股間の解放記

普通の社会人PEKOの、日々思うことをつづっていきます。

ノマドランド

2021年03月30日 13時57分10秒 | 映画評論ナ行

製作年:2020年
製作国:アメリカ
日本公開:2021年3月26日
監督:クロエ・ジャオ
出演:フランシス・マクドーマンド,デヴィッド・ストラザーン,リンダ・メイ
ノマドランド|映画|サーチライト・ピクチャーズ

アメリカ・ネバダ州に暮らす60代の女性ファーン(フランシス・マクドーマンド)は、リーマンショックによる企業の倒産で住み慣れた家を失ってしまう。彼女はキャンピングカーに荷物を積み込み、車上生活をしながら過酷な季節労働の現場を渡り歩くことを余儀なくされる。現代の「ノマド(遊牧民)」として一日一日を必死に乗り越え、その過程で出会うノマドたちと苦楽を共にし、ファーンは広大な西部をさすらう。
ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション小説を原作に、「ノマド(遊牧民)」と呼ばれる車上生活者の生きざまを描いたロードムービー。金融危機により全てを失いノマドになった女性が、生きる希望を求めて放浪の旅を続ける。オスカー女優フランシス・マクドーマンドが主人公を演じ、『グッドナイト&グッドラック』などのデヴィッド・ストラザーンをはじめ、実際にノマドとして生活する人たちが出演。『ザ・ライダー』などのクロエ・ジャオがメガホンを取り、第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で金獅子賞を獲得した。

本年度アカデミー賞でも最有力とも言われている本作。車上生活を送る女性の姿を描いたロードムービー。ノマドとしての生活。そしてファーンが何故ノマドという生活を選んだのかが描かれています。車上生活というのは一人で生きているように見えて、実は周囲の人々に支えられながら生きている。プライバシーや犯罪防止のために隣人との交流が全くない今の社会において、人との繋がり肌でを感じられるノマドとは本当は理想的な生き方なのかもしれない。場所を変えて、仕事を変えて、その時にその環境に順応しながら生きていくファーンたち。ノマドという生活は“さよなら”が無い。またどこかで、また数年後、“また今度”会えるのだから悲しみも寂しさも無い。悲しみや孤独を抱えながらも、時には助け、時には助けられながら“いま、生きてる!”って感じながら生きたい。自分が死ぬ時に後悔しない生き方をしているノマドの人たちが羨ましくも感じました。そしてノマドという生き方も1つの選択肢であることは間違い無いと確信しました。何度も何度も救いの手が差し伸べられているのに、ファーンがそれを断って車上生活を選ぶのには、疑問に思う一方で、それだけの決心があるのだと納得してしまう。自分だったらどういう選択をするか…観ていて色々と考えてしまった。ファーンの心境が丁寧に描かれていて、過去を見つめ直し、過去との決別をする彼女の姿が印象的でした。
エンターテイメント作品ではなくアメリカの大自然の風景が印象的なドキュメンタリーのような淡々とした物語なのに不思議と惹かれてしまうような作品でした。今のアメリカ社会の一部分を見れたような気がして、とても考えさせられる1本でした。
でもやっぱり家があって、安定した仕事の収入が欲しいと思ってしまう僕は、まだまだ未熟な人間なのだろうか…。ずっとは辛いけど、1週間ぐらいなら経験してみたくなった。

この作品の評価・・・・★★★★★★☆☆☆☆(満点は★10)
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泣く子はいねぇが

2021年03月29日 16時52分45秒 | 映画評論ナ行

製作年:2020年
製作国:日本
日本公開:2020年11月20日
監督:佐藤快磨
出演:仲野太賀,吉岡里帆,寛一郎,山中崇,余貴美子,柳葉敏郎
映画『泣く子はいねぇが』| 11月20日(金)公開

秋田・男鹿半島のさびれた港町、娘が生まれたのにいつまでも父親の自覚を持てないたすく(仲野太賀)に、妻ことね(吉岡里帆)は愛想をつかしていた。大みそかの夜、「悪い子はいないか」となまはげたちが練り歩く街の様子を生中継していた全国放送のニュース番組に、全裸のなまはげが全力疾走する姿が映る。そのなまはげの正体は、妻との約束を守れず泥酔したたすくだった。
『ガンバレとかうるせぇ』などの佐藤快磨が、オリジナル脚本でメガホンを取ったドラマ。秋田・男鹿半島の伝統行事なまはげを題材に、いつまでも大人になりきれない若者たちが迷いながら成長していく過程を描く。『静かな雨』などの仲野太賀が主演を務め、『見えない目撃者』などの吉岡里帆、『下忍 赤い影』などの寛 一 郎、山中崇、余貴美子、柳葉敏郎ら多彩な顔ぶれが集結。

