股間の解放記

普通の社会人PEKOの、日々思うことをつづっていきます。

ヤクザと家族 The Family

2021年02月04日 12時14分10秒 | 映画評論ヤラワ行

製作年:2020年
製作国:日本
日本公開:2021年1月29日
監督:藤井道人
出演:綾野剛,舘ひろし,尾野真千子,北村有起哉,市原隼人,磯村勇斗,豊原功補
映画『ヤクザと家族 The Family』| 大ヒット上映中

1999年、覚せい剤が原因で父親を亡くした山本賢治(綾野剛)は、柴咲組組長の柴咲博(舘ひろし)の危機を救ったことからヤクザの世界に足を踏み入れる。2005年、ヤクザとして名を挙げていく賢治は、自分と似た境遇で育った女性と出会い、家族を守るための決断をする。それから時は流れ、2019年、14年間の刑務所暮らしを終えた賢治だったが、柴咲組は暴力団対策法の影響で激変していた。
『新聞記者』などの藤井道人監督がメガホンを取り、一人のヤクザの生きざまを三つの時代に分けて描くヒューマンドラマ。ヤクザになった男が大切な仲間や恋人と出会うも、暴力団対策法が施行されたことにより波乱が起きる。主人公のヤクザを『新宿スワン』シリーズや『楽園』などの綾野剛、主人公と父子の契りを結ぶ組長を『終わった人』などの舘ひろしが演じるほか、尾野真千子、北村有起哉、市原隼人、磯村勇斗などが共演する。

1999年、2005年、2019年と、3つの時代を生きた1人のヤクザの姿を描いたヒューマンドラマ。綾野剛を始めとする演技派の俳優陣の演技力は素晴らしい。特に3つの時代を生きた綾野剛演じる賢治の表情がどれも違っていて、その演技力の高さに引き込まれました。ヤクザ映画は個人的には苦手なのですが、この映画は"ヤクザの物語”ではなく"家族の物語”でした。ヤクザを肯定するわけではないが、ヤクザだって一人の人間。自分の過去や生き方に苦しんだり、周囲に迷惑をかけたり傷付けたり…。生きにくい社会で生きていかなければならない現実。生活や仕事が違うとはいえ、なんだか他人ごととは思えないような切なさを感じてしまいました。ヤクザにだって人権はあるのだ。ヤクザは家族を築けるのか…時代は違えど、家族を想う気持ちや、愛されたい愛したいと思う気持ち。守りたい守られたいと思う気持ちは一緒であって誰もが持っているもの。"家族”という普遍的なテーマと "ヤクザ”という要素をこれ程までに上手くミックスさせて感動作に仕上げたのだから素晴らしい!昔は「カッコいい」「義理と人情の男が生きる道」というイメージがあったヤクザが、いまの時代では「ダサい」「古い」なんてイメージを持たれている。昔と今の反社会的組織の立場や変化を上手く描いた藤井道人監督の表現力もまた素晴らしい!人は一人じゃ生きていけない。でも誰かに頼ったり、誰かの傍にいたいと思ってしまうと、誰かを傷付けてしまうかもしれない。捨てられる過去と、捨てたくても捨てられない過去がある。人間って不器用で臆病で孤独な生き物なんだと感じました。
不器用ながらも誰かの身代わりになってでも家族を守ろうとした賢治にとっては最後は幸せだったのかもしれない…。救いようのない話なんだけど、少しだけ救われた気がしました。切なくて切なくて切ない映画でした。ちょっと話そうか。

この作品の評価・・・・★★★★★★★☆☆☆(満点は★10)
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ある人質 生還までの398日

2021年02月03日 21時11分01秒 | 映画評論ア行

製作年:2019年
製作国:デンマーク/スウェーデン/ノルウェー
日本公開:2021年2月19日
監督:ニールス・アルデン・オプレヴ
出演:エスベン・スメド,トビー・ケベル,アナス・W・ベアテルセン
映画『ある人質 生還までの398日』公式サイト

デンマーク人写真家のダニエル・リュー(エスベン・スメド)は、戦時下の日常を世界に伝えるため内戦中のシリアを訪れるが、突如過激派組織ISに拘束されてしまう。彼の拘束を知った家族は人質救出の専門家に協力を依頼するも、デンマーク政府はテロリストと交渉しない方針を取り、家族はISが要求する身代金の調達に苦慮する。一方、人質として恐怖と不安に苛まれるダニエルやほかの人質のもとにアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリー(トビー・ケベル)が加わり、彼とダニエルは友情を育む。
シリアで過激派組織ISの人質となるも、奇跡的に生還したデンマーク人写真家ダニエル・リューの体験に基づくドラマ。およそ13か月にわたる過酷な拘束生活の実態と、彼の救出に奔走した家族の苦悩を描く。『幸せな男、ペア』などのエスベン・スメド、『ワイルド・ストーム』などのトビー・ケベルらが出演。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』などのニールス・アルデン・オプレヴと、本作に出演している俳優アナス・W・ベアテルセンが共同で監督を務め、『悪党に粛清を』などのアナス・トマス・イェンセンが脚本を担当する。

Filmarksのオンライン試写会にて鑑賞。過激派組織ISに13ヶ月ものあいだ拘束された元体操選手で写真家の男性の過酷な体験に基づいたドラマ。デンマークのように身代金の要求に応じない国がほとんどだろう。危険な地域に自ら向かうことは、どの国でも"自己責任”という意見が多いが、それでも家族の立場からしたら本当に心配で胸が張り裂けるような思いだろう。人質ビジネスによってテロリストたちは生計を立てているのかと思うと複雑だ…。数年前に日本人が人質になった事件を思い出しました。
拉致されて拷問を受けるダニエル。そしてダニエルの無事を祈る家族。ダニエルと共に恐怖と絶望の日々を送る人質たち。3つの視点から物語は進んでいきます。実話を基にしているだけあって派手なアクションや演出は無く淡々と描かれていますが、いつ解放されるかも分からない状況に置かれている人間たちの恐怖がリアルで観ているこちらにも伝わってきました。国境という見えない線によって憎しみが生まれてしまうことで無実の人が犠牲になってしまうことが悲しいです。
ダニエルのように生還できた人間はきっと一握りで、多くのジャーナリスト達が過激派組織に殺されたことも事実。"自己責任”という意見もわかるが、もしも戦地のリアルな状況を伝える人がいなかったら、平和は一生訪れないのかもしれない。どうか命を懸けて現実を伝えようとする人たちが報われますように…

この作品の評価・・・・★★★★★★☆☆☆☆(満点は★10)
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花束みたいな恋をした

2021年02月02日 22時59分13秒 | 映画評論ハ行

製作年:2020年
製作国:日本
日本公開:2021年1月29日
監督:土井裕泰
出演:菅田将暉,有村架純,清原果耶,細田佳央太,オダギリジョー,戸田恵子
映画『花束みたいな恋をした』公式サイト

ある晩、終電に乗り遅れた大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)は、東京・京王線の明大前駅で偶然出会う。お互いに映画や音楽の趣味がよく似ていたこともあり、瞬く間に恋に落ちた二人は大学卒業後、フリーターとして働きながら同居を始める。ずっと一緒にいたいと願う麦と絹は、今の生活を維持することを目標に、就職活動を続ける。
『コーヒーが冷めないうちに』などの有村架純と『帝一の國』などの菅田将暉を主演に迎えた恋愛物語。東京・井の頭線の明大前駅で終電を逃してたまたま出会った男女と、全ての事柄が絡み合いながらリンクしていく様子を描写する。有村が主演を務めた『映画 ビリギャル』などの土井裕泰が監督を務め、ドラマ「東京ラブストーリー」「カルテット」などの脚本家・坂元裕二が脚本を書き下ろした。

偶然出会ったことから始まる若い男女のラブストーリー。等身大の恋愛というか、親近感を感じる恋愛というか、いまを生きる若者たちのリアルな恋愛ってこんな感じなんだろうというか、共感できる部分が多くて思わずクスっと笑ってしまうような場面が多くて楽しめました。話してて好きなモノが一緒だっと知った時の興奮だったり、付き合うか付き合わないかのドキドキだったり、デートが終わって家に帰ってきたら親にグチグチ言われて現実に引き戻される気持ちだったり、あぁー!わかるわかる!と若かった頃の感情が蘇ってきました。終電を逃したことで出会った麦と絹。これだけ趣味や価値観が同じなら、そりゃあ運命だと思っちゃいますよね。でもどれだけ綺麗な花束であっても、ずっと美しさが続くわけじゃない。麦と絹のスタートがあまりに理想的で完璧な恋愛だっただけに、少しでも崩れてしまうと、現状維持を保つことは難しいのかもしれない。出会いは別れの始まり…。大学生の恋愛と社会人の恋愛って、やっぱり好きとか勢いだけじゃ上手くいかないんだよなぁ…。共感から価値観のズレが出てくる様子がとてもリアルに描かれていて、誰が観ても共感できる部分がきっと見つかると思います。自分にとっての幸せなんて人それぞれなのだと。あの時の幸せが、あの時の失敗があるから、今の自分があるのだと教えてくれる映画でした。最後に麦と絹が出した答えが素敵だったし、ラストのファミレスのシーンが印象的。どんなに好きでも、泣きながら抱き合っても、恋愛って上手くいかないから不思議だ。そして伏線の回収が見事でした!
映画なんだけど、ずっと小説を読んでるような不思議な感覚の作品でした。でもちょっとご都合主義な部分もあったり…。上目遣いの有村架純は可愛すぎた。でもこれってカップルで観たら、観終わった後で気まずくなりません??それと、どれだけ好きな相手とでも駅から徒歩30分の家には絶対に住みたくない(笑)

この作品の評価・・・・★★★★★★☆☆☆☆(満点は★10)
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