パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

脳男 ★★★★.5

2013年02月18日 | アクション映画ーナ行
首藤瓜於の江戸川乱歩賞受賞作を「イキガミ」の瀧本智行監督が映画化。
主演の生田斗真が今までのナーブな美青年というイメージから一転、人間的な感情をもたない殺人者役を演じ、ダークな新境地を見せる。撮影はロバート・アルトマン作品などで知られる栗田豊通、脚本に「八日目の蝉」他で監督としても活躍する成島出が参加。
共演者として刑事茶屋に江口洋介、精神科医に松雪泰子、爆弾魔に二階堂ふみ、鈴木一郎の祖父に夏八木勲、老医師に石橋蓮司、精神科医の助手に甲本雅裕など、ベテラン陣が集結。
あらすじ:生田扮する脳男の出自、彼から感情を引き出したい精神科医の葛藤と、サイコな爆弾魔との戦い、複数の要素は絡み合いながら、思いがけぬラストになだれ込む。
東京近郊で無差別爆破事件が続発。刑事の茶屋は犯人のアジトらしき工場に踏み込むが、一味は入り口を爆破して逃走。確保できたのは現場に立っていた男だけだった。男は鈴木一郎という名前以外の身元は不明で、精神鑑定を受けることになる。(作品資料より)
<感想>感情を持たない“殺人ロボット”同然のダークヒーローが活躍するサスペンスドラマ。生田斗真扮する脳男は、人間らしい感情をもたずに育ち、犯罪者を自らの手で処刑することに全く躊躇しない。快楽のために無差別殺人を重ねる凶悪テロリストに立ち向かう脳男。

原作小説を読んでいるので、映画版では爆弾魔の緑川が男から女に変更。二階堂ふみが末期ガンで苦しみ、同性愛者で快楽殺人鬼の、レズっけ満々でレズビアンシーンを見せる辺りは、この女優の悪役に徹する豹変する眉毛のない顔が恐ろしく感じた。
二階堂と「ヒミズ」で共演した染谷将太が幼児愛変質者として出演。松雪精神科医の弟が、この男に虐待され辱められ殺された犯人なのに、精神鑑定の結果情緒不安というか、そういった精神の病という病気と判定。この男は憎き弟を殺した殺人鬼なのに無罪で、精神病院で染谷が更生したということで退院。これが後半で脳男の手で、染谷の幼児監禁虐待が続投していることが明らかにされる。
とにかく鈴木を演じる生田の殺人マシンのように強い彼が、茶屋や部下の警官たちと戦ってもトドメを刺さないことに疑問を持つのだが、やがて鈴木の過去を知る登山家からかつての鈴木にロッククライングで命を助けられたと聞き、彼が単なる殺人鬼ではないと確信。
爆弾を自作し、テロを繰り返す歪んだ知能犯の緑川。捕まる直前に鈴木と接触をしていた彼女は、虚無的な彼に一方的なシンパシーを抱き、鈴木奪還をするため護送車を襲う。混乱に乗じて鈴木は逃亡、緑川は彼を誘き出すため新たな事件を仕掛ける。茶屋の部下が怪我をして入院、その部下が緑川の標的となり時限爆弾を体に巻きつけられ、その爆弾処理が出来ずに壮絶な自爆死となる。このシーンは、原作では真梨子と親しくなった少女で、爆弾魔の標的になって脳男の鈴木が爆弾を解除して助けることになっている。
緑川のバス爆破から間一髪で逃れる精神科医真梨子、彼女には心の病を抱えた母親が、過食症で自宅にいるという設定も原作にはない。鈴木を鑑定した真梨子は、彼の機械的な受け答えに違和感をもち、その後、老医師の藍沢から鈴木が本当の名前の入陶大威(いりすたけきみ)であり、世の悪を憎む祖父に殺人者に育てられたと知らされる。これも原作と少し違う点があるが、映画版では細かく描写するには時間がなかったのでしょう。
大きな見せ場となるのが、後半部分の地下駐車場でのアクション。ここでの満身創痍になりながらも敵に向かっていく彼の動きは、俳優生田斗真のすごみを感じさせます。何度も車に跳ねられ、立ち上がりまた車に跳ねられ、酷い衝撃を受けて足の骨が折れ、それでも立ち上がりすぐ転ぶという動き、足を引きずりながらの後姿が壮絶。
生田くんの、悪とみなせば無表情のまま即座に相手を倒す格闘術はすさまじいです。クランクインまでの半年間、フィリピノカリやジークンドーを訓練。さらに徹底した筋トレと食事制限で肉体を絞り込んだそうです。
爆破シーンはCGではなく、実際に火薬を使った大々的なロケ撮影によるもので、邦画の枠を超えたアクション巨編に仕上がっているのも見どころ。ラストの精神病院での爆破の威力が本物であること必至。
脳男も爆弾魔も、家庭の温かさを知らずに育った似た者同士という、境遇が切ないですね。
2013年劇場鑑賞作品・・・29  映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