李氏朝鮮時代に実在した王をモチーフに、歴史に葬られた15日間を追う歴史大作。「悪魔を見た」「甘い人生」など韓国内ではもちろん「G.I.ジョー」など国外でも活躍するイ・ビョンホンが、暴君と呼ばれる王と操り人形とはならずに民を第一に考える影武者の一人二役をこなす。

ほか、「神弓 KAMIYUMI」のリュ・スンリョン、「アドリブ・ナイト」やTVドラマ『トンイ』のハン・ヒョジュ、「トガニ 幼き瞳の告発」のチャン・グァンらが出演。監督は「拝啓、愛しています」のチュ・チャンミン。脚本は第57回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した「オールド・ボーイ」のファン・ジョユン。第49回大鐘賞で最優秀作品賞など過去最多となる主要15部門を制覇。
あらすじ:1616年.李氏朝鮮第15代王・光海君(イ・ビョンホン)は暴君として恐れられるその裏で、権力争いにより暗殺されるかもしれないと怯えていた。ある日、光海君が病に伏せ、妓生宿で腐敗した権力の風刺をしていた道化師のハソン(イ・ビョンホン/二役)が連れてこられる。重臣たちは光海君と瓜二つであるハソンを王の影武者として仕立て上げた。偽者ではないかと疑う家臣たち、急に人が変わったような王に戸惑う王妃。様々な思惑が潜む宮中で、ハソンは次第に傀儡ではなく自らの意志を持ち民について考える真の王として周囲を魅了していくが……。(作品資料より)

<感想>イ・ビョンホンのファンではないが、彼の映画を久しぶりに観た。宮廷歴史大作というから、コスチュームプレイの内容がない時代劇かなと高をくくっていたら、これが予想を覆してよくまとまっている。オーケストラの音楽にのせて王の身支度が始まり、格調高い高貴な気分に浸れる。出だしから上々の出来といっていいだろう。
まぁ、黒沢明監督の「影武者」を持ち出すまでもなく、王そっくりの影武者が本当の王をそでにしてがんばってしまうのだから、面白くないわけがない。

ビョンホンが演じるのは17世紀初頭に実在した朝鮮王朝の15代目の王・光海君と、その影武者に引っ張り出された王とうり二つの道化のハソン。暴君ゆえに毒殺の危機におびえる王の代わりに15日間だけ本物の王にすり替わる計画が実行に移されるが、さてその結末は?・・・。
この手の影武者のお話は最初のうちはうまくいくものの、やがて素性がばれてとんでもないことになるのが落ち。ここでも型通りの展開を見せるが、面白いのが本物の王になりすますビョンホンのコミカルな演技。あのイケメン俳優のこんな飄々とした演技は今まで見たことがなかった。それが危なげもなく淡々と演じて笑いを取るのだがら大したものだ。もっとも、ビョンホンの相手役のリュ・スンリリョンやチャン・グァンといったベテラン俳優の支えもあってのことだが。

しかし、何と言ってもこの映画が優れているのは、道化が王になって初めて見えてくるリーダーの真の役割を、チュ・チャンミン監督が的確に指摘している点にあると言っていいでしょう。
いきなり別人が王様になっているわけだから、なんで周りは気付かないの、って違和感を覚えてもおかしくないところなんだけれど、そういう感じにはならない。彼のために尽くす若い女官のサウォルも、名もない庶民たちの代表として見る者の共感を覚える。
ユニークだったのが、料理番をしている女官たちがいつもなら、王様の食べ残したお下がりを食べるのに、偽物王が食欲旺盛で食べ残しがなく全部たべてしまう。それを側近から聞き、残すようになる優しい偽物でもある。

