道新函館政経文化懇話会10月例会の講演会「『人口減少ニッポン』を生き抜くヒント」<講師・夕張市長・鈴木直道氏>が、五島軒を会場に開催された。
この懇話会は、月会費8,000円という主に経営者たちの集まりで、毎月の例会には講師を招いて講演会を開催している。今回は、会員以外でも2,000円で聴講できるので、参加してみた。
目的は、もちろん講師である夕張市長鈴木直道氏である。30歳で、年収250万円の給料で、全国唯一の財政再生団体の市長になった、2期8年のこれまでの頑張りと実績を本人の口から直接聞きたかったからである。
主な内容は、1、財政破綻してからの夕張市の歩み、2、コンパクト型の都市計画、3,JR北海道・攻めの廃線の3点だった。
会場の様子
道内最大の出炭量を誇った1960年代は、人口11万6千人だったが、エネルギー政策の変換とともに、人口が急激に減少し、現在では8千人に落ち込んで、高齢者率50%になっている。
財政再生団体になった11年前には353億円を18年で返還することになり、市職員の削減、職員や市長の給与削減、サービス事業の縮小などに取り組み、人口減少に拍車を掛ける悪循環を繰り返してきた。しかし、そのような取り組みやいろいろな事業を工夫して、10年間で156億円もの返還ができ、昨年から普通の都市並みの新しい出発ができるようになったそうだ。
その中で、徹底した無駄を省く施策として効果を上げて来たのが、坑口ごとに点在していた集落(広域分散型の居住)をコンパクトにまとめる都市計画である。具体的には、公営住宅の再編と新築と移転促進、民間賃貸住宅新築への助成、公共施設の集中化、学校の小・中・高1校への統合などで、6年間で300世帯の移転、市外からの転入者の増加の効果があった。初めは反対していた人たちも、むしろ応援者になってくれて、理解が広がったそうだ。
2016年のJRへの攻めの廃線提案だが、JR側からの提案が何もないうちに、①市が進める施策への協力 ②JRが保有する施設への扱い ③社員の市への派遣の3点を要請し、すべて受け入れてもらった。まさか、すべて受け入れてもらえるとは思っていなかったそうだ。
スクールバスの運行適正化に向けては高校生に自主的に取り組んでもらい、中学生も含めて無駄に走ることのない予約運行の形となったそうだ。
最後に、「自分が市長になりたくてなったのではなく、夕張の町をなんとかしたいという思いからだった」「課題先進地だったが、これからは課題解決先進地として頑張って行きたい」という言葉が印象的だった。若さとバイタリティを持ち合わせた鈴木市長ならではの情熱と実績に感動すら覚えた。
質問の中で、自民党の知事候補として名前が挙がっているが・・・という問いに対しては、現在は何の働きかけはないとのこと。しかし、いずれは、都道府県や国の行政にも携わりたいという思いは持っているとのこと。今後の健闘と活躍とますますの発展を祈りたい。