パピとママ映画のblog

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ルイ14世の死★★・5

2018年08月23日 | アクション映画ーラ行

名優ジャン=ピエール・レオが最晩年のルイ14世を演じる歴史ドラマ。“太陽王”と呼ばれたルイ14世が、死の床でただ最期の時を待つ陰鬱な数週間を、サン=シモン公の『回想録』や廷臣ダンジョーが記した『覚え書,別名ルイ14世宮廷日誌』を基に、詳細かつ淡々と再現していく異色作。監督は舞台の演出やインスタレーションなどのアート分野でも活躍するスペインの異才アルベルト・セラ。

あらすじ:1715年8月、77歳を目前にしたルイ14世は、壊疽による左脚の痛み抱え、体調はみるみる悪化し、ほぼ寝たきりの状態となっていた。侍医のファゴンには的確な診断も、有効な治療を施すこともできずにいた。やがてパリ大学の4人の医者が診察に訪れるのだったが…。

<感想>フランス王ルイ14世と言えば、「太陽王」といわれ豪華絢爛の絶頂を極めた王様。薄暗いローソクの灯かり、豪華なベッドに横たわり、左足の壊疽からじわじわと死に至る最期の日々を記録した作品である。

画面が暗いし、この時代では、医学が進歩していなく、ただひたすらに王の死を待っているだけなのか。腐っていく左足首から、だんだんと上へ、心臓まで壊疽が進み死に至るってどれだけ惨い死に方なのか、モルヒネのような痛み止めに、この当時だったらアヘンとか何かなかったのだろうか。

観ていて、医者たちが頭を抱えているが、壊疽なら切断するしかないであろうに、それを何を待っているのか、医者たちは陛下に「壊疽ではありませぬ」などと嘘を言って治療を遅らせているのだ。たしかに太陽王のイメージを見事に裏切っている。

羽の付いた大きな帽子をとって笑顔で客に挨拶して、ビスケットを齧ってみせては、医者たちを安心させ、昏睡状態でも家臣に偽医者の処分を打診されれば直ぐに指示を出すなど。

どう見ても、真っ黒になっている足をみて腐っているとしか見えないのに。軟膏のようなのを指で塗りたくっているが、それでは痛みも肝心の壊疽も良くならない。切るしかないのに。

だから、陛下がベッドの上で、頭がボケていないので、側近がいろんな仕事の内容をいい、それについて意見を言うほど元気なのだ。車いすに座り、庭を散歩したり、王宮を車いすで進む姿には、医者たちのズサンな見立てと治療が歯がゆくてならない。

死の間際に至るまで重々しく王を演じねばならぬ様子は、滑稽ですらあります。王を演じている圧倒的なジャン=ピエール・レオの存在感と映像美が、「朕は国家なり」の言葉が物語る絶対王政末期の危ういさを、白日の下に晒しているようでした。

金色のトウシューズで華麗にリュリのバレエを舞ったのは、確か「王は踊る」(00)の映画だったと思う。演じたのは、20代のブノワ・マジメルだが、いま死の床に臥せる陛下を演じているのは、なんと名優ジャン=ピエール・レオ。

ベッドの周りには臣下や貴婦人集団と、怪しげな特効薬を振舞うヤブ医者軍団たち。今際のきわにあってなお王権示威のサービスを強いられるのは、王の方ではないかと。誰もが気づかぬふりをして、茶番劇を共有して、新鋭セラ監督が、半径3メートルのスケールでねちっこく持続させているのも何だか不自然。

 

誰一人として王を人間として扱わぬ、その皮肉さの辛さが舌を刺す。王の孤独、結局は、その生涯を通して誰からも愛されなかった、その寂しさが見え隠れしてゾッとする。だから、次第には退屈も覚えて来る。

ただし、ラストに王が亡くなった後、そのベッドの上でお腹を切り開き解剖するシーンも、大腸、小腸、脾臓と取り出して、心臓まで壊疽が進んだことを見届けるのだ。そして、医者たちや家臣たち取り巻き連中の、責任逃れの言葉が発せられる。「やっぱり壊疽だったのだ」と頷く医者たちの言葉に、バカバカしくもあり、痛烈な皮肉を込めた作品であった。

 

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