満井佐吉中佐の四日間 3 『 眞崎大將ハ宮中ニ於テハ實現性ナキ有様ナリ 』

満井佐吉 
第二回聴取書
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陸軍大學校敎官  陸軍歩兵中佐  満井佐吉
右者、昭和十一年三月十八日、渋谷憲兵分隊ニ於テ、本職ニ對シ左ノ陳述ヲ爲シタリ
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二 ・二六事件

一、私ハ昭和維新斷行ト云フノハ氣ニクハナイ。
 昭和維新ハ大イニ行ツテ欲シイガ、其ノ斷行ト言フ文字ニハ、
ヤヤモスレバ、「 フアツシヨ 」 的ノ言動ヲモ含ムガ如ク解セラルゝ故、同意シ兼ネル。
昭和維新ト言フコトハ、外國ノ唯物思想ノ様ニ、木造家屋ヲ破壊シテ新ニ直グ鐵筋 「 コンクリート 」
ノ様ナ家ヲ建テルト云フ様ナ考ヘデハナイノデアル。
即チ、鶏ガ卵カラ孵化スル様ニ、日本ノ新シイ姿ガ發展スル段階トシテ、
進化スル爲ニスルモノデ、即チ、卵ガ雛トナリ親鳥トナルガ如ク、
日本ノ新シイ姿ヲ現ハスノガ維新デアリマス。
即チ、昭和維新ト云フノハ、御上ノ大御心ヲ翼賛シ奉ルニアルモノト確信致シマス。
國家革新ノ必然性ニ起ルクーデータートハ、其點大差アルモノナリ。
之ヲ方法論デ申スナレバ、西洋流ノ革命ハ選ビタクナイ。
例ヘバ十月事件ノ如キハ、西洋流デアルト考ヘマス。
私ハ擧軍一致シテ昭和維新ヲ翼賛シ奉ル事ガ必要ト存ジテ居リマス。
全軍ガ自覺セザル場合ニ、政治家ナリ重臣ナリニ妥協スル時ハ、其ノ政治ニ行詰リガ來ルモノナリ。
即チ 岡田内閣ノ様ニナルモノナリ。
全軍ガ一致シテ内閣ヲ動カシテ、血ヲ見ズシテ昭和維新ニ入ルコトガ理想ナリ。
私ハ辯論等ニテ合法的ニ行コウト云フ考ヲ持ツテ居ルモノデ、
今回ノ蹶起將校ノ趣意書ニハ不同意ナリ。
趣意書ニ有ル様ナ實力行動ニハ、絶對反對デアル。

二、私ガ相澤公判ニ於テ充分原因、動機ヲ明ニセザルニ於テハ、
靑年將校等ガ實力ニ訴フルニ非ラザルヤヲ心配シテ、辯論ニ努力シテ、
何トカシテ靑年將校ヲ押ヘ得ルモノト期待シタルガ、途中ヨリ公判モスラスラ行キ、
何トカ行ケルモノト安心シテ居タ。
然ルニ、有力ニ辯論シタルニ不拘、靑年將校ガ實力行動ニ出デタコトハ全く期待ニ反シタ。
即チ、靑年將校ノ氣分ハ克ク認識シテ居ルト思ヒオリシニ、
靑年將校ガヨリ以上ニ切迫シタ氣持チヲ持ツテ居つたゝメ、
此ノ様ニ爲ツタ事ハ全ク自分ノ不明ノ致ス所ト恥ヅル次第デアル。

