パピとママ映画のblog

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デッド・ドント・ダイ★★★

2020年07月07日 | アクション映画ータ行

          

鬼才ジム・ジャームッシュがビル・マーレイとアダム・ドライバーを主演にメガホンをとったゾンビコメディ。ジャームッシュ作品常連のマーレイ、「パターソン」に続きジャームッシュ組参加となるドライバーのほか、ティルダ・スウィントン、クロエ・セビニー、スティーブ・ブシェーミ、トム・ウェイツ、セレーナ・ゴメス、ダニー・クローバー、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、イギー・ポップらが顔をそろえる。2019年・第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。

     

あらすじ:アメリカの田舎町センターヴィルにある警察署に勤務するロバートソン署長とピーターソン巡査、モリソン巡査は、他愛のない住人のトラブルの対応に日々追われていた。しかし、ダイナーで起こった変死事件から事態は一変。墓場から死者が次々とよみがえり、ゾンビが町にあふれかえってしまう。3人は日本刀を片手に救世主のごとく現れた葬儀屋のゼルダとともにゾンビたちと対峙していくが……。

<感想>「パターソン」などで知られるアメリカ・インディーズ映画界の鬼才ジム・ジャームッシュ監督が、ゾンビ映画に初挑戦。というからには絶対に観にいかなくちゃ、といっても警察官が3人しかいないアメリカの田舎町で起きたゾンビ・パニックを、現代社会への風刺を交えながら監督独特のオフビートなスタイルで描いていた。

余りにもイメージが違うから、恐怖映画じゃなくて、一風変わったホラーコメディなので、呆気に取られた感じでした。でも最近ではヴァンパイアが主人公の「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ」(13)なんか撮ってたから、そんなに驚くことはない。

警察署長クリフ(ビル・マーレイ)と巡査のロニー(アダム・ドライバー)は、住民のトラブル処理に追われていた。だが、翌朝、ダイナーの経営者と従業員が殺されているとの一報が入り、捜査を始めたクリフとロニーは、墓地で謎めいた穴を発見。ロニーはゾンビの仕業だと言い出してクリフを驚かせるが、その不吉な予言はやがて現実のものとなる。

中でもインパクト大なのが、葬儀屋のティルダ・スウィントン扮する,日本刀を振り回す女性の役名も”ゼルダ・ウィンストン”だしね。遺体の死に化粧の派手なメイクには笑ってしまう。でも、オフビートというのか、これって笑っていいのという微妙なユーモアを散りばめているのは、いつものジム・ジャームッシュ節だけど。

今回はけっこうゾンビ映画としてちゃんと怖がらせようとしているようだ。ちょっとエグイのが人間の内臓に食らいつくところとか、ロニー警官が、「ゾンビの頭を切らなきゃ死なないよ」といった定番は、しっかりと押さえていた。

確かジョージ・A・ロメロ監督のゾンビ映画の古典「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」に影響を受けたそうです。だからオマージュでもあるわけ。ちなみにセレーナが出演しているのは、ジャームッシュ監督が彼女の曲のファンだからなんだって。ゾーイ役で、男ともだちとドライブ中の都会の少女役で、モーテルに宿泊してゾンビに襲われる。

特にラスト近くで、ティルダ・スウィントンがトンデモ展開にしていくのには本当に目が点になってしまった。何で、何なんだこれは?・・・。この肩透かし感が、ジャームッシュらしいと言えばそうなんだけど。

だからってわけじゃないが鬼才ジム・ジャームッシュ監督は、ゾンビに現代の世相を反映させて、コーヒー・ゾンビやWiFiゾンビ、ギターゾンビなど、生前の物欲に従う”生きる屍”を登場させている。「コーヒー」と喚く最初のゾンビはイギー・ホップである。

物語でゾンビ発生の原因は、アメリカがオイルを掘削するために北極圏の粉砕を始めていて、そえが原因で地球の地軸がずれたことらしいと推測できる。自然破壊や、物質依存への警鐘が鳴らされているということだね。

森の番人のトム・ウェイツ扮する世捨て人のハーミット・ボブだけが、ゾンビに襲われないのは、彼が文明を拒否しているからかもしれない。

スティーヴン・ブシュミ扮する人種差別主義者の農夫が被っている帽子に、「MAKE AMERICA WHITE AGAIN」なんて書いてあるのは、ドナルド・トランプ政権への批判なのかもしれませんね。トランプ大統領は経済優先で、環境問題を無視しているからかもしれないなぁ。

最初に墓場から出てくるゾンビが、ジャームッシュのパートナーであるサラ・ドライバーと、歌手のイギー・ポップというのだから笑ってしまった。テーマソングを歌うグラミー賞歌手のスタージル・ソンプソンまでも、ギターを引きずるゾンビ役なのだ。それにしても結論が、投げっぱなしで観客に解釈まで全て委ねていたのには驚きました。

風変りなホラーコメディに見えるけれど、「このままでは世界は滅んでしまうぞ」という想いが込められていると思う。

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