7月30日

 リチャード・フラナガン/渡辺佐智江訳『グールド魚類画帖』を再読した。
 
 素晴らしい。
 暴政が横行する流刑地タスマニア(まず司令官発狂)。その暴虐と理不尽な死に満ちたクソな世界への怒りと抗議を記して、それでも語り手ビリー・グールドは己の書き連ねた「魚の本」を“愛の物語”と呼ぶ。
 そしてゆっくりと声なく死んでいく魚の絵を描くとき、“ほんの一瞬の真実”をそこに宿らせたのだと言う。

 牢に籠められ錯乱気味にもなりつつ、狂った世界へ向かって「絶望してやるもんか」と唾を吐くような手記の凄まじさとその孤独よ。
 (タツノオトシゴはウロボロスの竜へ…。ぐるり)

 
 “「おれはウィリアム・ビューロウ・グールド。おれの名は歌で、人はおれの名を口ずさむだろう」”
 
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