「ヒトラー ~最期の12日間~」のオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督が、1939年11月8日にミュンヘンで起きたヒトラー暗殺未遂事件の知られざる真実の物語に迫るドラマ。主演は「白いリボン」のクリスティアン・フリーデル、共演にカタリーナ・シュットラー、ブルクハルト・クラウスナー。
あらすじ:1939年11月8日、ドイツ。ミュンヘンのビアホールでは、ヒトラーによる毎年恒例のミュンヘン一揆記念演説が行われていた。やがて悪天候のため、ヒトラーは予定より早く演説を切り上げ退席する。その13分後、会場に仕掛けられた時限爆弾が爆発し、8人の犠牲者を出す。実行犯として逮捕されたのは、ゲオルク・エルザーという36歳の平凡な家具職人だった。ヒトラーは、エルザーの背後に何らかの大がかりな組織があると確信し、秘密警察ゲシュタに徹底した捜査を指示する。ところが、どんなに過酷な取り調べにも、単独犯との主張を曲げないエルザーだったが…。
<感想>この作品は、知られざるヒトラー暗殺未遂事件を取りあげつつも、1930年代のドイツの時代感をリアルに描写していると思われる。邦題が回りくどい題名になっているが、要はヒトラーを暗殺するために仕掛けた時限爆弾が、ヒトラーが演説を切り上げて立ち去った後の13分後に、爆発したために暗殺は未遂に終わってしまったという歴史上の事件を物語っているのだ。
これは、ナチスに対する白バラ通信などの反体制運動は映画にもなったが、1939年11月8日に、ドイツ・ミュンヘンで起きたこの暗殺未遂事件は、ドイツ国内でもほとんど知られていないというのだ。その意味でこれは知られざる歴史の一コマとしても十分に観る価値に値する映画と言えるのではないか。
自分もまったく知らずに観たので、先の「ヒトラー ~最期の12日間~」はDVDで見たのですが、それよりも数段に面白い作品であり、もしも、これが実現していたら、「もし13分の誤算がなかったら」と、きっと 時代は変わっていただろうか…。42回もの暗殺計画があったにも関わらず、暗殺されなかった独裁者ヒトラーの行動が世界に齎したあの悲劇もなかったであろう。
一介の家具職人のゲオルク・エルザーが、ヒトラーの演説する会場にあらかじめ一人で爆弾を仕掛ける冒頭から始まって、彼が逮捕され拷問を受け、さらには戦後まで生き延びるという歴史的事実が淡々と語られるのです。
セリフは全編ドイツ語で統一されているのもいいですね。ドイツ映画だから当然と言えばそうなんですが、これがハリウッド映画だと英語でまくしたてられるから白けてしまう。
さらには、この映画が優れているのは、爆弾を仕掛けた家具職人エルザーが過ごした当時のドイツの地方の村の様子が実に生き生きと描かれていることです。音楽に秀でて友人との交流も絶やさないごく普通の青年の日常を描いていてこれほど真に迫ってくる映画は初めてではないだろうか。
組織に属さない孤高の暗殺者が何故に生まれたのか、何故単独で行動に移せたのかが描かれている。拷問を伴う厳しい取り調べで、浮かび上がるエルザーの過去とは、平穏な村での暮らし、人妻と関係をしてしまうような怠満で政治とも無縁な日々を過ごしてきたのに。
表面的にはヒトラー暗殺未遂事件を取りあげながら、同時にファシズムが台頭してきた1930年代のドイツの村の時代相や空気感をリアルに映し出しているのも印象的でした。
2015年劇場鑑賞作品・・・260映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング