パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ボヴァリー夫人とパン屋★★★★

2015年09月18日 | アクション映画ーハ行
フランス文学の古典「ボヴァリー夫人」をモチーフにした、絵本作家ポージー・シモンによるグラフィックノベルを『美しい絵の崩壊』,「ココ・アヴァン・シャネル」のアンヌ・フォンテーヌ監督が映画化。
フランス西部ノルマンディーの小さな村で稼業のパン屋を継ぎながら平凡な毎日を送るマルタン。彼の唯一の楽しみは文学。中でも「ボヴァリー夫人」は繰り返し読み続けている彼の愛読書だ。ある日、彼の向かいにイギリス人夫妻、ジェマとチャーリー・ボヴァリーが引っ越してきた。この偶然に驚いたマルタンは、小説のように奔放な現実のボヴァリー夫人=ジェマから目が離せなくなってしまう。夫の目を盗み、若い青年と情事を重ねるジェマの姿に、マルタンは小説と現実を重ねあわせて妄想をふくらませ、思わぬ行動に出るのだった。主演のマルタンに「屋根裏部屋のマリアたち」『危険なプロット』のファブリス・ルキーニ、ジェマ・ボヴァリーに「アンコール!!」『ランナーランナー』のジェマ・アータートン。

<感想>ノルマンディーのこんな小さな村に住んでみたいという風景と、その土地でパン屋をしている親父のファブリス・ルキーニが魅力的でコメディふうにできており面白かったです。
これはそうとうにエロいのだ。現代のボヴァリー夫人を演じるのが英国女性で、彼女が「ボヴァリー夫人」を読んでいないという企みは完璧でもあり、監督のアンヌ・フォンテーヌがト書きの要素を完璧に視覚化しているのだ。

主人公のファブリス・ルキーニが色気を失わず、初老の男の妄想的視点を体現しているのだが、パンをこねる手と愛撫する手の相似の描写が上手い。背中からお尻まで、体の線が衣裳の下から感じられる動作のジェマの演技も憎い演出。
田舎で繰り広げられる官能の風、ジェマが蜂に刺されたと言う場面で、パン屋の親父が刺されたジェマの艶めかしい背中を吸い上げるシーンに笑いが止まらなかった。それに、ルーアン大聖堂の内部が登場して効果的に使っているのがいい。

愛読書の「ボヴァリー夫人」ことジェマは、最期まで自我を確立できなかった女性として描かれているのが惜しまれる。ヒロインのジェマは、自覚があるにせよ、ないにせよ服装も髪形も言動も隙だらけで、本能的に男に甘えることを知っていて、夫や元カレ、年下の若いイケメンの不倫相手など、パン屋の主人とあらゆる男を頼りまくって生きている女である。

それはそれで賢い生き方とも言えるが、身の丈に合わない夢さえ見なければ平穏な人生を送れたのに。というか、この作品の中では、あの「ボヴァリー夫人」をラブコメにしてしまうとは驚きです。俳優はいずれも適役で笑わせるのですが、当然ヒロインのジェマ・アータートン以下で、誰にも感情移入はできないのだ。それでも、不倫相手のイケメン青年のニール・シュナイダーとの情事には、見ていて綺麗に撮っているのでさすがに女性監督だと思った。

最後のシーンなどは、夫と離婚してロンドンへ帰るという決意をするジェマに、パン屋がお別れの焼きたてのパンを届ける。それを玄関の前に置き立ち去るのだが、そこへ、元カレがやってきて復縁を迫る。
目の前にある焼きたてのパンをちぎっては食べるジェマなのだが、喉にパンが詰ってしまい苦しむのである。元カレが背中を叩いてもダメ、それではと後ろからお腹を持ちあげて苦しむジェマの腰のあたりに自分の身体を押し付ける。その光景は、さも後ろからセックスをしているようにも見え、そこへ夫が駆け付けて、元カレを殴る蹴るの乱暴。ですが、肝心のジェマは、喉にパンが詰って窒息死するという。悲しい結果になってしまう。

最後もいい、お隣に引っ越してきた女性が、今度はロシア人の女だという。それも「アンナ・カレニーナ」の小説にぴったりの女性だと仄めかすのである。即、行ってみると確かに若い美人の女性ではあったが、フランス人だというのだ。パン屋の息子が父親をからかう場面に、この息子も父親似の妄想家に違いない。あっけにとられてしまう笑いなのだけれども、パン屋の親父の妄想癖に、小説の「ボヴァリー夫人」に没頭してしまい、原典を思うとフランス人の意地悪さを感じてしまうジェマの最期が哀れであった。。
2015年劇場鑑賞作品・・・185映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング