そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

中国が計画の100万頭のクローン肉牛生産工場は必ず破たんする

2015-11-25 | 中国
AFP通信によりますと、中国の天津市北部の港湾地区で、世界最大の動物クローン工場の建設が進められているということである。犬、馬をはじめ、年間最大100万頭の肉牛を大量生産する計画で、インターネット上の世論や科学界に懸念が広がっている。
2億人民元(約38億円)が投じられる施設には、クローン実験室や遺伝子バンクなども含まれる。工場を設立するのは、中国のバイオテクノロジー企業「無錫北大博雅控股集団(博雅幹細胞):Boyalife」と韓国のスアム生命工学研究院(Sooam Biotech Research Foundation)、と中国の二つの研究機関である。
今回設立される動物クローン工場では、ペットや警察犬、競走馬、畜牛などをクローンで作り、商業規模で市場に流通する予定だという。肉牛のクローン胚作製は年間10万頭分で、その後、100万頭まで増やす計画だということである。
クローン肉牛は通常の繁殖などと異なり、味が良くて飼料効率などが優れている個体の細胞から、理論的には全く同じ遺伝子を持った個体を作ることである。クローン家畜の安全性は何も証明されていない。世界の何処も実験や研究所内以外では行われていない。ましてや市場へ出すことを目的に、中国がクローン肉牛を大量に生産するというのは前代未聞である。
この技術とは関係はないとは言うものの、ここは今年夏に165名(以上)もの人が亡くなった、原因不明の巨大な爆発が起きた工場周辺でもある。それでなくても、中国の食品の安全性については、多くの疑問を抱えるところである。
更には韓国のスアム生命工学研究院は、2005年に幹細胞論文ねつ造事件を起こし、人のクローン細胞を作ったと虚偽の論文を発表した、黄禹錫元ソウル大獣医学部教授が主導する研究所である。何ともいかがわしい限りである。

全く同じ遺伝子を持っていても、優良な肉牛生産には飼養管理の技術が大前提になる。中国では日本の飼育管理技術を研究しているようであるが、遺伝子だけが牛肉を作りだすのではない。更には、肉牛に給与する穀物などの飼料の獲得はどうなるのか不明のままである。肉牛の仕上げまでの穀物の必要量は概ね4トン必要になる。100万頭となれば、単純計算でも400万トン必要になる。どうして調達するのだろうか?世界穀物価格を引き上げることになり、中国自身が高い買い物をしなければならなくなる。
もっと重要なのは、クローン牛肉に市場性はあるのか極めて疑問である。こうした極めて困難な諸問題は、多分解決できていないであろう。

中国は現在畜産の生産に強く肩入れしている。内モンゴル自治区では、300頭以上の乳牛を飼育する施設を作る場合には、80万元(約1600万円)中央政府が給与するというのである。牛乳では、メラミンを混入させ乳質評価を上げた大事件があった。乳幼児が何名か死亡したり、盲目になっている。混入を指示した3名が死刑に処されている。(それも怖ろしいことである)
植物と異なり、畜産物の生産は単純ではない。投資から資金回収までの時間も相当ある。支える技術も並大抵ではない。結論から言えば、必ずこの計画は破たんすると断言することができる。
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