自らの失態によって離婚されてしまった男の苦悩する姿を描いた本作。秋田の伝統行事である“なまはげ”。お面や叫び声で子供を怖がらせようとする、たすくの姿が切なくて可愛そうに見えました。大人になりきれていないし自分で蒔いた種なのだけど、こんなにも人生って負の連鎖が続くものか…。何をやっても上手くいかない。いくら伝統文化とは言っても、あれぐらいの事なら若気の至りとして許してあげられないものか?完璧な人間なんていないんだ。失敗しない人間なんていないんだ。愛する妻と娘の姿を見たいがために、なまはげの姿でした近づけないたすくの気持ちを考えると切なすぎる。なまはげで過ちを犯したのに、なまはげに救われているたすく。お遊戯会で娘を見つけられないのは切なすぎるよ。たすくを演じた仲野太賀の演技が素晴らしかったです。

この作品の評価・・・・★★★★★☆☆☆☆☆(満点は★10)
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騙し絵の牙

2021年03月24日 18時14分54秒 | 映画評論タ行

製作年:2020年
製作国:日本
日本公開:2021年3月26日
監督:吉田大八
出演:大泉洋,松岡茉優,宮沢氷魚,池田エライザ,斎藤工,中村倫也,國村隼
映画『騙し絵の牙』公式サイト | 3月26日(金)全国公開

大手出版社の薫風社で創業一族の社長が急死し、次期社長の座を巡って権力争いが勃発する。専務の東松(佐藤浩市)が断行する改革で雑誌が次々と廃刊の危機に陥り、変わり者の速水(大泉洋)が編集長を務めるお荷物雑誌「トリニティ」も例外ではなかった。くせ者ぞろいの上層部、作家、同僚たちの思惑が交錯する中、速水は新人編集者の高野(松岡茉優)を巻き込んで雑誌を存続させるための策を仕掛ける。
「盤上のアルファ」「罪の声」などの作家・塩田武士が、俳優・大泉洋を主人公に当て書きした小説を映画化。廃刊の危機に瀕した雑誌の編集長が、存続を懸けて奔走する。大泉が編集長にふんするほか、『勝手にふるえてろ』などの松岡茉優、『64-ロクヨン-』シリーズなどの佐藤浩市らが共演。『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八が監督を務め、『天空の蜂』などの楠野一郎と共同で脚本も手掛けた。

Filmarksさんのオンライン試写会にて鑑賞。豪華すぎるキャストと、当初の公開予定だった昨年から何十回と予告編を観てたので期待してました。冒頭の大泉洋の挨拶で「平均9.4回騙されます!」と念押しされたので、さらに期待大にして鑑賞開始。結果から言ってしまうと、小さな騙し騙されはあるものの、個人的には期待していた「うわっ!騙された!!」という感覚は、ほとんどありませんでした。廃刊の危機に陥っている雑誌を救おうと奮闘する人々の騙し合い合戦はあるものの、厳しい出版業界の中で生き抜こうとする人たちの人間ドラマが目立っていて、“真面目で良い話”という印象が強かったです。どの業界にも不況の波はくるもの。時には仕事を変えて、考え方を変えて、形を変えて、時代の流れに合わせなきゃいけないのかと今の出版業界の裏側を見れたような気がしました。登場人物が多いので混乱するかと思いましたが、すんなりと関係性を理解できました。伏線の回収は上手いので“ああ、そういうことね”と思わせるところもあるが、テンポも良くて観やすい作品だったからこそ、刺激というか“アク”というか、もっとドロドロした人間ドラマが無かったのが勿体ない。
宣伝の時点で“あなたは絶対に騙される!!騙し合いバトル!!”と大袈裟に宣伝しまくると、どうしても期待が上がってしまうし「どこで騙されるんだろ!?どんなドンデン返しがあるんだろ!?」とハードルが上がってしまうから良くないと思う。作品のインパクトを与えることも大事だけど、あまり言わないほうがいいと思います。
「映画にもドラマにもなっていないから本を読むしかない」と言う女の子。当たり前のことだけど、そんな事を言われると久しぶりに本を読みたくなった(笑)

