日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

映画 私の20世紀

2020-06-15 | 映画

       雪の街、いつしか眠りに落ちた2人の少女は運命の星に導かれ


エジソンの白熱電球の発明によってまばゆい光に
人々が酔いしれる1880年のある日、双子の女の子が誕生した。
名はドーラとリリ。



孤児になったドーラとリリは通りかかった2人の紳士に
それぞれ引き取られ別の運命をたどることになる。

その20年後、成人した2人はまったく違う数奇な人生を歩んでいた。
ドーラは女詐欺師、リリは気弱な革命家として。

そして1900年の大晦日、
オリエント急行で紳士とディナーを楽しむドーラと
人がひしめく三等席からリリが降りたブダペスト。

ドーラは変わらずに詐欺を繰り返し
リリは仲間の元へと向かった。

そしてリリの前に現れた謎の男Zが2人を同一人物と思い込み
運命のいたずらによって彼は翻弄される。

モノクロの濃淡で映し出される映像は
光も闇も魔法をかけたファンタジーのようで
星が語り、動物が身の上話を始める。
パブロフの犬は開放され、どこまでも走り続けた。
それまでの抑圧から解き放たれ、新しい20世紀に向かうように。

男Zはやがて鏡の迷宮へ入っていった。

男を惑わす詐欺師となったドーラ


街中に爆弾を投げようとするリリ


20世紀はマッチから電球へ、ロバから汽車へ
伝書鳩から電報へと新しい科学の発展に湧き立つ
新時代の幕開けでもあった。

ドーラとリリを演じたセグダ・オレーグは
2人を生んだ母親の役も演じ3役をこなした。

謎の男Zを演じたオレーグ・ヤンコフスキーは
ロシアのタルコフスキー監督の
「ストーカー」「鏡」「ノスタルジア」に出演し、
どの作品でも寡黙な演技が印象的だった。