あを雲の涯

「 二、二六事件て何や 」
親友・長野が問う
「 世直しや 」
私はそう答えた

大御心は一視同仁

2020年05月27日 17時14分55秒 | 池田俊彦

天皇陛下は嘉し給わなかった
陛下の嘉し給わぬ行動は天人共に許さぬ行動であろうか
若し我々が天下の義に背いた行動をしたのであれば、
直ちに死するべきである
天皇陛下の為に国を憂えて身命を擲ったこの行動が、
陛下の逆鱗に触れ、そして逆徒になる
こんな馬鹿げたことがあろうか

我々は軍に入り陛下の大命により戦場に生命を捧げることを身上とした者である
しかも自ら進んで天下大義の為に立ったのだ
それにも拘わらずその義軍が叛徒として葬り去られたのだ
こんな悲しみがあろうか
天を仰いで長大息しても、この恨みは尽きるものではない
これは神に対する絶望であろうか  身震いするような恐怖であった
我々が蹶起した昭和維新の大義がこの世に存在の価値がないとすれば、
今日迄我々の生きてきた支えは壊滅してしまうのだ

 蹶起の寄書

しかし
世論の動向とか一時的に上に立つ人の心がどうあろうとも
陛下の真の大御心は一視同仁であらせられ
名も無き民の赤心に通ずるものであり
それが天下の正義であり
我々の赤心もきっと通じるに違いないと思った
ここに生きてゆく心の支えがあった


池田俊彦 著
きている二・二六  から