ブルーベルだけど

君にはどうでもいいことばかりだね

夢のような住処

2015-06-28 01:02:29 | 日記
それは社会人 1 年目の夏頃。 研究所が東京から、隣接する某県北部の工業団地に移転するという説明があった。 秋には移転先見学バスツアーも開催され、いよいよ移転先近辺に社費で住処を探すこととなった。

もちろん、タダ同然の独身寮も準備されたが、建物内に同じ会社に勤務する人間が住んでいるのは好かんので、新しい社屋近くの 2路線 (と言っても、どちらも車で10分はかかる) のうち、東京に出やすい方の沿線駅近辺で探すことにした。

ブラジル勤務から戻ったばかりの T さんは、駅徒歩 5分程の場所の戸建て賃貸を借りた。 但し、トイレは汲み取り式 ! 僕と同じ薬剤師で、研究じゃなく弁理士担当だった O さんは、隣の〇〇原駅付近に借りてたけど、この駅、豪雨の際には水没して電車が止まったっけ。 まー通勤は車だから関係ないけど。

そうそう、移転当初は単身赴任を選択した直属上司の H さんは、余程寂しかったのか、時々、僕の部屋のドアを叩いて、近隣のバー (店名は何と “ 銀行 ” ) に誘ってくれた。

現地不動産業者は、巨大な工業団地竣工による移入バブルに沸いていたが、物件ニーズがイマイチ把握できないようで、「広めの部屋がいい」 と伝えると、年配女性が車で数十分もかけ、総タイル貼りの小さな五右衛門風呂風バスタブを備えた古民家を内見させてくれた。 東京での 20代独り暮らしが言う 「広め」 なんて、せいぜい 30 ~ 40㎡ だと思うんだけど。

そして、会社から紹介された不動産業者でも少々垢抜けたところから案内されたのがこれ。 偶然空室になったばかりなのか、一目見て入居を決めると、その場で図面を書いてくれた。 その物件は、結婚を意識し始めた彼女に会いに行くのに便利な、駅から 2分半。 かつて、これほどの駅近物件に住んだことはなく、現住居だって、あと 1分遠い。

手前の増築部分に年配女性の大家さんが住んでて、その上が僕の部屋。 時折年配男性が、フォトの様に車 (当時は初代マーチだった) を停めて、大家さんの部屋を訪れていた。 そうそう、家賃は大家さんに直接手渡しする方式。 時々忘れちゃって迷惑かけました。

この増築部分を除けば左右シンメトリーな建物で、正面向かって左半分には 1階と 2階に、それぞれ 1世帯ずつ、右半分は 1階が大家さん、2階が僕という位置関係にある。 アパートにして珍しく内階段で、内壁カラーは学校そのもののクリーム系ツートンだった。

フォトにある庭が 2台分の駐車場で、向かって左側が僕の契約場所。 極寒の頃は、深夜に車で研究所から帰宅すると、澄み切った天空正面にオリオン座が伸び伸びと輝いていた。 バックで車を入れ、ガラガラと伸縮門扉を閉じ、結構立派な階段室に目をやると、ちょっぴり誇らしい気分になったものだ。 階段で 2階に上がると、右手に僕の部屋のドアがあった。

ドアを開けると 3帖程のキッチン。  キッチンの左奥にある風呂は、二度寝して煮立たせたことが数回ある。 その風呂はキッチン外壁をぶち抜く形で増設されたようで、キッチンには必須となる換気扇がなかった。

流し台の対面 (入口側) には洗面台と、その右には水洗トイレ。 トイレはごく希に詰まって水浸しになった。 キッチンの右端、入口ドアから見て正面の襖を開けると 4.5帖の和室で、ここを寝室と定めた。

寝室入って左手、方角で言えば北側に網戸の付いた窓があり、この窓下に、大学 2年時に “ 西〇の家具 ” の特売で買ったベッドを置き、正面、方角で言えば東側の壁にライティングデスクを設置。 窓傍の通気口が開けっ放しで、その年の冬に喉を傷めてしまった。

