日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

そこはユートピア 喫茶 「カド」 墨田区向島

2015-07-14 | まち歩き

花街の名残りを今も残す墨田区の向島。
近くには往時を偲ばせる料亭や足袋の店などもあり、空にはスカイツリーが聳える。
そんな街の一角にある「カド 季節の生ジュース くるみパン」と書かれた喫茶店。
是非行ってみたいと思っていた場所だった。




ドアを開けて中に入った瞬間、息をのむような装飾に目を奪われる。
現実を忘れそうな別天地。思わず店内を見回してしまった。
オープンしたのは昭和33年。
 

この店の設計は、現在のオーナーのお父様が親しくしていた作家・志賀直哉の弟で
建築家の志賀直三によるものだとか。
直三がロンドンに留学中に見たヨーロッパの雰囲気で、と設計を依頼したという。
徹底した装飾と美的センスにはやはり圧倒する力がある。

天井の薔薇は現在のオーナー自身が描いたもの。
創業当時は梅の花だったという。
肖像画を囲むシャンデリアと薔薇。
 


何枚も飾られた絵画や凝ったレリーフ。独特の雰囲気がただよう。
 

店内は大正、昭和と時間の違う品々が一緒に飾られているが
ここではひとつとなって呼吸をしている。
そして床に敷かれた黒い石はスペイン製のもので、オーナーが日曜日の閉店後から
月曜日の定休日をはさみ、火曜の開店までに貼り終えたというすごい腕前。


薔薇が描かれた黄色のテーブルは意表を突く個性的なデザイン。
形も不定形でゆるやかなカーブで造られているのが素敵だ。


活性生ジュースはリンゴ、パセリ、グリーンアスパラ、アロエ、
ハチミツなどを混ぜたセロリの味。 新鮮な味が体に流れる。
そして「くるみパンの茄子とモッツァレラチーズのサンドイッチ」
ジュースもサンドイッチもお勧めの味だった。
 


「カド」での短い時間。
異空間の中で胸にめぐったのは、月の光がこぼれる森や
緑色の泉、そんな情景が浮かぶようなユートピアの場所だった。
今でもこのような場所が存在することのうれしさ。
そしてとっておきの時間を持てた幸せ。


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