ぶらぶら人生

心の呟き

二つの届

2013-12-12 | 身辺雑記
 ずいぶん間抜けた話である。

 今日、街へ出かけるついでに、銀行にも行き、今月分の生活費を下してこようと考えた。
 そして、通帳探しが始まったのだった。

 今日に限らず、もの探しは日常的で、認知症の入り口に立っているのではあるまいかと、不安を感じるほどだ。

 ただ、貯金通帳ということになると、またかと、のんびり構えるわけにはゆかない。
 慌てて、銀行に電話した。
 
 「すぐ手を打ちましょうね」
 と、私の心理状態とは異なる、落着いた返事が返った。
 その声の主は、私のよく知る人であった。

 さらに、
 「紛失届を提出していただきますので、印鑑を持参して…」
 とのことであった。

 
 厄介なことになったと思いながら、バッグの中を繰り返し探した。
 毎月、生活費を下さねばならないのだからと、ここ数か月はバッグに入れていたのだが…。
 いくら探しても、やはりバッグの中にはない。
 そのあと、まさか、本来の通帳置き場所に戻したのではあるまいな、と思いつつ、引き出しを開けた。

 驚いたことに、そこに、通帳があったのだ。
 これにはびっくり。
 11月分の生活費を下した後、私は全く無意識に、以前の定位置に戻したらしい。

 呆れてしまった。
 取り急ぎ、通帳が出てきたことを銀行に伝えた。
 「よかったですね」
 と、喜んでもらえた。

 それで万事終わるのかと思ったら、いずれにしても印鑑を持参のうえ、銀行に立ち寄ってくれとのこと。
 がっかりしたが、私のそそっかしさが生んだ失敗だから、仕方ない。

 街に出ると、まっ先に銀行へ行った。
 すると、<紛失届>だけでなく、<発見届>なるものも書かされた。

 呆れながら、呵々大笑!
 老いの日々は、ただ笑い飛ばすしかない、愚かしいことに満ちている。

 帰りのタクシーで、運転手と雑談しているうちに、老境が話題となった。
 私は、失敗の処理をしてきたばかりなので、老いの愚かしさを話した。
 すると、運転手は、私の主張を否定し、老いには、素晴らしい面もある、と力説された。
 何が素晴らしいのか尋ねると、
 「知恵です」
 と、答えられた。

 そうだろうか?
 私自身をふり返ると、どう甘く自己評価しても、知恵が深まったとは言えない。

 ただ、年を重ねなくては見えれない風景のあることだけは確かである。
 それを楽しみながら、老いの日々を重ねるしかない。
 思いもかけぬ自分に、日ごと出会いながら。
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