三、今回ノ事件ヲ二十六日ニ承知シタ時ニ、吾ガ努力モ水泡ニ來シタカト實ニ喫驚シ、
 其ノ狀況ヲ確ムベク電話ニテ各方面ニ問ヒ合セタルモ、充分判明セズ、
焦燥ノ餘リ、午后一時自宅ヲ出發、陸相官邸ニ赴キタル次第ナリ。
其ノ時ハ、只ダ只ダ、帝都ヲ混亂ニ陥ラシメナケレバ良イガトノミ心配シ、
之爲ニハ軍首脳ガ適切ナル処置ニ出デナケレバ トンダ事ニナルト心配シタリ。
此ノ爲ニハ、此ノ部隊ヲ引揚ゲサセルコトガ先決問題デアルトカ、
蹶起將校ノ意嚮頗ル鞏硬ナル故、
昭和維新ニ嚮ハントスル彼等ノ氣持ヲ要レテヤツテ引揚ゲサセナケレバナラナイト考ヘタ。
殊ニ、官邸ニ聞ケバ、此ノ事件ハ天聽ニモ達シテ居ル爲メ、
宮中ノ輔弼ト相俟ツテヤラナケレバナラナイト考ヘタリ。

四、私ハ、國家内外ノ情勢ヨリ、
 擧國一致、擧軍一體、昭和維新ニ翼賛シ奉ラザル可ラザルコトヲ常ニ思念シテオリマス。
之レガ爲メ、先ヅ以テ擧軍一體ヲ計ルコトガ肝要ト考ヘ、
相澤公判ニ際シテモ特別弁護人タルコトヲ受諾シタル次第ニテ、
相澤公判ニヨリ擧軍一體ノ實ヲ擧グル爲メ、軍首脳部ニ私ノ意見ヲ開陳、
之ニ努メタルモ、遂ニ容ルゝ処トナラズ、尖鋭化せル靑年將校ヲシテ誤リタル行動ヲ採ラシムルニ至リタルハ、
軍首脳部ガ靑年將校ノ氣持チヲ認識セズ、適切ナル処置ヲセザリシコトニ胚胎スルト考ヘ、
返スガエスモ殘念ナリ。
而シテ、此ノ事件勃發スルヤ各方面ヨリ蹶起部隊ノ説得ヲ依頼シ乍ラ、
私ガ本事件ニ何カ關係ガアル如ク思惟サレオルハ甚ダ心外千萬ナリ。
或ハ私ノ信念ヲ知ラズ、私ト思想ヲ異ニスル者ガ、私ガ公判ニ於テ辯論之レ努メタルニ對シ、
本事件ノ如キコトヲ惹起セシメタルモノナリト考ヘ、本件ニ關係アリト疑フヤモ計ラレズ、
之ハ私ノ公判ニ辯護人トシテ立チタル眞意ヲ知ラヌ爲ニシテ、
屢々述ブル如ク、斯ル事件ノ惹起セシメヌ爲ナルコトハ、私ヲ知ル人ハ、皆首肯シ居ルコトゝ確信ス。
若シ私ノ辯論ガ却テ靑年將校ノ氣持チヲ尖鋭化シ、斯ル事件惹起ヲ促進セシメタトセバ、
私ノ靑年將校ノ尖鋭化ノ認識不足ノ結果ニテ、其責重大、道徳的責任ハ充分感ジ居ル次第ニテ、
之レガ爲メ、前回申述ベタ通リ、私ノ責任感ヲ期スベク処置シタル次第デアリマス。

(  此ノ時事實を明ニスル爲メ、次ノ問答ヲナス )
貴官ハ、此ノ事件勃發ハ甚ダ遺憾ナルモ、
斯クナリシ上ハ、蹶起者ノ希望ヲ叶ヘシムルコトガ自己ノ信念タル昭和維新促進トナルヲモッテ、
是非共蹶起将校ノ希望ヲ達成セシメザル可カラズト考ヘザリシヤ
其様ナ事ハ全ク考ヘナカツタ。
辯論ガ順調ニ行ツタノデ、横合カラ今度ノ事件ガ 「 ポカン 」 ト起ツタノデ、
自分トシテハ、其點ニハ全ク不服デアリマス。
自分ハ此ノ事ハ、官邸デモ村中等ニ會ツタ時、ナゼコンナ事ヲ行ツタト云フコトヲ話シタノデアル。
此ノ時、次官等ハ押込メラレタ形ニナツテ居タ様デアル ( 此ノ時、特ﾆ聲ヲ大ニシテ言明ス )
軍上層部ガ早ク意見ヲ纏メテ混亂ニ導カザル様ニセラルルコトニアリト考ヘタノミニシテ、
自分ハ平常考ヘテ居タ意識ヲ織込ンダ點ハ毫末モナクシ、
只唯宮中ノ輔弼ト相俟ツテ混亂ヲ避ケル様ニスル事ガ急務トノミ考ヘタリ。
私ハ元來直接行動ヲ爲スト云フコトハ全ク反對ナ意識ヲ持ツテ居ルモノデアル。
只々混亂ヲ避ケルト云フコトノミ、咄嗟ノ場合ニ考ヘタノミデアリマス。

