製作年:2022年
製作国:日本
日本公開:2022年12月16日
監督:三宅唱
出演:岸井ゆきの,三浦誠己,松浦慎一郎,中島ひろ子,仙道敦子,三浦友和
生まれつきの聴覚障害により両耳とも聞こえないケイコ(岸井ゆきの)は、下町の小さなボクシングジムで日々練習に励んでいた。彼女はプロボクサーとしてリングに立ち続けながらも、心中は不安や迷いだらけで、言葉にできない葛藤を募らせていた。「一度、お休みしたいです」とジムの会長(三浦友和)宛てにつづった手紙を渡せずにいたある日、彼女はジムが閉鎖されることを知る。
聴覚障害のある元プロボクサー・小笠原恵子さんの自伝を原案にした人間ドラマ。生まれつき耳が聞こえないプロボクサーと、視力を失いつつあるトレーナーの絆を描き、第72回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門に選出された。監督・脚本は『きみの鳥はうたえる』などの三宅唱。主人公を『愛がなんだ』などの岸井ゆきの、彼女を指導するトレーナーを『RAILWAYS 愛を伝えられない大人たちへ』などの三浦友和が演じるほか、三浦誠己、松浦慎一郎、渡辺真起子、仙道敦子らが共演する。
聴覚障害のあるプロボクサーと、視力を失いつつあるトレーナーとの絆を描いた本作。障害や心の葛藤に悩むケイコを演じた岸井ゆきのの演技が素晴らしかったです。大きな展開があるわけではありません。プロボクサーとして練習に励むケイコ。聴覚障害の壁に悩むケイコ。トレーナーとの関係性に悩むケイコ。生きていくうえで壁にぶつかる1人の女性の姿を追ったドキュメンタリー作品を観ているような感覚でした。聴覚障害者の方ならではの苦悩であったり、周囲の人々との関わり方を考えさせられました。「勝手に人の心を読まないで」と伝えるケイコが印象的でした。ボクシングが彼女の唯一の自分らしくいられる道だったのだろう…それを手放すことは相当な覚悟があったはず。自分の生き方は自分で決める。障害あるなし関係なく、ケイコに共感できる人は多いはず。辛い…今いる場所から逃げ出したい。でも諦めたくない、自分に負けたくない。人生は勝者と敗者に分かれるわけではなく、自分なりの答えを出すことの大切さを感じました。物語が進んでいくにつれて、声を発しなくても、音や体の動きや文字で伝ってくる彼女の心の声が少しずつ分かってくることが嬉しかったです。それだけ岸井ゆきのの演技が素晴らしいということ。淡々とした地味な映画であることは否めないが、たしかに目を澄まして観たい映画でした。
この作品の評価・・・・★★★★★★☆☆☆☆(満点は★10)