この作品の評価・・・・★★★★★☆☆☆☆☆(満点は★10)
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ミナリ

2021年03月20日 12時20分50秒 | 映画評論マ行

製作年:2020年
製作国:アメリカ
日本公開:2021年3月19日
監督:リー・アイザック・チョン
出演:スティーヴン・ユァン,ハン・イェリ,アラン・キム,ネイル・ケイト・チョー
映画『ミナリ』公式サイト

1980年代、農業で成功したいと意気込む韓国系移民のジェイコブ(スティーヴン・ユァン)は、アメリカ・アーカンソー州に家族と共に移住。広大な荒地とおんぼろのトレーラーハウスを見た妻は、夫の無謀な冒険に危うさを感じる。一方、しっかり者の長女アンと好奇心豊かな弟デビッドは新天地に希望を見いだし、デビッドは口の悪い破天荒な祖母とも風変わりな絆を育む。しかし、干ばつなどのために窮地に立たされた一家をさらなる試練が襲う。
『ムーンライト』などの映画スタジオA24とブラッド・ピットの制作会社プランBが組み、成功を夢見てアメリカ南部に移住した韓国系移民一家を描く人間ドラマ。さまざまな困難に直面しながらもたくましく生きる家族の物語は、サンダンス映画祭でグランプリと観客賞を受賞した。監督と脚本はリー・アイザック・チョン。『バーニング』シリーズなどのスティーヴン・ユァンが一家の父親を演じ、『春の夢』などのハン・イェリ、『チャンス商会 ~初恋を探して~』などのユン・ヨジョンらが共演する。

最近よくお世話になっている映画スタジオA24と、ブラッド・ピットの制作会社プランBが組んだ、アメリカ南部に移住した韓国系移民一家を描いた本作。第93回アカデミー賞にも作品賞、監督賞など6部門にノミネートされています。慣れない土地で野菜作りをしようと決めたお父さん。そんな夫の姿に不安しかないお母さん。しっかり者の女の子。心臓の病気を抱えている男の子。そして一家と一緒に住むことになった祖母。個性的な家族なのだけど、特に男の子とおばあちゃんのやり取りが面白い。クスっと笑ってしまうシーンがたくさんありました。最初はおばあちゃんがウザいなと思いましたが、観ていくうちに可愛くて見えてきました。デビッドはもう最初から可愛い!ラストシーンで走り出す姿にドキドキハラハラさせられたけど…。
自分の夢を叶えようとするお父さんの気持ちは分かるけど、生きていくには当たり前だけどお金が必要。貧乏でもいいから家族4人幸せに平凡に暮らしたいと思うお母さんの気持ちもよく分かります。信仰心を持つお母さんと、現実にしか目がいかないお父さん。そりゃあ、お母さんはずっと我慢していたんだから我慢の糸が切れてしまうのも無理はない。文化や言葉が違う慣れない場所で生きていくのは、そう簡単ではない。困難なこともあるけど家族が支え合って生きていこうとする姿は素敵でした。
良い話なのは間違いないし、家族の絆や、それぞれの想いが丁寧に描かれていました。ただし、笑えるほどではないし、泣けるほどでもない。伝えたいことがハッキリしていて本当に良い話なのだけど淡々とした話だったので途中でちょっと飽きてしまいました。同じアジア系を描いた「フェアウェル」と似た印象。つまらなくはないけど、もう一押し欲しかった。
途中で“ミナリ”の意味を知ってビックリしました(笑)全てのおばあちゃんに捧ぐ…

この作品の評価・・・・★★★★★☆☆☆☆☆(満点は★10)
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コンジアム

2021年03月19日 13時52分31秒 | 映画評論カ行

製作年:2018年
製作国:韓国
日本公開:2019年3月23日
監督:チョン・ボムシク
出演:イ・スンウク,ウィ・ハジュン,パク・チヒョン
映画『コンジアム』|オフィシャルサイト