寝室入って右手奥にある襖を開けると、そこは 6帖和室。 入って左手、方角で言えば東側は中ほどに窓を備えた壁で、ここにオーディオを置いた。 右奥は押入れ、入って正面にはフォトの通り南に面した大きな窓があり、大雨の際にその窓にほど近い天井から若干雨漏りすることを除けば、ごく快適なオーディオルームだった。

室内は結構ライブで、音場が小さく平面的な “ She's So Unusual ” が、どの曲も躍動感に溢れて響いた。(時には階段室まで (笑) ) 以前も書いたけど、“ TO FRANCE ” や “ take me with u ” なんかを聴いている時は概ね、この部屋にいるような錯覚に陥ってる。 当時は丁度、デジタルへの移行が本格的になっていた時期。

ある日秋葉原に出かけて石丸電気に立ち寄った際、たまたま店内模様替えの最中、かつてカートリッジが宝石のように並んでいたショーケースが階段近くに埃をかぶって放置されているのを見て、アナログ時代の終焉を知った。

今も鮮明に覚えているこの日は晩秋のような寂しさを感じながら、サテンM-20とデンオンのターンテーブル、テクニカのシェル、サエクのアームとコードで創り上げた大好きな音を一旦捨てた日でもある。 (あくまでも結果論だが、「一旦」 と記すことが出来て良かったと思う)

さて今回、社会人 2年目の記憶を紐解くこととなった理由は、この物件名とフォトが Google Maps に載ったから。 20 時を超えるとセブンイレブン前以外は真っ暗、というローカル色の濃い駅前だったけど、今となっては全てがいい思い出だ。 ともあれ、Googleさんに感謝。




ちなみに、家賃は当時 2.7万! 研究所内で仲間と家賃の安さを話題にしていると、現地で採用したパートさんから 「東京から来たひとが安い安いって言うから、家賃相場が上がって迷惑」 との苦言があったっけ。 あれから 30年 ・・・ 老朽化した姿は懐かしく寂しい ・・・ 。







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身近な未踏の空間

2015-06-19 10:51:42 | 日記
仕事で横浜方面に行くことが多いんだけど、だいたい “ 行って帰るだけ ” で、有名な場所にはあまり縁がない。 ラーメン博物館も、その 1 つだ。

意外に小さな建物。 到着した際、入口前には男性 1 人、続いてカップル 1 組、そして僕と仲間の 2 名、計 4 名。 施設側は、カウンターに女性 1 人、ゲートに男性 1 人を稼働。

まず入場券を買うのだが、券売機でもカウンターでも購入可能なのに時間がかかる。 4 名で既に渋滞だ。 誕生して 20 年以上経っているにもかかわらず、未だにシステム、インフォメーションを含む運用フローが稚拙であることに驚く。

客 4 名に対しスタッフ 2 名を配しながら、彼らの行う仕事は今時珍しい、思考を排した完全縦割り単純作業とは、余程儲かっているんだろう。 入場待ちの時間短縮で、もっと儲かると思うんだけど ・・・ 。

中に入ると、まずはミュージアム。 年表や海外進出の記事はともかく、販売しているグッズは一見しただけでは一般店で扱っているものと変わらず、“ ラーメン博物館 ” らしい商品は見当たらない。 年表は崩壊しかけの状態だ。 出店している店の名称、特色が書かれた壁の掲示を読み取り、目標を定めたところで地下へ。

地下は二重構造で、フォトの通り、天井はラスベガスのカジノの如く。 僕の幼少期より少し前の時代設定のようだが、不動産の入口や薬屋の看板、誇りっぽい建物は郷愁を誘う。 設定は “ 過去 ” なのだ。

