ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

秋から始まった物語 その16

2017-11-12 15:13:56 | 日記
「秋から始まった」 と言うより 「夏の終わりの夕刻から冬まで」 といったイメージか。

こいつを知る前の僕にとっては、かつて CM に使用された〝バス通り〟、そして〝裏切りの街角〟や〝HERO〟でヒットを飛ばした歌謡曲バンド、といった程度の印象。

ところが大学時代、1980年にリリースされたこのアルバムを1年下の後輩が持参したことで一変。 開演前の興奮、ざわめきから始まる2枚組 LP (古い!) は、彼らがロックバンドであることを主張していた。


生まれ育った海岸沿いの田舎町を連想させる〝港からやって来た女〟は〝くだけたネオンサイン〟に次いで好きな曲。  後にこの曲でゲスト出演した 中島みゆき は、そのニュアンスを〝慟哭〟で自分のものとした。

他にも素晴らしい曲、演奏が揃い、録音状態も優れた名盤だけど、ここでは当時の話だけ。


〝PHILIPS AD7063/M8〟で聴くそれは、サブコーンの癖と重なることで独特のハスキーさを伴い、ライブ感も抜群。 1年下の後輩も、その音に聞き惚れていた。

1年下、と言っても学年のこと。 実は同年齢か年上だったかも知れない。 訊けば、自宅のステレオでは良い音が出ないと言う。  この悩みを解消すべく後日、その後輩のアパートを訪ねると、そこには立派なシステムコンポが鎮座。

一応、聞いてみると全域に亘り、ナローで籠っていて色彩感に欠ける。 まるでカーテン越しにステージを眺めているようだった。

すぐさまスピーカーをうつ伏せにし、持参した工具で裏板を開けると思った通り、見るからにチープなケーブルが露出。 しかも、スピーカーユニット側は鉄の端子だ。

さっそく端子を抜き外し、ネットワーク側には持参したケーブルを半田付けで交換。 更に、スピーカーユニット側はツィーター、スコーカー、ウーファーとも端子を介さず、ボイスコイルから引き出された縒り線に、その自由度を妨げない形で直接半田付け。

族上がりのような風貌の後輩がハラハラしながら見入るのを尻目に、左右とも作業を終え、裏板をビスで元通りに閉め、改めてセッティング。

いざ音出しをすると、曇っていた高域がシャキシャキと歯切れよく響く。 中域、中高域にも張りが出てボーカルが生々しい。 モヤモヤしていた低域はエンドが伸びて引き締まった。 族顔強面の後輩は口髭を動かし満面の笑みで大感激。 メデタシメデタシである。

勿論、恒例の〝カセット (古い!) 録り〟も行い、○二○谷○荘の6帖で聴きまくった。



甲斐さん ・・・ 今でこそ穏やかで面白いオジさんだけど、以前は華奢で激しく、ラジオ番組で 「Ritche Blackmore みたいに、わざとらしいアクションは嫌い」 と言い放つ、 生意気でカッコいい青年だった。







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