部屋を掃除していただく間、川沿いの道を散歩した。
2月の中旬にしては、ずいぶん温かく、心地よい日であった。
しかし、遠景は、少し霞んでいた。
遠山の雪は、むしろ私の部屋からの方が、まだしもよく見えるくらいであった。
もう一つ、外歩きには不都合なことがあった。
直前まで、読書に夢中になっていた。
太宰治の「彼は昔の彼ならず」が、面白かったのだ。
戸外に出た途端、しばらくは風景に薄い幕が張られたかのようであった。
視力が、急に落ちたのかと訝るほど。
気を付けなくてはいけない。
若い時のように、物事は運ばないことを。
太陽下の川や山が、普通に見えるまでには、かなりの時間を要した。
青野山の見える風景
川鵜のいる眺め
その向こうに見える橋の下まで歩いてみる。
橋まで歩くのは難しいだろうと思っていた。
が、簡単に歩けた。
歩数を確かめると、家から草花舎までより近いことが分かった。
河原に下りる石段が二か所あり、
下りてみたいと思ったが、諦めた。
歩きやすそうな、しっかりした階段なのだが、
掴まるもの(手すり)がないことに、不安を感じて。
(この日は特に、頭が疲れていた。
すべて、老いのせいであろう。)
帰途の眺め
河口の広がり。
やがて、川土手に、緑の蘇る日が訪れるだろう。