中東最大の国家エジプトで、中東の春が起きてやっと総選挙が行われた。中東の春、革命を起こしたのは若者たちである。
ムバラクを倒してみると、大統領選挙に残ったのは、ムバラク
の最後の首相だった男と、旧イスラム勢力であるムスリブ同胞団の一騎打ちとなった。
革命を起こした若者たちの声はかき消されてしまった。両大統領候補は、お互いの勝利宣言をする、奇妙な事態となっている。どちらが勝利しても、しころは大きくなるばかりである。
選挙直前には、暫定統治の軍が都合の良い憲法をつくってしまった。また同時に、ムバラクが危篤との報道がなされた。大
統領選挙に依然として一定の人気がある、ムバラクの病状を公開して、相手候補に圧力をかけたと思われる。
せっかくムバラクの独裁体制を崩壊に追い込んだ若者たちであるが、母屋を取られた形になっている。女性の権限も見直されることはないだろうし、公開された民主体制は権力者によって、再び隠ぺいされる体制になるのではないか。
民主主義に最善はなくいつの時代もどの国でも、為政者が都合よくふるまうのが常である。エジプトのこうした混迷は、他の国のアラブの春に大きな影響を与えている。とりわけ、シリアなどは、隣国イラクの内戦状態を見ているので、混迷を嫌う民衆が、独裁を望んでいるとすら思われる。
中東の情勢が安定するためには、何より石油の枯渇が前提になる。石油がある間はこの混迷が続くであろう。民主化は相当先のことになる。