一か月ぶりに、海辺に向かって歩いた。
出かけたときは薄曇りだったのだが、歩き始めた途端に、雲が払われた。
秋陽の心地よく降り注ぐ中を歩く。
数年前、散歩を日課としていたコースを歩き、土田海岸に出た。
磯には海風が吹き、波打際に白波が立っていた。
海辺の駐車場に、大型のバスが止まった。
降りてきたのは、保育園のかわいい園児たちだった。
三グループになっている。先頭から5歳児、4歳児、3歳児だろうと想像した。
バスの側に近づいたとき、最後のグループが降りてきた。
一番幼い園児たちである。
集団がまとまると、先生の笛に合わせて歩き始めた。
手を取り合い、二列縦隊となって。
一人が、「こんにちは」と、私に挨拶した。
すると、他の園児たちも、「こんにちは」「こんにちは」……と、はしゃぎ始めた。
「遠足?」と、尋ねる。
近くの子たちが頷いた。
「お弁当、食べるの」
と、一人が言えば、
「海で、泳ぐの」
などと言う。思いつくままにおしゃべりしている。
たちまち、集団の列が乱れた。
先頭と後尾の先生が、困惑顔であった。
私は、急いで園児の群れを離れた。
波打際を東端まで歩く予定だったが、来た道へ引き返すことにした。私がうろうろすれば、園児たちは気が散りがちとなり、先生は統率しにくいだろうと判断して。
5歳児の一団は、すでに遥か前方の海辺を歩いていた。
浜辺では、トベラの実を眺めるに留めた。
実が熟してはじけるまでには、まだ日数が必要な様子であった。
海辺を背にして坂を上る。
<トランペットの丘>を、前方に見て驚いた。
一月前に見たときより、花の数が増えている。もうとっくに盛りの時期が過ぎたと思っていたのだが、今が最盛期らしい。
花の遥かには、日本海が広がっている。