あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

赤子の微衷 (二) 渦中の人達

2019年12月25日 04時50分39秒 | 赤子の微衷 3 渦中の人達 (山口一太郎、満井佐吉、小藤恵)

「 今、陸相官邸を出て陸軍省脇の坂を下り
三宅坂下の寺内銅像の前にさしかかると、バリケードがつくってあった。
半蔵門前からイギリス大使館の前にかけては部隊がたむろしている。
戰車も散見する。 あのバリケードは何のためのバリケードだろうか。
あの部隊は何のための部隊だろうか、そして物かげにかくれている戰車はどんな意味なのだろうか。
聞くところによれば、明日蹶起部隊の撤退を命じ 聞きいれなければこれを攻撃されるという。
蹶起部隊は腐敗せる日本に最後の止めをさした首相官邸を神聖な聖地と考えて、ここを占據しておるのである。
そうして昭和維新の大業につくことを心から願っているのに
彼らを分散せしめて聖地と信じている場所から撤退せしめるというのはどういうわけであろうか。
しかも、彼らは既に小藤部隊に編入され警備に任じておるのに、
わざわざ皇軍相撃つような事態をひきおこそうというのは、一體どういうわけであるのか、
皇軍相撃つということは日本の不幸これより大なるはない、同じ陛下の赤子である。
皇敵を撃つべき日本の軍隊が鐵砲火を交えて互いに殺しあうなどということが許さるべきことであろうか。
今や蹶起將校を処罰する前に、この日本を如何に導くかを考慮すべきときである。
昭和維新の黎明は近づいている。
しかもその功労者ともいうべき皇道絶對の蹶起部隊を名づけて反亂軍とは、何ということであろうか、
どうか、皇軍相撃つ最大の不祥事は未然に防いでいただきたい。
奉勅命令の實施は無期延期としていただきたい 」
・・・28 日 山口一太郎 ・ 戒嚴司令部での意見具申


赤子の微衷 (二)
渦中の人達
目次

クリック して頁を読む

・ 山口一太郎大尉 「バウンダリー ・コンディシン」
 
山口一太郎大尉の四日間 1 「 大臣告示 」 
・ 山口一太郎大尉の四日間 2 「 軍事參議官と會見 」 
・ 山口一太郎大尉の四日間 3 「 總てを眞崎大將に一任します 」 
・ 山口一太郎大尉の四日間 4 「 奉勅命令が遂に出た 」 
・ 山口一太郎大尉の四日間 5  『 別格 』 
・ 
山口一太郎大尉の四日間 6  『 行動將校と一緒になってもよいと思ひました 』 

・ 
満井佐吉中佐の四日間 1  『 維新ノ渙發ヲ詔勅シテ仰グコト 』 
・ 満井佐吉中佐の四日間 2  『 希望ノアル処ハ出來ル丈上司ニ意見ヲ申上ゲ、盡力シヨウ 』 
・ 満井佐吉中佐の四日間 3  『 眞崎大將ハ宮中ニ於テハ實現性ナキ有様ナリ 』 
・ 満井佐吉中佐の四日間 4  『 蹶起部隊ハ歩一ノ兵營ニデモ終結シテハドウカ 』 
・ 満井佐吉中佐の四日間 5  『 山本英輔大將の齋藤内府に送る書 』 

・ 小藤惠大佐の四日間 1  『 給養ハ歩兵第一聯隊デ實施セラレ度、 其經費ハ陸軍省デ支弁ス 』 
・ 小藤惠大佐の四日間 2  「 私共ハ天皇陛下ノ御命令ニ服從シマス 」
・ 小藤惠大佐の四日間 3  「 軍ハ自ラ粛正ノ範ヲ示シ、以テ昭和維新大業翼賛ニ邁進スルニ決ス 」 

意見
(一)、
維新部隊は昭和維新の中核となり、現位置に位置して、
昭和御維新の大御心の御渙發を念願しつつあり。
右部隊將校等は、皇軍相撃つの意思は毛頭なきも、維新の精神仰壓せらるゝ場合は、
死を覺悟しあり、又、右將校等と下士官兵とは大體に於て同志的關係にあり、
結束堅し。
(二)、
全國の諸部隊には未だ勃發せざるも、
各部隊にも同様維新的氣勢あるものと豫想せらる。
(三)、
此の部隊を斷乎として撃つ時は、全軍全國的に相當の混亂起らざるやを憂慮す。
(四)、
混乱を未發に防ぐ方法としては、
1、全軍速に維新の精神を奉じ、輔弼の大任を盡し、速に維新の大御心の渙發を仰ぐこと。
2、之が為速に強力内閣を奉請し、維新遂行の方針を決定し、諸政を一新すること。
3、若し内閣奏請擁立急に不可能なるに於ては、軍に於て輔弼し維新を奉行すること。
4、右の場合には、維新に關し左の御方を最高意思を以て御決定の上、
   大御心の渙發を詔勅して仰ぐこと。
   「 維新を決行せんとす。之が爲、
(1)、建國精神を明徴す。
(2)、國民生活を安定せしむる。
(3)、國防を充實せしむる。」
5、萬一右不可能の場合は、犠牲者を最小限度に限定する如く戰術的に工夫し、維新部隊を処置すること。
 但し、此際全軍全國に影響を及ぼさざることに關し、大いに考慮を要す。
之が實行は影響する処大なるべきを以て、特に實行に先立ち、先づ現狀を上奏の上、
御上裁を仰ぐを要するものと認む。
・・・28日 戒厳司令部に於る満井中佐の意見具申


この記事についてブログを書く
« 山口一太郎大尉 「 バウンダ... | トップ | 山口一太郎 ・ 戒嚴司令部で... »