帝国ホテルでノ會合ノ内容ハ如何ナルモノナリヤ
石原大佐ニ來てモラヒ、橋本大佐ニモ來テ貰ヒ、會談セリ。
石原大佐ノ言ニヨレバ、青年將校ハ眞崎大將ヲ希望シアる様デアルガ、
之ハ宮中ニ於テハ實現性ナキ有様ナリ、
今回ノ時局ヲ収拾スルニ適當ナル人物を知ラザルヤトノコトナリシ故、
必シモ陸軍ノ軍人デナケレバナラナイト云フ事ハナイ、海軍ノ山本英輔大將ガ適任ナラント考ヘル旨ヲ語レリ。
此ノ時橋本大佐ハ、ヨクハ知ラヌガ誰レデモヨイト云フ様デアツタ。
兎ニ角、石原大佐ハ善処スル旨述ベテ退去シ、續イテ橋本大佐モ三島ニ歸ルト稱シテ辭去シタリ。
次イデ、村中ヲ説得スルニハ龜川哲也ガ適當ト考ヘ、電話ニテ兩名ヲ招致、
龜川哲也、次デ村中ガ帝國ホテルニ來リシ故、
私ハ村中ニ對シ、何時迄モ斯様ナ狀態デアル事ハ大義名分ヲ誤ルヤモ計リ知レズ、
早ク隊ヲ纏メテ混亂ニ入ルヲ避ケ、兵ヲ終結スベク極力説得シタル処、
村中ハ之ヲ諒トシタルモ、他ノ同志ガ果シテ承引スルヤ否ヤ、
茲デ引受ケルコトハ出來ヌカラ歸ツテ同志ニ話スト稱シ、歸リタリ。
此際、龜川ハ後継内閣ニ對シテハ何モ意見ハ述ベマセンデシタ。

二十六日夜、陸相官邸ニ貴官ガ小林ヲ呼ビタルハ如何ナル理由ナリヤ
私ガ官邸ニ居リマシタ時、小林長次郎ヨリ、多分午后十一三十分時頃ト思ヒマスガ、
電話ニテ變リハナイカト申シ來タリシ故、次官ガ宮中カラ歸ルノヲ待ツテ居ルト云フテ、電話ヲ切ル。
次デ再ビ小林ヨリ電話ガアリ、只今銀座ノ板倉ノ家ニ居ルカラ來ナイカトノコトナリシモ、
軍事參議官等ガ會合して居ルカラ一寸出ラレナイ、銀座ニハユクニハ遅イカラ、今晩ハ會ハナイデ歸ルト云フト、
自分ノ方カラ行クト云フノデ、村中ヨリ承知シオリタル合言葉、山川ト云フ様ニ、尊皇討奸ト云フ合言葉ヲ用ヒ、
尚掌ニ 三銭切手ヲ貼ツテ見セレバ良イト敎ヘタリ。
因テ、正午頃來ル。別ニ用事ハナカリキ。
小林ハ官邸ノ控室ニ待ツテ居タ。
其時橋本大佐ニモ會ツタ。
此様ナ空家ニ居テハ致シ方ナイデハナイカト橋本大佐ニ言フト、自分モ歸ルト言ハレタ。
後デ、居所ヲ知ラセル事ヲ約シテ別レタリ。
小林ガ事件デモ私ニ會ニ來タト云フノハ、
私ガ事件ヲ當日ノ午前九時半頃小林ヨリ知ラサレテ知ツタ次第デ、
小林ハ銀座ノ板倉ニ居ツテ様子ヲ見テ居タノデ、私ヲ案ジテ尋ネタモノト思フ。
即チ、私ガ此ノ事件ニ巻添ヒヲクツタラ大變ダト考ヘタダロウト考ヘマス。
小林ガ本事件ニ關シ拘留サレタ話ナレド、私ハ小林ニ限リ本事件ニハ關係ナシト確信シテ居リマス。
陸相官邸ニ來リタルモ、私ノ身を案ジテ來タノデ、他意ナシト信ジマス。
之レハ特ニ御取調ベノ上ニ參考ノ爲メ申上ゲテ置キマス。
私ト小林トノ關係ハ極メテ親密ニテ、兄弟ノ如ク交際シ、彼ハ思想運動ヲ行ツテ居リ、
思想方面ニ、經濟方面ニハ小林ガ一日ノ長アリト考ヘ居ル次第ニテ、
小林ハ又、私ヲ理解アル中堅幕僚ノ一人ト考テ居ツタノデアロウ。
私ガ知ツタノハ多分昭和八年夏頃ヨリデ、
前新聞班本間大佐ヨリ紹介サレテ以來、知ツテ居ルモノナリ。
私ハ當時調査班ノ仕事ヲシテ居タノデ、
思想關係ニツキ外部ノ關係ヲ知ル爲メ會見シタ方ガヨカロウト云フ紹介デ會ツタ次第デ、
段々ト好意ヲ持ツ様ニナツタモノデアリマス。

