皆川博子さん、『巫子』

 引き続き、さぼり気味の感想を短めに。
 大好きな皆川さんの短篇集ですが、智内兄助さんの作品を使った表紙が何とも怖く、しばらく積んでいました。

 『自選少女ホラー集 巫子』、皆川博子を読みました。
 

 収められているのは、「冬薔薇」「夜の声」「骨董屋」「流刑」「山神」「幻燈」「山木蓮」「冥い鏡の中で」「巫子」、です。「冬薔薇」と「骨董屋」は再読でした。
 「流刑」や「冥い鏡の中で」の、本来は一方向にただ真っ直ぐなはずの時間の流れが、実は延々と円環し続けているみたいな、そしてその円環の中に主人公が閉じ込められいるような息苦しくなる作風に、はああっ…と深い溜め息がこぼれました。

 でもやはり、特筆すべきは表題作の「巫子」でしょうか。この作品は自伝的な色の濃い「巫女の棲む家」の母体ともいえる作品で、ご本人の解説によると体験が7割ほど入っているそうです。実際に読んでみると、皆川さんがどうして少女にこだわり続けて作品を書かれているのか、おぼろにわかってくるような気がしてしまう…。
 厳格な父親によって怪しい交霊会にひき込まれ、狡猾な霊媒師から神伝(かむづた)えの少女としての役割を与えられた黎子。そしてもう一人の少女、戦災孤児であるチマ。大人たちの思惑に利用され、押し潰されそうになりながら、失い切れない自分自身を見つめる少女たちの張りつめた世界が描かれていました。おし、『巫女の棲む家』もそろそろ読もう、っと。

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