日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

「化鳥 夫人利生記」 泉鏡花

2012-02-28 | 泉鏡花

Kacyo

化鳥
少年・廉(れん)の独白でつづられた小説。
橋銭で生計をたてて母とふたり暮らす廉は、
学校の先生から人間は獣よりも優れていると聞かされるが、
彼と母は人と自然は同じものだという心を持っている。
豊かなイメージで人や自然を見る廉は、
目で見えるものでなく心で人と動物を同一化する。

ある日、川に落ちて流された廉を助けてくれたのは
「翼のはえたうつくしい姉さん」だと母から聞かされる。
母が彼に語るイメージも美しい。
翼のはえた姉さんを探しにいく廉。
彼が追い求め、心の中にまどろんでいたその翼の天女は廉の永遠の存在であった。

夫人利生記
主人公・樹島は摩耶夫人像を見に蓮行寺へ向かうその道すがら、うつくしい女に出会う。
寺には安産祈願のために赤子を抱いた沢山の母親の写真があった。
その中にみつけた先ほどのうつくしい女の写真を思わず盗んでしまう。
その時、幼い頃の雛にまつわる体験がよみがえる。

そして摩耶夫人像をあつらえる樹島が仏師に頼んだ禁断の願い…。
出来上がった像には母の面影がくっきりと刻まれていた。

うつくしい女性は母へとつながる。
その胸のうちはまぼろしの中でうろたえ、憧れゆえにゆらゆらと燃えているかのようだ。

泉鏡花が書斎に置き、信仰した摩耶夫人像を依頼した時のことをもとに大正13年(1924)に書かれた小説。


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