貴官ト亀川哲也トノ關係如何
龜川ヲ知ツタノハ、彼ガ農道會ノ幹事ヲシテ居タ時ノ關係カラデアリ、
龜川ハ會計檢査院ニ勤メ、行政方面ニハ詳シイ。
又、政治、經濟關係モ相當詳シカツタ。
政治關係ニハ一寸素人ナルガ如キモ、中々確リシタ卓見ヲ持ツテ居タ。
暫ク官界ヲ離レテ居ル關係上、幾分政治的色彩ハアツタ様デアル。
如何ナル方面ニ關係ガアルカ、ヨク知ラナイ。
靑年將校トハ如何なる關係ナリシヤハ、詳シクハ承知シ居ラヌ。
私ガ公判關係ニ於テハ、其ノ辯論材料ヲ蒐メテ呉レタ。
陸軍中ニハ相當廣イ知己ガアツタガ、何レモ一個ノ學者トシテ參考意見ヲ聽ク程度ト考ヘラル。

公判ノ特別弁護人トナル經緯
同期生ヨリ依頼サレタリ。
龜川哲也モ私ガ辯護人ニナルコトヲ勧メニ來タコトガアル。
之ハ同期生ト相前後シテ居タト思フガ、或ハ一寸前デアツタカモ知レヌ。
其時龜川ヨリ別シテ條件トイフ様ナ提議モ何モナカツタ。
永田事件ヲ如何ニ見テ居ルヤト云フニアリ、其外ハ私ガ公判デ叫ンダ様ナ事ヲ雑談シタニ過ギマセン。
即チ、様子ヲ探リニ來タ程度ダツタト記憶スル次第ナリ。

龜川ヨリ相澤ノ行爲ハ無罪デアルト云フ様ナ話ガアリシヤ
最初ハ其ノ様ナ話ハナク、後ニ至リテハ無罪ノ主張論者ナリキ。
無罪論ニ對シテハ、無罪トカ有罪トカ云フコトハ言ヒ得ナイ。
本問題ガ統帥權干犯ニアルナラバ、非常手段ニ出タト言フ事ヲ言ヒ得ル。
即チ、刑法ノ緊急避難行爲、法ノ精神ヨリシテ、之ハ無罪ナリト考フ可キナリ。

