パピとママ映画のblog

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きみはいい子 ★★★.5

2015年07月25日 | アクション映画ーカ行
幼児虐待や学級崩壊といった問題を通して愛について描いた中脇初枝の小説を基に、『そこのみにて光輝く』などの呉美保監督が映画化したヒューマンドラマ。学級崩壊をさせてしまう新米教師、親からの虐待を受け自身も子供を虐待する母親、家族を失い一人で暮らす老人といった老若男女が、現実と葛藤しながらも生きていく姿を映す。出演は、『軽蔑』などの高良健吾や『そして父になる』などの尾野真千子をはじめ、池脇千鶴、高橋和也ら。奥深いストーリーと共に、実力ある俳優たちの演技合戦が楽しめる。
あらすじ:新米教師の岡野(高良健吾)は、ひたむきだが優柔不断で、問題があっても目を背け、子供たちから信用されていない。雅美(尾野真千子)は夫の単身赴任で3歳の娘と2人で生活し、娘に暴力を振るってしまうことがあった。一人暮らしの老人あきこ(喜多道枝)はスーパーで支払いを忘れ、認知症を心配するようになる。彼らは同じ町で暮らしており……。

<感想>児童虐待、学級崩壊、独居老人、といったシビアな題材を扱った中脇初枝の同名オムニバス小説を原作にした物語である。数々の難問を真摯に向き合っていく社会派ドラマになっている。
とりわけ目を惹くのは学級崩壊してしまった小学校4年生のクラスを、高良健吾扮する若い教師が立て直すために考案したユニークな宿題である。クラスは問題児ばかりで、先生の言うことなんか聞く耳をもたないのだ。給食費を滞納している不登校の子供は、自宅で父親から虐待されている疑いもあり、それにいじめっ子のグループが、お漏らしをした生徒を毛嫌いしてヤジルのを止めるのに必死の先生。そのお漏らし生徒の母親から電話があり、「家の子供は夜尿症なので、授業中にトイレに行かせてくれればお漏らしをしなかったのに」と、反対にお叱りを受ける始末。4年生にもなって、授業中にお漏らしとは、これは母親の躾けの問題だろうに。

もう、ヤルキをなくした新米教師は、実家住まいで出戻りの姉とその子供が、家の中を掻き回している。だが、その姉が弟の窮地を知りアドバイスをするのですね。それが「家族にぎゅっと抱きしめてもらうこと」を、宿題として出された子供だちが、照れながらもその結果を報告する様子がドキュメンタリータッチで描き出しているのが良かった。子供たちの素の顔の表情が実にいいのだ。誰かに愛されたという記憶が、日々の生活を支えていることを痛感させてくれる。
人は人によって傷つき、人によって救われる。

夫が単身赴任中で、団地で娘と二人で暮らしている尾野真千子扮する雅美は、他の母親たちの前ではお洒落で知的な母親を演じているが、帰宅すると日々のストレスからか、娘に対して態度が急変して、ちょっとしたことで八つ当たりするかのように、娘をぶったり、大声で怒鳴ったりして娘に虐待をするのだ。
これは、雅美が子供の頃に自分の母親から厳しい体罰(タバコを腕に焼き付けられる)を受けていたことがトラウマとなり、自分の娘にも同じ体罰を与える態度に、これは母親失格どころか神経を病んでいる女としか見えなかった。自分の感情をコントロールできない母親は、子供を育てるのには無理である。旦那の給料で生活していけるのだから、子供を連れて遊園地とか映画とか、楽しみがたくさんあるのに。小さい子供を持つ母親は、育児ノイローゼになる人が多いと言うのだが、私は、子供の頃は親や先生は怖い存在で絶対服従の時代だった。
それでも、結婚して子供生み、夜泣きをする子供を抱いて散歩したり、悪戯をして悪さをすると叱って一緒になって泣いたりしたものだ。子供は、幼いころから身近にいる存在で、一番母親が大好きで、どんなことをされようとも、悲しみを堪えながらも母親に抱きついて泣いて謝るのだ。誰かが優しく娘を庇ってくれても、やっぱり一番ママしか目の中に入らないのだ。

それが、公園で遊び仲間のママ友から、子供時代に自分が両親から虐待を受けて悲しかった、辛かったという言葉と、雅美をぎゅっと抱きしめてくれ、娘にはあなたしか頼る人がいないの、世界で一番母親が大好きだからと。どんなに子供がソソウや乱暴にしたり、物を壊したりしても、そのことを良く言い聞かして、やってはダメなことのルールとか躾けをすることが母親の役目ではないのだろうか。

現在の子供たちは、少子化の傾向で子供を1人しか作らない。だから甘やかして可愛がり、叱りつけるということをしない。教育と躾けは学校任せで、日本が抱えているアレヤコレヤの総ざらいだ。一応新米の教師に軸を置いているが、とにかく問題や課題を盛り込み過ぎて、どれもこれもまな板の上にのせているだけのように見えた。
自動虐待にしろ、貧困児童、これは民政の問題で教師にはどうにもならない。独居老人、これも、介護福祉の制度で、独居老人たちをデイサービスの送り迎えで毎日が楽しくなるはず。認知症になったら、それも介護福祉で面倒を見てもらうのがいい。私たちは、何のために高い介護保険を支払っているのだろう。今は、自分が産んだ子供に老後を見てもらう時代ではないのだ。シングルマザーにしろ、ここに登場する人たちのエピソードは、社会全体の問題で、2時間ほどの映画では答えなど見つかるはずもないのに。
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