Silver linings

カリフォルニアで子育てとか仕事とか。

The Edible Schoolyard

2009-12-09 13:47:55 | バークレー
とっても美しい学びのプロジェクトに出会いました。


これはこども達のてぶくろ。農作業用です。

そのプロジェクトとは、The Edible Schoolyard(=食べられる校庭).
この中学校のこと、日本にいた頃に本で読んで知り、バークレーに行ったら一度は訪れてみたいと思っていた場所でした。

The Edible Schoolyard(エディブル・スクールヤード)
Martin Luther King, Jr. Middle School
1781 Rose St.,
Berkeley, CA 94703


このThe Edible Schoolyardというプロジェクト。今では全米の小中学校に広まりつつありますが、ここが発祥の地。こども達は校庭にあるこの写真のようなお庭でオーガニックの野菜やフルーツを育てるのです。もちろん種をまくことから、日常的なお世話、収穫まですべて。レタス、とうもろこし、にんじん、ラディッシュ、レモン、ラズベリー、ハーブ、にわとり、、、他にもいろいろ!そして、そのお庭のすぐ横に、キッチン棟が併設されています。季節ごとに収穫された野菜たちをこのキッチンで料理し、みんなで味わう。中学1年生から3年生まで全員が取り組む、素敵な教育のプロジェクトです。


長靴や、くわ、じょうろ、シャベル。たくさんの道具や器具は、それぞれが収まる場所が決められていて、ガーデンの隅にきれいに整理整頓されていました。

ビジターとして、キッチン棟にも入れていただいたのですが、ここはこども達がいたので写真は撮りませんでした。でもキッチンの雰囲気はとても素敵でした。こども用のナイフや、いかにも「調理実習」な感じのお鍋、トレーやカップ。そんなものがひとつもないのです。あるのはすべて、本物のツール。シェフが使うお鍋、包丁、まな板、調理器具。お皿、グラス、シルバー。そして、その道具達が美しい。

「こどもなんだからこれでいいでしょ」「学校なんだからこれでいいでしょ」という妥協を排除することは実はとても大切なことなのだと思います。シェフが使う道具―それがそこにあるだけで、どれだけこどもたちのワクワクが高まることか。コポコポとやかんにお湯が沸いていて、テーブルクロスがかかったキッチン。作業台のまわりで献立を話し合うこども達が座っていたのは少し高めのキッチンスツール。素晴らしい学習環境!


外に出て、キウイの木の下で、私たちはいろいろ話し合いました。干し草のベンチに腰かけながら。
「これは、シェフを育てるための教育ではないですよ」とプロジェクトディレクターのマーシャさん(中央)。
うんうん、それは分かります。
この土の匂い、この環境、このキッチン、このダイニング、本物の道具達。こども達はここでもちろん、有機栽培や農業、料理の方法について学ぶだろうし、サイエンスや、生物、環境についても学んでゆくのだろう。でも一番思ったのは、この活動に従事することによってこども達が経験する社会情緒的な発達 (socioemotional development)のこと。きっと、はかりしれないのだろうな。なんてパワフルな学びの経験なのだろう。

日本で「食育」という言葉が流行るだいぶ前、15年も前からこんな取り組みがあったなんて驚き。もちろん、これは家庭科や理科の枠にはおさまりきらない、スケールの大きな環境教育のひとつ。「食べる」ということを、循環する自然環境のなかでとらえようとする試み。日常的な「食べる」行為を、壮大な地球のサイクル、めぐりゆく季節、住んでいる地域やコミュニティ、その天候と結びつけている。育て、収穫し、料理し、食べ、返す。その根底にあるのは、循環する自然環境に調和するすべを、私たちの一番身近なところ「食べもの」から考えてみてほしいという願い。

なんだか、心地よい。
バークレーには、心地よい暮らしのいとなみがあって、そんな人々の意識がこども達の教育にも浸透していることを知ってとてもうれしい。

もう1ついうと、このプロジェクトを始めたのは学校の先生ではなく、この地域でいちばん有名な一流レストランのオーナー。そのレストランオーナーとはアリス・ウォータースさん。オーナーであり、シェフであり、教育者。彼女のレストラン「シェ・パニーズ」は、そのコンセプト、フィロソフィー、スタッフ教育、30年変わらぬスタイル、そしてもちろんお料理、どれもとっても素晴らしく、バークレーで最も人気のあるレストランです。地元の農家や彼女自身の畑から収穫されたオーガニックの食材で、シンプルで素晴らしいお料理を提供されています。私も初めて食べたとき、それまで自分の中にあった「アメリカ料理」(=オイリー、健康に悪そう)に対するイメージがきれいに払拭されていったのを覚えています。きちんと野菜の味がして、季節感があり、シンプルで、やさしいのです。レストランについては、またいつか時間のある時に書きますね。

Chez Panisse Restaurant(シェ・パニーズ レストラン)
1517 Shattuck Avenue
Berkeley, California 94709

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食育菜園
エディブル・スクールヤード

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日本にいた頃、たしか青山にあるワタリウムのミュージアムショップで手にとった本。
この本で初めてエディブルスクールヤードのことを知りました。