最初に上層の店で醤油ラーメンを試す。 もう 1 店味わえるよう、食券販売機でミニサイズを選択。 店を入ってすぐ左手にあるカウンターに座る。 手前にある木枠のガラス窓を通し、目前に場内の景色が広がるという、なかなかの雰囲気だ。 程なくラーメンが出される。

味は、まあまあ。 美味いことは美味いが、わざわざ “ 博物館 ” と冠した施設に相応しいかどうか ・・・ まー好みもあろうが、仲間の意見も同様。

食べ終わると更に階段を下りる。 下階フロアはビアホールのようになっていて、これを扇状に取り囲む形で軒が並ぶ。 その景色は、かの昭和そのもの。 例によって、入口で食券を買い、店に入る。

選び入ったのは海外進出も果たしているという豚骨醤油ラーメンの店。 但し、注文したのは焦がし味噌ラーメン。

味は何だか微妙である。 「 日本人向けに創った味じゃないから仕方なし 」 、ということか。 ところで、先の店ともエアコンの効きが悪いが、時代背景をも再現してのことなんだろうか? 店内くらいは普通に快適であっても良いと思うが、客は皆汗だくだ。



感想は 「 1 回来れば十分 」 、といったところ。 オープン当初は、ハイレベルな店が揃っていたのかな? そうそう、券売機傍にいた店員さんの接客は、両店ともハイレベルでしたよ。




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オーディオの始まり <その4>

2015-06-13 20:43:39 | 日記
愛用の PHILIPS AD7063/M8 に続いて購入したのは、もちろん PHILIPS 。 今回は自作ではなく、某オーディオ専門店のオリジナルモデルだ。 左右ペアで 50,000円位だったろうか。

偶然見つけたダークブラウンのエンクロージャーと、ブルーのバッフル板とのコントラストが映えるそのモデルは、とあるビルの最上階にある大きなオーディオ専門店の壁一面に並ぶスピーカーシステム群の中にあって、紛れもなく光って見えた。

それは、PHILIPS AD9710/MC と PHILIPS AD0163/T8 。 極厚の板で組まれた 200L を超える重量級バスレフ箱の上端に、それぞれが寄り添うように取り付けられていた。 ネットワークは、ツィーター側にハイパスフィルターとして 2.7μF のコンデンサーをかませただけのシンプルな構成だ。

低音は密閉型の如く引き締まり、ゴリゴリとしてエッジが明瞭。 F0 から下は、だら下がり。 レベルは相当落ちるものの、かなり低いところまで再生できた。 中低音~中音はふくよか。 中高音~高音は線は細いものの素直。 但し粉末状の曖昧なトーンではなく、微細に砕いたガラスのようで、1 つ 1 つの音粒を描き切る力があった。

カタログに載る周波数特性は、PHILIPS AD7063/M8 にも増して平坦さを欠き、ノコギリ刃のようなピークとディップが連なっている。 その一方で、聴感上はフラットかつワイドレンジなのだから、オーディオって面白い。

そんなこいつは SATIN M-20 との相性が抜群。 針圧の微調整を終えて聴く “ 雨のウェンズデイ ” や、“ To France ”、更には “ Let's Go Crazy ” 及び“ Darling Nikki ” のイントロのキーボードは鮮烈、繊細でリアル。 これこそが僕にとって最高の音色。 今もこのトーンが、僕の “ Primary Standard ” だ。

このスピーカーをもって、僕のアナログオーディオは一先ず完成 ・・・ その後、研究所の移転で移り住んだ、某県 JR 某駅至近の 2K で、一緒にアナログの終焉を迎えることとなった。



そうそう、後日談が 2 つある。



1 つは、賃貸のテラスハウス暮らし時代の話。 当時、階段下に造作された押入れの扉を取っ払い、上段にこのスピーカーを含むオーディオ一式を納めていた。 そして丸く大きめのバスレフポートに、いよいよ長男の手が届くようになった頃、オモチャ紛失防止とスピーカー保護とを目的とした苦肉の策として、長男に言い聞かせたストーリーがある。