恐怖動画を配信しているチャンネル「ホラータイムズ」が一般の参加者を募集し、有名な心霊スポット「コンジアム精神病院」に潜入する。隊長で主宰者のハジュンをはじめ7人の男女はカメラやドローン、電磁検出器といった機材を持ち、探索を開始。サイトへのアクセス数は上がっていくが、ハジュンの仕掛けた演出ではない怪現象が次々と起こる。
韓国で心霊スポットとして知られる実在の廃病院を舞台にしたホラー。閉鎖された病院を訪れた若者たちが、恐怖に遭遇するさまを描く。『ホラー・ストーリーズ』シリーズなどのチョン・ボムシクが監督を務め、イ・スンウク、ウィ・ハジュン、パク・チヒョンのほか、ドラマ「黒騎士 ~永遠の約束~」などのパク・ソンフンらが出演した。

韓国の最恐心霊スポットと言われる実在する廃病院を舞台にしたホラー。カメラの視線と登場人物の視線を一致させるカメラワーク撮影でされたPOV映画。ドローンを使ったり、ライブ配信でお金を稼ごうとする設定は今どきのホラー映画といったところ。ストーリーはほとんど無く、お化け屋敷ににいるような感覚になるホラー作品に仕上がっています。中盤までは何か起きそうで何も起きませんが、後半に怒涛の恐怖演出が続きます。じわじわ来るような雰囲気は、イヤホンをして観たら絶対にビクッっとしてしまうでしょう。ただし、自分のようなホラー映画好きからすると、ちょっと物足りなさを感じました。よくある展開、よくある怖がらせ方、よくあるオチ。黒目玉も何度も見たことある(笑)廃病院で起きた出来事をもっと詳しく描いてくれていたら、恐怖度が増したかもしれない。友達とお酒を飲みながら観れば楽しめるかなと思います。こういう映画を観て毎回思うのが、面白半分で心霊スポットに行くもんじゃない。

この作品の評価・・・・★★★★★☆☆☆☆☆(満点は★10)
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おもかげ

2021年03月18日 14時45分36秒 | 映画評論ア行

製作年:2019年
製作国:スペイン/フランス
日本公開:2020年10月23日
監督:ロドリゴ・ソロゴイェン
出演:マルタ・ニエト,ジュール・ポリエ,アレックス・ブレンデミュール
映画『おもかげ』公式サイト

元夫と旅行中の息子から電話を受けたエレナ(マルタ・ニエト)は、息子が一人で海辺に取り残されていることを知るが、それがわが子の声を聞いた最後の会話となる。10年後、息子が失踪した海辺のレストランで働くエレナは、息子によく似たフランス人の少年ジャン(ジュール・ポリエ)と出会う。それ以来ジャンは彼女の元を度々訪れるようになるが、彼らの関係は周囲に混乱を巻き起こしていく。
幼い息子が消息を絶って以来、失意の日々を過ごしてきた母親の希望と再生の物語。ロドリゴ・ソロゴイェン監督が撮り上げ、第91回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた作品のその後が描かれる。主演のマルタ・ニエトは第76回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門の最優秀女優賞を獲得。本作が長編映画3作目となるジュール・ポリエ、『ペインレス』などのアレックス・ブレンデミュール、『愛されるために、ここにいる』などのアンヌ・コンシニらが共演する。

冒頭15分のワンカット映像が第91回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた『Madre』のその後を描いた長編作品。元夫と旅行中の息子が忽然と消えてから10年後。息子が失踪した海辺で主人公のエレナは息子に似た少年を見つけたことから、物語は始まります。少年ジャンは息子ではないと分かっていても、彼の存在が気になってしょうがないエレナ。それは周囲の人間を混乱させていくのです。エレナの気持ちは確かにわかる。愛する我が子と似た子供を見つけたら…傍にいたいと思う気持ちは確かに分かる。立ち直るまでには時間がかかる。“大丈夫”な人間なんて一人もいないのだ。母親としての愛なのか、恋人としての愛なのか、絶妙な関係性が何とも言えない雰囲気で上手く描かれていて切なかったが、エレナの行動によってジャンの家族は迷惑に思うだろうし、エレナの恋人だって困惑するのは当たり前。エレナの言動に共感できなかったのが本音。もう少し90分くらいにまとめられたと思うし、サスペンス要素も欲しいところ。それでもエレナとジャンが互いに惹かれ合って、過去の自分と決別できたのは良かったと思います。元夫が何故に息子の傍にいなかったのが気になるし、失踪した息子はどこに行ってしまったのだろう…謎だ。

この作品の評価・・・・★★★★★☆☆☆☆☆(満点は★10)
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スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~

2021年03月15日 18時23分54秒 | 映画評論サ行

製作年:2019年
製作国:フランス
日本公開:2020年9月11日
監督:エリック・トレダノ,オリヴィエ・ナカシュ
出演:ヴァンサン・カッセル,レダ・カテブ,エレーヌ・ヴァンサン
映画『スペシャルズ! ~政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話~』 公式サイト

「正義の声」はほかの施設で見放された子供たちも受け入れる自閉症ケア施設。ブリュノ(ヴァンサン・カッセル)が経営し、友人のマリク(レダ・カテブ)がそこで働くドロップアウトした若者たちを教育している。ある日、当局の監査が入り、無認可で赤字経営となっていた正義の声は閉鎖を迫られる。さらには、重度の自閉症があるヴァランタンが失踪してしまう。
『最強のふたり』などのエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの監督コンビが、社会からはじき出された子供たちを救った男性たちの実話を映画化。ドロップアウトした若者たちが自閉症の子供たちを世話する施設に携わる二人が、閉鎖の危機に追い込まれながらも奮闘する。施設の代表を『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』などのヴァンサン・カッセル、共に働く友人を『永遠のジャンゴ』などのレダ・カテブが演じる。

自閉症施設で子供たちの世話をする男性たちが奮闘する実話作品。ドキュメンタリーを観ている
ような描写で考えらせられることが多かった作品でした。ブリュノと友人のマリクが多くの子供たちを受け入れて教育や自立に向けたサポートをするが、経営は赤字。それでも彼らは子供たちを誰一人として見捨てることなく受け入れ続けるのです。そんな彼らを見て、外部の人間たちは「無許可だ!」「子供たちが可哀相だ!」と文句を言う。文句を言うのは誰だって出来る。でも行動できる人間は少ない。自分の身を削ってまで子供たちを救い、仕事が無い若者たちにも仕事を与えるブリュノやマリクの姿に、ただただ尊敬しっぱなしでした。気持ちさえあれば資格も過去も関係ない。こういう人たちこそ、本当のスーパーヒーローと言うのだろう。
御涙頂戴の映画ではなく、自閉症の症状であったり、自閉症の子供を持つ家族の大変さ、周囲との関係やストレスも描かれていて、とても勉強になりました。でも実際に、自分がこういう場所で働くことになったら、ストレスでイライラしてしまうかもしれない。人を助ける素晴らしい仕事であると同時に、精神的にも体力的にも大変だろうし誰でも出来る仕事ではないと感じました。相模原の障がい者施設で無差別殺傷事件を鑑賞中に思い出しました。“障がい者は生きていても無意味だから殺した”という犯人の殺害動機に怒りを感じたのを今でも覚えています。障がい者も健常者も共に支え合って生きていける世の中であってほしい。こういう施設で働く職員さん達にもっとサポートや税金を使ってほしいと思いました。

この作品の評価・・・・★★★★★★★☆☆☆(満点は★10)
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星の子

2021年03月10日 18時36分26秒 | 映画評論ハ行

製作年:2020年
製作国:日本
日本公開:2020年10月9日
監督:大森立嗣
出演:芦田愛菜,岡田将生,大友康平,高良健吾,黒木華,永瀬正敏,原田知世
芦田愛菜主演、映画『星の子』公式サイト

父(永瀬正敏)と母(原田知世)から惜しみない愛情を注がれて育ってきた、中学3年生のちひろ(芦田愛菜)。両親は病弱だった幼少期の彼女の体を海路(高良健吾)と昇子(黒木華)が幹部を務める怪しげな宗教が治してくれたと信じて、深く信仰するようになっていた。ある日、ちひろは新任の教師・南(岡田将生)に心を奪われてしまう。思いを募らせる中、夜の公園で奇妙な儀式をする両親を南に目撃された上に、その心をさらに揺さぶる事件が起きる。
「こちらあみ子」「あひる」などで知られ、「むらさきのスカートの女」で第161回芥川賞を受賞した今村夏子の小説を原作にしたヒューマンドラマ。怪しげな宗教を信じる両親のもとで育った少女が、思春期を迎えると同時に自分が身を置いてきた世界に疑問を抱く。メガホンを取るのは『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。』『タロウのバカ』などの大森立嗣。『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』などの芦田愛菜が、ヒロインのちひろを演じている。

