数日前から、曼珠沙華の茎がぐんと伸び、頂端に赤い蕾が見え始めた。
昼過ぎ、庭に出てみると、大小二つの花が開いていた。
いつのまにか、トクサが地所を拡大し、曼珠沙華の地を奪わんばかりである。
花はそれぞれ特色をもつが、多くの人々の目に触れる花のなかで、曼珠沙華ほど個性的な花は少ないように思う。
有毒植物で、その形状の不思議からか、呼称も様々である。(「鱗茎は石蒜といい薬用・糊料とする」とも辞書には記されている。)
「彼岸花」が、本来の呼び名らしい。が、私は、<曼珠沙華>という呼称が好きで、そう呼んでいる。(考えてみると、「彼岸花」つまり、<「彼岸」の花>と名づけられた段階で、不吉感と結びついたのであろう。「此岸花」ではないのだから。)
[広辞苑]で、「彼岸花」を調べてみると、以下の呼び名が出ていた。
<カミソリバナ><シビトバナ><トウロウバナ><捨子花><天蓋花><曼珠沙華>
さらに、インターネットで調べてみると、地方によって、呼び名が様々あるようで、上記のほかに、<葬式花><墓花><地獄花><火事花>などなど、なんとなく不吉を感じさせる名前が紹介されている。
昔は、特に忌み嫌われる花だったのだろうか? と、思わせるような呼称ばかりである。
私の父(明治31年生まれ)も、なんとなく嫌っている様子だった。
それが察せられたので、裏庭に紅白の曼珠沙華を植えてもらったのは、父の死後、数年を経てからであった。