パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

ヘルタースケルター★★★

2012年08月02日 | は行の映画
第8回手塚治虫文化賞マンガ大賞に輝いた岡崎京子の伝説的熱狂コミック『ヘルタースケルター』(雑誌『FEEL YOUNG』で連載)を、「さくらん」の蜷川実花が約7年の歳月を重ね、待望の映画化。全身整形によるトップモデルへと上り詰めた女性・りりこを演じるのは「パッチギ!」の若手実力派女優沢尻エリカ。日本を代表する映画女優・寺島しのぶや、綾野剛、水原希子、窪塚洋介、桃井かおりなど脇を固める豪華な俳優人と共に、欲望で溢れた芸能界の世界をゴージャス、そしてスキャンダラスに描いていく。

あらすじ:トップモデルとして芸能界の頂点に君臨し、人々を魅了するりりこには、その美貌は全身整形によってもたらされたものという、究極の秘密があった。誰にも言えないその秘密を抱えながら、底なしの欲望渦巻く世界を疾走するりりこと、彼女が巻き起こす世間をひっくり返すような事件の真相とは……。(作品資料より)

<感想>映画が始まるやいなや、いきなりエリカと哀川翔との過激な濡れ場シーン、彼女にしては大サービスだ。最初の30分がこの映画の頂点でしよう。エリカが脱いでやりまくり、やったーと喜んでいるのもつかの間、この映画はそこから中々先に進まないのだ。
全身を美容整形したという秘密と、その代償を背負いスターにのし上がったりりこが、心身ともにボロボロになりながらも逞しく生き抜く姿を鮮烈に描き出している。
95~96年に連載されたコミックは未見ですが、本作が問いかけるのは、消費されるスターと消費する大衆の関係性や、美容整形、欲望と幸福、“美”とは何かという15年以上たった今でも切実なテーマなのですね。

その強烈なメッセージがビジュアルにこだわり抜いた蜷川ワールドと融合し、アナーキーなエンターテイメントに仕上がっている。実花さんの得意分野である写真アート、どぎつい原色使いの真っ赤な“巨大な唇”が目に焼きつく。本人も写真家として登場。
さらには主人公りりこの人気ぶりを短いカットで繋ぐ映像と音楽の大音量。真っ赤なドレスを着てステージに立つシーンは圧巻でした。観客のボルテージも上がったところで、ヒロインのりりこは、一体どこに向かおうとしているのか?・・・空っぽなしっちゃかめっちゃかな人間だから仕方ないの?・・・だからか中盤からは、物語がだんだんと停滞してゆくのが残念。

でも、沢尻エリカをスキャンダラスに魅せるという意味においては、見事に観客の期待を裏切らないイベント足り得ています。それに桃井かおりに原田美枝子と、70年代のツッパリ女優たちのサポートにもニンマリですね。桃井さんが演じた多田は、大金を投じて田舎での“りりこ”を作り上げた仕掛け人。妹が訪ねてきてりりこを困らせるのだが、最後に美容整形した妹が出てきた時には、想像していたのでがっかりでした。

それに美容整形の後遺症と痛み止めの常用で不安定になっていく「りりこ」は、金持ちの恋人の窪塚が、令嬢と婚約したことを知り動揺。マネージャーの羽田に命じてその令嬢に硫酸をかけさせ襲う。それに苛立つりりこに、自分の若い恋人を寝取られたり、自分も「りりこ」は私がいないと何もできないダメ人間だと自負して、母性本能を掻きたて「りりこ」にのめり込む。
可愛そうなのが羽田を演じた寺島しのぶでしょうか、彼女の演技力があまり発揮できていないようで、このキャスティングは他の女優さんでもよかったのでは、彼女のファンだけにしのぶさん勿体なかった。

「りりこ」の葛藤にもっと深く分け入ってくれたら、見終わった後のカタルシスもあったのに。「りりこ」が、美容整形の後遺症が出始め、若いタレントに自分の立場を奪われ、感情の起伏が激しく、最後の方では精神的なバランスを崩してしまい、自暴自棄になり自分の目をナイフで突き刺すシーン。こだわり抜かれた美術の赤い羽根が無数に空を舞う美しいシーン。これで終わればよかったのに、最後の香港だか上海だかの「りりこ」のその後の映像はいらないと思った。
2012年劇場鑑賞作品・・・75映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング



1 コメント

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自分のブログから抜粋しました (クールハンドルーク0077)
2012-08-16 14:42:46
アユの曲が高鳴るシーン(だったような?)で遠くの巨大オーロラビジョンに 「いままで応援してくれた皆さんにプレゼント!」と映ってる件 (この後、タイガーリリーの体感時間、2時間の冒険に付き合ったわれわれに
進化したりりこからの笑顔のプレゼント! とつながる件

ラ スト近くの渋谷駅あたりで、鈴木杏の立つ場所にポールみたいのがあって、そこに数字が「123456789」みたいに書き込まれてあったが、あれは偶然? もし演出なら、あの数字は渋谷も含め東京を含む。日本を含んだ、over the world とにかく点在(遍在?)するミニタイガーリリーをカウントする様だと思う 。

ラストのクライマックス、スクリーンイッパイに映る、りりこのアルカイックスマイル(しかも発信場所もNOWそのもの) は、キューブリックの傑作、フルメタルジャケット(1987年制作だから90年直前だ)で見たほほえみデブの凄絶な微笑が叩きつけた、激動の90年代の予 感に対する、混沌の21世紀版のドヤ顔アンサーだと思う。打ちのめされると同時に、なぜか励まされた気がした。
元気がもらいたくなると、自分はまたこの映画を観るだろう。
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