怪しげな宗教を信仰する両親のもとで育った少女の葛藤を描いた本作。芦田愛菜ちゃんもなかなか難しくてデリケートな役に挑んだなと感心しちゃいます。宗教を信じる両親、数学の先生への恋心、友人関係、心配する親戚…思春期のちひろにとっては整理することが出来ないほど色々な悩みを抱えている。宗教に全く興味が無い僕にとっては“元気になる水?バカじゃないの?”と思ってしまうけど、現実社会にもそれを信じてしまう人間が一定数いる。本人たちは真面目にやっているのだから、何を信じようと自由ではあるけれど、やっぱり関りたくはないと思ってしまうのが本音。でも否定することはよくない。人を騙したり傷付けたりしなければ宗教は悪ではない。宗教という何とも感想が書きづらいテーマの映画を観てしまった。信じることで支えられたり救われたりする人がいるのも事実。信じる信じないって難しい問題だよな…。
ちひろを演じた芦田愛菜ちゃんはやはり天才だ。幼い頃から両親の教育によって信仰を疑わなかったはずが、恋心や友人たちとの交流の中で気持ちが揺らいでいく演技が見事。愛菜ちゃんやっぱり凄い!そして岡田将生が教師役をやると「告白」のウエルテル先生を思い出してしまう。
ちひろが悩み苦しみ、何か答えが出すのかと思ったが最後まで何も無く星を見て終わってしまったことにモヤモヤしました。数学の先生との関係もどうなったの??
「あなたがここにいるのは自分の意志とは関係ないのよ」…じゃあ何なのさ!とツッコミたくなりました(笑)

この作品の評価・・・・★★★★★☆☆☆☆☆(満点は★10)
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グッバイ、リチャード!

2021年03月09日 16時28分38秒 | 映画評論カ行

製作年:2018年
製作国:アメリカ
日本公開:2020年8月21日
監督:ウェイン・ロバーツ
出演:ジョニー・デップ,ローズマリー・デウィット,ダニー・ヒューストン
映画『グッバイ、リチャード!』公式サイト

美しい妻、娘と共に幸せに暮らしていた大学教授のリチャード(ジョニー・デップ)は、ある日余命180日であることを告げられ、さらに妻の不倫まで発覚する。残りの人生を好きなように生きると決めた彼は遠慮なく物を言い、授業中でも酒やマリファナを楽しむように。ルールや立場にとらわれない生き方に喜びを見いだしたリチャードの型破りな言動は、周囲にも影響を与えていく。
余命宣告を受けた大学教授の生きざまをジョニー・デップ主演で描く人間ドラマ。『ハート・ロッカー』などのグレッグ・シャピロがプロデューサーを、『グッバイ、ケイティ』などのウェイン・ロバーツが監督を務め、人生の終わりをどう生きるかという普遍的なテーマをユーモラスにつづる。共演には『レイチェルの結婚』などのローズマリー・デウィット、『ビッグ・アイズ』などのダニー・ヒューストン、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』などのゾーイ・ドゥイッチらがそろう。

余命宣告を受けた大学教授の日々を描いたジョニー・デップ主演のドラマ。いまだにジャック・スパロウ船長のイメージが強くて頼りない不安げな表情のジョニー・デップがに少々違和感のような新鮮味を感じました。でもこういう普通の役の方が個人的には魅力的で好き。
余命宣告を受けたリチャードは残りの人生を謳歌しようと、自由で破天荒な生活を送るようになります。授業は飲み屋で。薬物もする。妻の浮気も許す。そんな何でもありの日々の中でリチャードは1つの答えを見つけていくのです。人間はいつか死ぬ。それは誰もが避けられないこと。ならば生きてる今を精一杯生きること。リチャードの言動はテキトーに見えて実は的を得ているのかもしれないと観ていて思いました。ガン患者の会に出席したリチャードは「こんなの無意味」だという。それはそれで合っているのかもしれない。死へのカウントダウンを仲間同士で励まし合うのではなく、病気のことを考えずに明るく楽しく残りの時間を過ごそうとするのも1つの答えでもある。でも実際はリチャードのような強くなれない人ばかりだろう。色々考えてしまうお話でした。しかし余命モノの映画なのに、ブラックジョーク満載で気持ちが重く暗くならなかったので観やすい映画でした。リチャードが見つけた答え。存在してるだけではダメ!生きろ!と最後まで自分らしさを貫けるってカッコいいな。こういう生き方もあるのだと教えてくれる地味だけど素敵な作品でした。
ラストシーンの続きはどうなったんだろうか…。グッバイ、リチャード!でも犬はどうなった?家族はどうなった?

