫委員長(写真右)は、今回の野党共闘を「最初のチャレンジとしては大きな成功と言っていい」(11日付中国新聞)と自画自賛しました。はたしてその評価は妥当でしょうか。

 全国32の1人区の勝敗は、自民21勝に対し、野党11勝。基礎的な力関係の差があるにしても、ダブルスコアではとても「大きな成功」とは言えないでしょう。

 しかしより重要な問題は、野党が勝った11選挙区の中身です。
  当選した11人のうち実に7人(青森、宮城、福島、山梨、長野、三重、大分)は、民進党の公認候補です。無所属は4選挙区(沖縄=写真中、新潟、岩手、山形)にすぎません。
 
 ここに、「共闘」と「所属政党」の関係というきわめて重要な問題があります。
 
 例えば、「消費税10%」について、「2019年4月まで2年間延期」という民進党と、「先送りでなく断念すべき」という共産党では政策に大きな違いがあります。当選した7人の民進党議員は当然民進党の政策に従います。

 もちろん消費増税だけではありません。「辺野古新基地建設」、「日米軍事同盟」、「憲法」、「原発」、「TPP」、どれをとっても民進党と共産党の間には大きな政策の違いがあります。「野党共闘」で当選した民進党議員は、すべての点で民進党の政策・方針に基づいた議員活動を行うのです。

 これが本当の野党共闘といえるでしょうか。これでは「野党共闘」の名の下に、民進党候補者の選挙運動を行い、民進党候補者に票を回し、民進党の議員を増やしただけではないでしょうか。

 そうならないためには、2つの条件が必要です。1つは、「共闘」に伴う政策協定をしっかり結ぶこと。もう1つは、無所属で出馬することです。そうすれば当選後、特定政党の政策・方針に左右されることなく、締結した政策協定に基づいて、また協定にない問題は自身の判断で行動することができます。

 具体的な「政策協定」もないまま、民進党の公認候補(香川は共産党候補)を他党が推す形になった今回の「野党共闘」は、「大きな成功」どころか、真の「共闘」とはほど遠いと言わねばなりません。

 「政策協定」に関して共産党は、「安保法制=戦争法の廃止、立憲主義回復という大義の実現」(志位委員長、2月22日全国都道府県委員長・参院選候補者会議での報告)だとしてきました。
 しかし、戦争法を廃止しても、そのあと「『グレーゾーン事態』に備え領域警備法を制定する」という民進党と、一切の集団的自衛権行使を否定する共産党の間で政策の違いがすぐに表面化するのは明らかです。「立憲主義」といっても、「統治機構改革など未来志向の憲法を構想する」という民進党と「前文を含む憲法の全条項を守る」という共産党の政策の開きは歴然です。

 スローガンや建前論だけでは「政策協定」にはなりません。多くの有権者にもそれは自明だったでしょう。

 志位氏が選挙後、野党共闘を今後も「発展させたい」としながら、「共産党が明らかにしている国民連合政府構想についても野党間で話し合っていきたい」(11日付中国新聞)と述べたのも、より具体的な「政策協定」が必要だという認識があったからではないでしょうか。

 しかし、今後の野党共闘で「国民連合政府構想」を持ち出せば、民進党から激しい反発が出ることは目に見えています。

 巨大与党を減らすためには野党は手を結ぶべきだ、という声は少なくありません。しかし、たとえ選挙で勝っても、すぐにほころびが露呈するような「共闘」では事態を悪化させるだけです。
 政治を変える「共闘」を実現するために、具体的な政策協定の締結と無所属での出馬は不可欠です。
 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする