米原万里さん、『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』

 先日読みました『オリガ・モリソヴナの反語法』がいたく気に入りましたので、手に取りました。 
 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』、米原万里を読みました。

 生き生きと鮮やかに描かれる、ソビエト学校時代の級友たちとのエピソードの数々。ばらばらになった後の彼らの身に降りかかった現実の苛烈さが胸に迫り、ずしりとした読み応えでした。 
 『オリガ・モリソヴナの反語法』でははっきりと触れられていなかったことですが、米原さんは共産党員の娘で、1960~64年にプラハのソビエト学校に通っていたのはその為でした。50カ国以上の国の子供たちが通う学校なんて、ちょっと想像もつきません。そしてまた日本に戻り、日本の中学校に通い、目の前の学校生活や受験に対処し適応しようとしていく中で、少しずつソビエトの友人たちとの文通は途絶えていきます。ところが、それからの年月が社会主義圏の国々における激動の時代に重なるため、安否を気遣う親友の消息さえも摑めなくなったのでした。

 本当にこれがノンフィクション…?と疑いそうになるような偶然に助けられつつ、ついに友人たちとの再会を果たす箇所では胸が熱くなります。そして、彼女たちが語る話には、現実の重みがあります。思わずうな垂れてしまいました。
 斎藤美奈子さんの解説の中に「歴史の証言の書」という言葉が使われていましたが、まさにその通りだと思います。
 (2007.7.25)

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