この作品の評価・・・・★★★★★★☆☆☆☆(満点は★10)
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旅立つ息子へ

2021年03月08日 12時43分53秒 | 映画評論タ行

製作年:2020年
製作国:イスラエル/イタリア
日本公開:2021年3月26日
監督:ニル・ベルグマン
出演:シャイ・アヴィヴィ,ノアム・インベル,スマダル・ヴォルフマン
映画『旅立つ息子へ』公式サイト

グラフィックデザイナーの仕事を引退したアハロン(シャイ・アヴィヴィ)は、20歳の息子ウリ(ノアム・インベル)と一緒に田舎町でのんびり生活している。アハロンは、自閉スペクトラム症の息子の面倒を一人で見てきたのだった。ところがある日、一人息子の将来を案じた別居中の妻タマラ(スマダル・ヴォルフマン)が、全寮制の特別支援施設への入所を決めてしまう。
自閉スペクトラム症の息子と父親の絆を描くヒューマンドラマ。二人で暮らしてきた父子が突然引き離されることになり、父親は息子を連れて逃げることを決心する。脚本家ダナ・イディシスの父親と弟の実話を基に、『僕の心の奥の文法』などのニル・ベルグマンが監督を手掛け、父親をシャイ・アヴィヴィが演じ、息子をノアム・インベル、母親をスマダル・ヴォルフマンが演じている。本作は、第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「カンヌ2020」に選出された。

オンライン試写会にて鑑賞。自閉症の息子とその父親の絆を描いた物語。父と息子。2人で過ごしてきた平凡でも幸せな日々だったが、別居中の妻によって2人は離ればなれになってしまう。父アハロンにとっては“全ては息子のため”と思ってしてきたこと。突然パニックになり周囲の人々に迷惑をかけてしまうこともある。でも息子のウリは障害がありながらも徐々に外の世界に興味を持ち始めて自立していく。父親にとってはそれが嬉しくもあり、でも自分の手から離れていくような気がして寂しくもあり…。アハロンの複雑な気持ちが伝わってきて切なかったです。親から見たらいつまでも子供。子供から見たらいつまでも親。でも、いつか親離れを、子離れをしなければいけない時が誰にだって必ず来る。障害者施設に入ることが正しいとか、誰とどういう生活をするのが正しいとか、人それぞれだから正解なんて無いけれど、アハロンとウリが互いに幸せを感じられたのだからこの映画はハッピーエンドでいいではないか。障害がある無し関係なく、子供って親が知らないところで成長していて自分で新しいことに挑戦していたり見つけたりしているんだなと、親目線で感動してしまいました。ウリがボタンを押す姿に全てを悟ったアハロンの表情が何とも言えない素敵。
父親役のシャイ・アヴィヴィも、ウリ役を演じた新人のノアム・インベルも素晴らしい演技でした!イスラエル映画良いじゃん♪

この作品の評価・・・・★★★★★★☆☆☆☆(満点は★10)
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事故物件 恐い間取り

2021年03月05日 09時54分46秒 | 映画評論サ行

製作年:2020年
製作国:日本
日本公開:2020年8月28日
監督:中田秀夫
出演:亀梨和也,奈緒,瀬戸康史,江口のりこ,MEGUMI,真魚,木下ほうか
事故物件 恐い間取り | 公式サイト

売れない芸人の山野ヤマメ(亀梨和也)はテレビ番組の企画で、殺人事件が起きた物件で暮らし始める。そこは普通の部屋だったが、撮影した映像には白いものが映ったり、音声が乱れたりしていた。ヤマメはネタのために事故物件を転々とし、芸人としてブレークしていくが、そんななか彼は最恐の事故物件と出合う。
テレビ番組の企画で「事故物件住みます芸人」として人気が出た松原タニシのノンフィクションを、『PとJK』などの亀梨和也主演で映画化するホラー。テレビ出演のために事故物件に住み始めた若手芸人が複数の事故物件を転々としながら、さまざまな怪奇現象に遭遇していく。メガホンを取るのは、『リング』『スマホを落としただけなのに』シリーズなどの中田秀夫。

