柔らかい紫のしとねに眠るのは誰ですか
それは青の胎児・青空の色にひらく夢を見ながら
静かなほほえみを浮かべている
眠れ神秘な青の子供・充分な眠りの後に
もし誰かが優しく扉を叩き声をかけたら
そうその時にだけ開きなさい青の翼を 中井英夫「薔薇幻視」より
「シャルル・ドゴール」は1955年(昭和30年)フランスのメイアンによって発表された。
紫の濃淡があでやかな薔薇だが、その当時は「青いバラ」として登場した。
薔薇生育家が憧れた青という色彩の薔薇の実現は、失敗を繰り返し、
それでもなお青に近づこうと果てのない色素研究の積み重ねであった。
現在は某企業が青い薔薇をついに作りだしたが、薔薇が地面からどんな色でもたやすく咲くとしたら
それはとてもさびしいことである。
シャルル・ドゴールの誕生は、絶賛されながらも青になり得なかった宿命を持った薔薇だったが、
このかぐわしい香りと豊かさ、気品ある姿は一級品であり、見る者を夢想へと誘う。
幻を求めてやまなかった人々の憧れを秘めて。