僅か12年で中国の軍事費は、1200億元から6500億元と実に5倍になった。驚異的な数字である。経済の伸びをはるかに上回る突出ぶりである。今や世界第2位の軍事大国になった。現実に周辺諸国と、少数民族に対してその威力ぶりを存分に見せつけている。
この中国は今年指導者が変わる。習近平が最高指導者になる。温家宝は、初めて経済成長の目標を8%から0.5%ダウンさせ7.5%とした。
その理由は。高所得者に対する課税強化と、地方への投資をするためとされている。EUをはじめとする経済停滞から、国内需要と購買層を厚くするのは、もっともな話である。このことが、社会保障の充実や賃金格差の是正に、つながればの話である。
中国は経済発展によって、様々な矛盾を封じ込めてきた。問題解決を金の力で先送りしてきたともいえる。その一方で、亜ありにも大きな矛盾・問題を抱えている。
汚職腐敗蔓延の官僚組織となっている国家体制。貧富の格差による不満。その表現に対する力による規制。少数民族問題。最近にチベットでは焼身自殺が絶え間なく起きている。そうしたことへの報道規制。インターネット規制。物価高、とりわけ高騰する食料品。
さらには、民主化問題である。国家に反論する言論の存在を認めない体制は、経済発展には極めて有利なやり方である。国家としては甘い汁である。言論の封じ込めやネット規制は、今後さらに強化されるであろう。
冒頭述べた軍事力の拡大は、これから中国が発展するために、どうしても欠かせないものであると判断したと思われる。国家は軍事体制であるとするレーニンを、踏襲しているのではないか。
暴力装置の強化は、いかなる言質を重ねようとも、明らかに非民主的・非国民的体制の道を中国が歩み始めたといえる。