「事故物件住みます芸人」として人気が出た松原タニシのノンフィクションの映画化。またしてもジャパニーズホラーの駄作が誕生してしまいました。番組の企画で事故物件に暮らし始める男が怪奇現象に襲われるという物語。ホラー映画なのに怖くない。というかコメディ映画。いやっ、コメディ映画だとしても面白くない。1軒目のマンションでの恐怖体験はまだ良いほうで、2軒目のおばあちゃんは怖くない。3軒目は何で急に洗脳されたのか意味不明。4軒目にいたってはもう何がしたいのか理解不能。ダース・ベイダーが出てきたと思ったら、瀬戸康史が小籠包食べてる江口のりこと電話しながらアベンジャーズのような技を繰り出してダース・ベイダーを倒すというカオスな場面に、違う意味で鳥肌が立ちました。と思ったらラストで再びダース・ベイダーが登場(笑)それから、途中途中でお笑い芸人が登場する度に恐怖度が下がってしまった。何でこんなに芸人を登場させなきゃいけないの??おばあちゃんの留守電が何て言ってたのか気になりました。この映画自体が事故物件でした。

この作品の評価・・・・★★★☆☆☆☆☆☆☆(満点は★10)
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バクラウ 地図から消された村

2021年03月04日 18時50分56秒 | 映画評論ハ行

製作年:2019年
製作国:ブラジル/フランス
日本公開:2020年11月28日
監督:クレーベル・メンドーサ・フィーリョ,ジュリアーノ・ドルネリス
出演:ソニア・ブラガ,ウド・キア,バルバラ・コーレン,トーマス・アキーノ
映画『バクラウ 地図から消された村』公式サイト

テレサは村の長老カルメリータが亡くなったことを受けて、故郷の村バクラウに戻ってくる。しかしその日以降、インターネットの地図上から村が消え、謎の飛行物体が上空に出現し、村の命ともいえる給水車のタンクが銃撃を受けるなど、村では異変が続発。やがて村外れで村人が殺害され、それまでほとんど見かけなかったよそ者の来訪によって、村は血なまぐさい暴力の渦に巻き込まれていく。
村の長老の死後、不可解な出来事と暴力の災禍に見舞われる村を舞台にしたスリラー。貧困や格差といった現代社会が抱える問題を投影した物語は、第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で審査員賞に輝くなど世界各地の映画祭を席巻した。メガホンを取ったのは『アクエリアス』などのクレーベル・メンドーサ・フィーリョと、ジュリアーノ・ドルネリス。同作に続きクレーベル監督と組む『蜘蛛女のキス』などのソニア・ブラガ、『異端の鳥』などのウド・キアのほか、バルバラ・コーレン、トーマス・アキーノらが出演する。

奇妙で不気味な村で起きる恐怖を描いたスリラー。簡単にあらすじを読んだ感じだと「ミッドサマー」と似てると思ったが、そこまで似てもいなかったです。冒頭から不気味で怪しげな展開が続き、まさに“見事なまでに狂ってる”村人たちの行動。閉鎖的な村に住む人間たちのコミュニティって異様なほど団結力というか絆や文化が深く根付いていて、外部の人間を受け入れようとしないもの。淡々と村の雰囲気を漂わせつつ、中盤からは怒涛のバイオレンスな描写の連続。全裸のおじいちゃんが強すぎる!村人vs よそ者の対決は見ものです!これは永遠に終わりのない暴力の連鎖だろう。好き嫌いが分かれそうな映画だったが、個人的には「ミッドサマー」ほど狂ってるとは思えませんでした。もっとグロテスクな描写があっても良かったかも。ブラジルの社会情勢を知っていたらもっと楽しめたかもしれない…。伏線を散りばめ過ぎているわりには説明が少なかった気もします。ロバだけは無事に帰ってきて欲しいね(笑)

この作品の評価・・・・★★★★★☆☆☆☆☆(満点は★10)
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