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DESTINY 鎌倉ものがたり★★★・8

2017年12月12日 | アクション映画ータ行

「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督が、同作の原作者・西岸良平のベストセラーコミック「鎌倉ものがたり」を実写映画化し、堺雅人と高畑充希が年の差夫婦役で初共演したファンタジードラマ。主演の堺、高畑と同じく山崎監督作初参加の安藤サクラ、中村玉緒をはじめ、山崎組常連の堤真一、三浦友和、薬師丸ひろ子ら豪華キャストが集結した。

あらすじ:幽霊や魔物、妖怪といった「人ならざるもの」が日常的に姿を現す古都・鎌倉。この地に居を構えるミステリー作家・一色正和のもとに嫁いできた亜紀子は、妖怪や幽霊が人と仲良く暮らす鎌倉の街に最初は驚くが、次第に溶け込んでいく。正和は本業の執筆に加え、魔物や幽霊が関わる難事件の捜査で警察に協力することもあり、日々はにぎやかに過ぎていった。しかし、そんなある日、亜紀子が不測の事態に巻き込まれ、黄泉の国へと旅立ってしまう。正和は亜紀子を取り戻すため、黄泉の国へ行くことを決意するが……。

<感想>道を歩けば、魔物や幽霊、妖怪や仏様、死神までもが現れるのだ。人と人ならざるものたちが仲良く暮らす街、鎌倉。そこはまた、死者たちが向かう黄泉の国への入り口でもあった。西岸良平のベストセラー漫画「鎌倉ものがたり」を原作に、「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなど特撮・VFXの第一人者である山崎貴監督とそのチームが取り組んだ待望の新作。

ささやかな夫婦の愛の物語であり、壮大な黄泉の国へのアドベンチャーでもあります。物語は、死者との関係性が凄くユニークであり、この鎌倉では幽霊とも仲良く暮らしていて、死が決してタブーではない。

主人公の家の庭に現れる田中泯さんの貧乏神もそうだし、中村玉緒さんのお手伝いさん。庭にいるカッパやカエルに、また、いろんな話の中で大きく扱われているのが、ヒロインの亜紀子さんが魔物に見初められて連れ去らわれて、それを主人公の正和さんが助けにいくエピソードだったのですね。

それに映画の世界観がユニークであり、ファンタジー・ワールドの世界観、夫婦が暮らす鎌倉も実際の鎌倉とは少し違った世界になっている。時代設定は一応現代ですが、どこか昭和の味がするノスタルジックが漂っている。それに黄泉の国に至っては、温泉郷のような場所のような魂の保養所みたいな場所。だから行ったことのないはずなのに、何処か懐かしさを感じさせるところ。

奇岩建ち並ぶ武陵源や昔の民家が密集していて川岸に建っている。まさに異世界である黄泉の国が鳳凰古城ような感じでもある。それは、江ノ電に揺られながら黄泉の国へ辿り着くシーンは、まるでスタジオジブリのアニメ映画「千と千尋の神隠し」を彷彿とさせる、情感溢れる街並みとなっており、死後の世界は思いのほか楽しい場所のように描かれてましたね。

黄泉の国に連れて行く死神の安藤サクラさん、クライマックスの黄泉の国に出て来る天頭鬼、亀頭鬼、豚頭鬼のたぐいになると、これに心情的な親しみとか、懐かしさを感じることは、日本人には難しいに違いない。

面白いのがこの黄泉の国の一連の幻想であります。人口過剰で困っている昨今、黄泉の国でも人口問題が大変で、中国風の山岳地帯も今や住居でいっぱいになっている。その山々の間にも山間の吊り橋のように江ノ電の線路だけが、頼りなさそうに一両の電車が懸命に走っていくのだから。嫌いじゃないですよ、この感じは。

事故で命を落とした人間が現世に蘇ってくる映画に、「岸辺の旅」(15)の浅野忠信さん、生きた人間の肉体を持ってしまった幽霊である。彼らは人間と同じ姿をしていることによって、逆に強烈な違和感をスクリーンに刻み付けていると思う。

ですが、「DESTINY鎌倉ものがたり」では、生きている者も死んでいる者も、変わりなく共存しているように見える。黄泉の国でもみんな生前の姿かたちを保っているし、逆にこの世に異形の者がいても違和感なく溶け込んでいるのだ。

フィクションの執筆を生業として、鉄道模型の収集に没頭する主人公の一色正和は、現世に生きていても何処か浮世離れしているので、だからこそ、この世とあの世の境目をするっと超えてしまえたのだろう。

だが、死神の安藤サクラさんの存在感たるや、ずば抜けていたと思う。あの非現実的なコスチューム・プレイを、有無を言わさぬ説得力で成立させてしまうのには,舌を巻くばかり。彼女こそが、夫婦の小さなラブストーリーを、壮大なるファンタジーへと飛躍させるキーパーソンなのだろう。

彼特有の奇特な感じを、堺雅人が子供のような独特のテンションで演じきるのも巧いし、対する高畑充希がまとっているのは、圧倒的な現実感。この世だろうが、あの世だろうが、彼女は地に足が着いたしっかり者で、明るく優しく夫を支え家を守る女でもある。

だから、本作において肉体を持ってしまった幽霊とは、彼らが体現する失われた良き時代への幻想かもしれない。

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