王に仕える者たちが、偽物の王でも王座に座れば、それは、臣下たちの内面に植えこまれた服従を求める心のスイッチを入れさえすれば王は務まるという、描き方がなされていたからでしょう。臣下たちの「どうか殺してください」という台詞には、日本の切腹文化と似たものが朝鮮にもあったわけですね。
それに、王妃が偽物の正体に気付く場面も鮮やかで、本物の王には胸に矢の傷跡があることを、偽物にはそれがなかった。しかし、この偽物の王が、王妃の兄が反逆罪で囚われているのを助けたことで、王妃が偽物王を愛おしく思ってしまう。人間って不思議です。
本物の王も、ケシの毒で生死を彷徨い、元気になって公務をつとめることになり、自分のいない間に偽の王が政治をきちんとこなしていたことに感謝して、処刑することなく逃がしてやるという結末になっている。こういう設定の映画は、最後まで破綻のない風刺喜劇に仕上がっていて面白い。
2013年劇場鑑賞作品・・・32
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ほか、「神弓 KAMIYUMI」のリュ・スンリョン、「アドリブ・ナイト」やTVドラマ『トンイ』のハン・ヒョジュ、「トガニ 幼き瞳の告発」のチャン・グァンらが出演。監督は「拝啓、愛しています」のチュ・チャンミン。脚本は第57回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した「オールド・ボーイ」のファン・ジョユン。第49回大鐘賞で最優秀作品賞など過去最多となる主要15部門を制覇。
あらすじ:1616年.李氏朝鮮第15代王・光海君(イ・ビョンホン)は暴君として恐れられるその裏で、権力争いにより暗殺されるかもしれないと怯えていた。ある日、光海君が病に伏せ、妓生宿で腐敗した権力の風刺をしていた道化師のハソン(イ・ビョンホン/二役)が連れてこられる。重臣たちは光海君と瓜二つであるハソンを王の影武者として仕立て上げた。偽者ではないかと疑う家臣たち、急に人が変わったような王に戸惑う王妃。様々な思惑が潜む宮中で、ハソンは次第に傀儡ではなく自らの意志を持ち民について考える真の王として周囲を魅了していくが……。(作品資料より)

<感想>イ・ビョンホンのファンではないが、彼の映画を久しぶりに観た。宮廷歴史大作というから、コスチュームプレイの内容がない時代劇かなと高をくくっていたら、これが予想を覆してよくまとまっている。オーケストラの音楽にのせて王の身支度が始まり、格調高い高貴な気分に浸れる。出だしから上々の出来といっていいだろう。
まぁ、黒沢明監督の「影武者」を持ち出すまでもなく、王そっくりの影武者が本当の王をそでにしてがんばってしまうのだから、面白くないわけがない。

ビョンホンが演じるのは17世紀初頭に実在した朝鮮王朝の15代目の王・光海君と、その影武者に引っ張り出された王とうり二つの道化のハソン。暴君ゆえに毒殺の危機におびえる王の代わりに15日間だけ本物の王にすり替わる計画が実行に移されるが、さてその結末は?・・・。
この手の影武者のお話は最初のうちはうまくいくものの、やがて素性がばれてとんでもないことになるのが落ち。ここでも型通りの展開を見せるが、面白いのが本物の王になりすますビョンホンのコミカルな演技。あのイケメン俳優のこんな飄々とした演技は今まで見たことがなかった。それが危なげもなく淡々と演じて笑いを取るのだがら大したものだ。もっとも、ビョンホンの相手役のリュ・スンリリョンやチャン・グァンといったベテラン俳優の支えもあってのことだが。

しかし、何と言ってもこの映画が優れているのは、道化が王になって初めて見えてくるリーダーの真の役割を、チュ・チャンミン監督が的確に指摘している点にあると言っていいでしょう。
いきなり別人が王様になっているわけだから、なんで周りは気付かないの、って違和感を覚えてもおかしくないところなんだけれど、そういう感じにはならない。彼のために尽くす若い女官のサウォルも、名もない庶民たちの代表として見る者の共感を覚える。
ユニークだったのが、料理番をしている女官たちがいつもなら、王様の食べ残したお下がりを食べるのに、偽物王が食欲旺盛で食べ残しがなく全部たべてしまう。それを側近から聞き、残すようになる優しい偽物でもある。

王に仕える者たちが、偽物の王でも王座に座れば、それは、臣下たちの内面に植えこまれた服従を求める心のスイッチを入れさえすれば王は務まるという、描き方がなされていたからでしょう。臣下たちの「どうか殺してください」という台詞には、日本の切腹文化と似たものが朝鮮にもあったわけですね。
それに、王妃が偽物の正体に気付く場面も鮮やかで、本物の王には胸に矢の傷跡があることを、偽物にはそれがなかった。しかし、この偽物の王が、王妃の兄が反逆罪で囚われているのを助けたことで、王妃が偽物王を愛おしく思ってしまう。人間って不思議です。
本物の王も、ケシの毒で生死を彷徨い、元気になって公務をつとめることになり、自分のいない間に偽の王が政治をきちんとこなしていたことに感謝して、処刑することなく逃がしてやるという結末になっている。こういう設定の映画は、最後まで破綻のない風刺喜劇に仕上がっていて面白い。
2013年劇場鑑賞作品・・・32