それは、「 穴の中にヘビが住んでる 」 というもの。 もちろん嘘である。 しかしながら、当時住んでいたテラスハウスは豊かな自然に囲まれ、庭の塀にヘビがぶら下がっている光景を目にしていたこともあって、小学校低学年の頃まで信じていたようだ。



もう 1 つは、ヘビの話から更に 20年を経た頃。 久しぶりに秋葉原を訪れた僕は、シャツをジーンズの中に収めた寡黙な若者達と共に駅構内の階段を降り、電気街口へ。 ホームも階段も出口も大学時代のまま。 そして脇目も振らず、正面の “ ○ジ○会○ ” ビルへ。

そそくさとエスカレーターに乗る。 そう、あの頃のように。 そして最上階へ近づくと、女の子の顔が見えた。 しかも金髪だ。 戸惑う心中に関係なく、エスカレーターは上がっていく。 その緩やかな動きに合わせ、目前に等身大フィギュアの全貌が姿を現した。

こりゃいかん! 「 万が一社員に見られたら ・・・ 」 などと焦りつつ、うつむき加減と速足とを駆使してビルを下りることにした。

そう、かつてその最上階には PHILIPS AD9710/MC 、 PHILIPS AD0163/T8 と出会った、あのオーディオ専門店が確かにあったのだ。 齢を重ねたビルは、過去を捨て去り、新しい時代を迎えていた。




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オーディオの始まり <その3>

2015-06-06 12:22:59 | 日記
“ ヨーロッパ トーン ” という言葉に憧れがあった。  この文字表現を最初に目にしたのは、 “ YAMAHA NS-690 ” の広告記事だったと思う。 記憶では、中学に入学した頃か。

それは白木を基調とし、ウーファー、ソフトドームのツイーターとスコーカー、アッテネーターの黒が映える、美しい姿をしたスピーカー。 その後にも先にも、この美しさを越えるものに出会ったことがない。

同じく YAMAHAの “ NS-1 classics ” や “ HARBETH HL5 ”、そして2年前まで愛用していた “ Victor SX-700Spirit ” の系列などはイメージが近いが及ばず。 ハイファイ堂で、日焼けしたボディに毛玉付サランネットを纏った中古を見かけると、買いたい衝動は尋常じゃない。

短期で手放した “ CORAL FLAT-6 ” の次に買った “ PHILIPS AD7063/M8 ” も、ある意味 “ ヨーロッパ トーン ” だ。 確か、左右ペアで 10,000円位だった。

実は、聴感上も実測上もレンジはナローで、フラットさを欠く。 帯域を欲張らず、中低域を膨らませた豊かな低音。 ふくよかな中音。 独特の艶が乗る中高音。 高音に至ると相当音圧が低下するものの、繊細さと、中高音の艶がこれを補っている。

“ 魅力的な音 ” と “ 癖のある音 ” は紙一重だ。 ブリティッシュロックなどでイコライジングした曲ではピーク・ディップがダブり、シンバルがパウダー状になったり、サ行が重くなったりすることもある。

こいつで聴く “ PHILIPS盤 Brandenburg ” は気品に満ち、小口径のフルレンジとは思えないほどの厚みとリアルさがあった。 ストリングスだけでなくピアノも得意 ・・・ などと言うと万能のようなイメージだが、ロックは今一つ。 やはりクラシック向けだったように思う。 古い録音を朗々と歌わせる点も魅力の 1 つ。

そうそう、こいつを収めたエンクロージャーは白木。 白木のバッフルと、八角形のフレーム、ブルーがかったダークグレーのコーンとのコントラストは、 “ YAMAHA NS-690 ” に次いで美しかった。 誤ってサブコーンを潰してしまい、加えて新たなユニットへの好奇心もあって、買い替えることとなったが ・・・ 。


もしも劣化なく健在なら僕のオーディオはこのままで良かったのだろう ・・・ 心からそう思える素晴らしいユニットだった。



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