田中啓文さん、『銀河帝国の弘法も筆の誤り』

 『銀河帝国の弘法も筆の誤り』、田中啓文を読みました。

 収められているのは、「脳高速」「銀河帝国の弘法も筆の誤り」「火星のナンシー・ゴードン」「嘔吐した宇宙飛行士」「銀河を駆ける呪詛」の5篇。いやはや面白かったです。

 どの作品も相当に馬鹿馬鹿しくて、噴飯する気力も萎えるほど馬鹿馬鹿しかったです(ほめ)。けなせばけなすほど讃えてしまうというジレンマに陥りつつ甲乙付けがたい(?)ものの、私が一番気持ち悪くて感心したのは「嘔吐した宇宙飛行士」です。スペースオペラ的スケールの嘔吐ですよ。スペースオペラ的スケールの漂うゲロで(あら失礼、でもこんなもんじゃなくてよ)、凄いことになりますですよ。
 一番脱力して感心したのは「銀河を駆ける呪詛」でしょうか。スペースオペラ的スケールの呪いネットワークですよ。そんな、そんな、そんな…そんな親父ギャグ以下の駄洒落の為にそこまでするかーっ!と、首がかくかくしそうな虚脱感に襲われました。

 そうそうたる顔ぶれの解説が差し挟まれているのですが、「SF作家・田中啓文批判」とか「悪趣味作家・田中啓文批判」とか、そんなのばかりです。う~む。
 凄まじい着想だなぁ…としばし気圧されるほど面白くて独創的なのですが、それらが全て駄洒落に収斂されていくところが天晴れです。もう、それしか言えません。『蹴りたい田中』の衝撃再び、でした。
 (2007.7.31)

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