龜川ヨリ證人申請ニ關シ意見ノ申出デナカリシヤ
公判途中デ一回位其話ガアツタカモ知レヌガ、龜川ノ意見ヲ聞イタコトハアルガ、
積極的ニ申出デタコトハナイ。
龜川ニ、證人申請ノ材料アルナラ知ラシテ呉レト云フタコトガアル。
夫レデ、龜川ヨリ一ツノ材リョウヲ貰ツタ。
永田閣下ト池田成彬氏ト築地錦水ニ會ツタ事實位デアル。
二月二十三日頃、證人ノ人物ヲ調ベル爲龜川ヲ呼ンダ。
其時何ニモ意見ヲ言ハズニ歸ツタ。
其時ハ小林モ來宅シテ居ツタノデ、此ノ間ノ事情ハ小林ガ明カナリ。

二月十日頃、相澤事件ニ就テ、特赦ト云フ様ナ意見ナカリシヤ
其ハ私ガ話シタコトデアル。
公判ガ段々進ンデ、軍首脳部ハ内閣トノ板挟ミトナリ、此ノ公判ハ到底ヤリキレナイ。
即チ、統帥權干犯ナリシヤ否ヤを明確ニスル爲ニハ、徹底的ニ追及セナケレバナラナイ。
然ル時ハ、軍首脳部ハ全ク困難ナル立場ニナル故、
公判ヲ此儘ニテ打切リ御聖斷ヲ仰グコトニシタラ良イデハナイカト云フコトヲ、私ガ言ツタノデアル。
此ノ件ニ關シテ菅原弁護士ハ言ツタ。
此ノ事件ハ判決ガ下ラヌ内ニ特赦ハ出來ナイ。
而シ、特赦ハナラナクモ、軍法會議法上ハ所管長官ハ公訴棄却ヲ命ズルコトガ出來ル故、
最高輔弼ニヨリ御聖斷ヲ仰ゲバ出來得ルト考ヘ居タリ。

今回ノ事件ヲ豫知シ居ラザリシヤ  亀川ヨリ洩シタルコトナキヤ
龜川ハ勿論、本事件ニ關シ事前ニハ誰レヨリモ聞キタルコトナシ。
青年將校ガ尖鋭化シ居ル故、公判ヲ適切ニ進捗セザレバ爆發スル虞アリト按ジ、
私ハ公判ニヨリ爆發ヲ防ギ、擧軍一體ヲ計ル爲ナリシ故、
靑年將校及西田等ニモ常ニ直接行動ヲ戒メ、自分ヲ信頼シテ輕擧妄動セヌ様注意シ居リタリ。

皇魂社ノ中村義明ハ行カザリシヤ
來タ事ハアリマセン。
雑誌ヲ送ツテ下サツタノミデアリマス。
后デ其ノ代金ヲ請求サレタコトガアリマス。
中村ハ相當ノ年輩カト思ツタラ、此ノ事件デ新聞ヲ見ルト、案外若年者デアツタ。

三六社ノ小林大佐ト會ツタコトアリヤ
昭和八年ニ麹町宝亭デ一度會ヒ、九州護國軍ノ件ニ就テ話シタコトガアル。
其後交際ハアリマセヌ。
金錢ノ授受等ハ全クアリマセン。
小林大佐トノ關係ハ、公判中三六社ヨリ三六情報ヲ送ツテ來タ位ノモノデアリマス。
金ヲ貰ツタ様ナ事ハ全クアリマセン。

橋本欣五郎大佐トノ關係ハ
橋本大佐トハ同郷ナルモ、思想ガ異ナリシ故 餘リ交際セザリシモ、
所謂、皇道派、統制派ト稱セラルゝモノノ接触ヲ計り、次デ擧軍一体體ニ導カザルベカラザルコトハ、
調査班轉勤以來、切ニ感ジ居レリ。
之レガ爲メ、橋本大佐トモ一昨年冬頃ヨリ接触ヲ多クシ、互ニ諒解シ合フ間柄トナリ居ルナリ。

右讀聞ケタル所、相違ナき旨申立ツルニ附、署名捺印セシム
昭和十一年三月十八日
於  渋谷憲兵分隊
陸軍司法警察官  陸軍憲兵中佐  須藤 裕

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