そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

ヨーロッパに民族の血統というものは存在しない

2022-06-14 | 民族
上の図は、2021年時点の最新のゲノム解析によって行われた新石器時代から青銅器時代(概ね5000年前)になるころの、ヨーロッパ地域での人(ホモ・サピエンス)の拡散状況である。すでに、ホモ・サピエンスと交雑していたデニソワ人もネアンデルタール人も、絶滅して久しい。
以下は、人類学のゲノム解析の国内第一人者の、篠田謙一著:「人類の起源」古代DNAが語るホモ・サピエンスの「大いなる旅」中公新書:1,056円(税込み)を引用したものである。
シークエンサー(アミノ酸配列決定機器)の劇的な発達によって、ゲノム解析が急速に進んだ。これまでの人類学が形態や風俗などでの推測の域を出なかった歴史は、科学的に否定されたり決定される時代になったのである。
青銅器時代が始まるころ、ポントス・カスピ海草原のヤムナヤ文化が西に拡散していった。ポントス・カスピ海草原とは、上図大きな斜線地域の東アジアのステップ地帯である。
その中枢となったのが、現在のウクライナで牧畜を主体とするヤムナヤ文化である。ヤムナヤ文化は、車や馬を利用することで牧畜文化が農耕文化を凌駕し急速に拡散し、ヨーロッパ文明の礎を築いていった。多くは北東、中部ヨーロッパに分布し、縄目文土器文化と呼ばれる。
現在に続くヨーロッパ人の文化や地域差は、基本的にはこの青銅器時代(5000年前)の農耕民とヤムナヤ文化の混合の仕方に起因するものでしかない
『人々の持つ遺伝子は、歴史の中で複雑の絡み合っていて、「民族の血統」などというもの実体などなく幻影にすぎない。』と篠田氏は断じる。
かつて今では存在すら危ぶまれるアーリア民族なるものの、優位性を口実に、ユダヤ人を大量殺害し周辺国を侵略したヒトラーは、非科学的な思い込みでしかない。
全く同じように、今日のプーチンのウクライナ侵略理由に根拠がなくなる。それよりヨーロッパ文明の揺籃はウクライナだと聞いたら腰を抜かすだろう。それとも承知の上かもしれないが。
民族の純潔性などというものはせいぜい数千年前のものでしかなく、科学的に分類不可能なものである。しかし、風土が生んだ文化や歴史や宗教は、国家を作り制度や経済を支え、人々の心の拠り所になっていることまでは否定してはならない。
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