フランスのアルプ=マリティーム県にあるマントンはイタリアとの国境の街。
そのマントン市庁舎内にある「婚礼の間」にジャン・コクトーは1957年~58年にかけて装飾を手がけた。
「La Selle des Mariages Hotel de Ville de MENTON」
1958年 モナコ デュ・ロシュ社発行
明るい色彩でくるくる線を引いた表紙
中に収められている写真はすべてモノクロ
右の写真は新郎新婦が入場する入り口に描かれたマリアンヌ
新郎新婦の背景になる絵は
「婚約者達」
この地方の帽子を被った青年と、向かい合う婚約者。
南フランスの太陽がふたりに注ぐ。
この絵は大きく床から天井まで描かれている。
新郎新婦の席に向かって右(東側)の壁画は「婚礼」
白馬に乗って出発するカップルに花を捧げたり贈り物を頭に載せる女性。踊る青年、そして不服そうな母親の顔、
右端には疎んじられた女性を青年が抱いている。
これらの要素をコクトーはアフリカの土着的イメージで構成した。
その向かいの左(西側)の壁画は「ユーリディスの死」
オルフェウスの伝説から竪琴を失うオルフェと右端の死せるユーリディス。中央はケンタウロスの戦い。
天井画のモチーフは「詩と科学」
手前のペガサスに乗った青年の絵は「詩」
その奥の翼の青年は「科学の貧困」
そして一番奥が「愛」
式場内の絵は、そのコーナーによってコクトーが様々な要素を取り入れて製作したことがわかる。
葉のフロアスタンド、真紅の椅子、豹柄の絨毯まですべてジャン・コクトーのデザインで構成されている。
場内は撮影禁止だが、新郎新婦の椅子には座っても良いと受付の女性が扉の鍵を開けてくれた。
コクトーがマントン市へ心血をそそいで捧げた鮮やかな色彩の婚礼の間は、南フランスの太陽のもと
で新しい門出に出発するカップルを包み込むようだ。
製作中のジャン・コクトー