東北大震災から十一年になる。震災被害だけなら、誰もが手をつなぎ未来を見ることも出来ただろうに。原発事故は禍根というには余りにも巨大な傷跡で、人知を超える時間を提示され、人々や地域に黒い影を落とす。
爆発事故を起こした福島原発の最大の取り組み、もっと言えばほとんどの作業は汚染水の処理のためといえる。その汚染水対策は、東電の経営を揺るがすため公表することもほとんどされていない。
そもそも海岸段丘の上部を削って砂上に滑走路を作り、更にその下の固い地層を削って、砂地の上に建設されたのが福島第一原発である。
東北大震災で事故を起こす以前から、福島原発は日々地下水との戦いであった。湧水が止まることがなく、やむなく施設を迂回させて海洋垂れ流しをしているだけの対策で乗り切っていたのであった。
そもそもこの福島原発の建設にあたって、立地条件をまともに検討したとは思えない。削って削って砂地を露わにしたのであるが、そのことがさらなる湧水を招くようなったのである。
そこに東北大震災による爆発事故である。地下水などの海洋流出を防ぐために、幾度も遮蔽壁が検討されたが、膨大な工事になるため必要工事に位置付けると、東電はたちまち債務超過になってしまうのである。だから黙っている。だから汚染水対策に正面から取り組めない。
目が眩むような汚染水貯蔵タンク群は1,000基を超え、当然ながら現在も増え続けている。政府はこの汚染水を、トリチュウムは何処でもやっていると海洋放出を決定した。
世界の基準から日本の原発があるいは原発ムラが異常なのは、事故が起きることがないとして建設された経過がある。日本は世界一安全な原発であり、技術大国日本の原発はソ連などとは違うと言い続けてきた。
トリチュウムについては発がん性など多くの疑問が残っている。海洋放出では漁業被害も起きるだろう。
そもそもこのように虚偽を重ねた企業や関係者、原発ムラを信用できるはずもない。海洋放出が可能になると次に何をしてくるかわかったものではない。汚染水のタンクは無限に貯蔵することで、原子力ムラの新たな虚言を抑え込むことが可能になる。
汚染水を海洋放出などしてはならない。
NHKニュースでは事故処理とは言わずに廃炉作業とアナウンスしていることを考えれば事故は終っていて福島原発の課題は廃炉作業がメインだとの印象付けを強く持つ。
もちろん廃炉への準備は必要な作業であるけれども、この原発の事故は今も進行中であって止まってはいない事を国民は知っておくことが大事だ。
2012年に冷温停止と宣言したもののメルトダウンした原子炉内部の状態は全く分からないまま11年経っている。
このまま汚染水を出し続けるだけなのか、何時また再臨界の危機に直面するも分からない状態のままだ。
トリチウムを含む汚染水ぐらいは大丈夫と海洋放出を一旦許してしまうと次はもう少しレベルの高い放射性物質も良いのではとなりかねない。
現に幌延の地下処理研究施設では小出し小出しに研究機関の延長をしたり、多国間の国際研究を言い出し始めている。
この国の行政形態はこういった協定破りのような事を平気でやっていく体質が隅々まで染みわたっている。特に原子力ムラと言う所は顕著だ。
汚染水の海洋投棄は絶対悪。