高速道路料金を巡って政府が混乱している。今回も国民の声だと馬鹿し乗り込んだ小沢一郎の剛腕と、これを拒否した前原国交大臣との凌ぎあいとも見える。図式的にはとても面白い。
これは、民主党政権がマニフェストで高速道路を原則無料化を打ち出しておきながら、無料化で恩恵を被る人たちと、それでは困ると主張する人たちの双方に良い顔をしようとするからである。高速道路建設を推進したい人たちと、無料化を望む人たち双方の票を欲しいからではないか。
鳩山首相は、小沢幹事長が『国民の声だ』と乗り込んでこれをその通り受けてしまった。見直す方向に舵を切った。ところが、頭越しにやられた前原大臣はこれも猛反発した。鳩山に辞任を覚悟でこれを拒否した。鳩山首相はオロオロしながらも、前原大臣の言い分を呑んだ。鳩山があちらにもこちらにも、良い顔をしたからである。
政策決定の一元化を掲げていた民主党のはずであった。にも拘らず、小沢が暫定税率の実質復活をねじ込んだのを、今回も再現したかったのであろう。これは明らかに、政策決定の2元化と言えるものである。マニフェストに違反する、高速道路料金体系にクレームをつけるくらいなら、先のねじ込みは何だったのであろう。小沢はこの後、前原を非難する演説を行っている。
民主党はとても人の良い人物をトップに据えてしまった。この方は、友愛とか命を守る政治とか、実態を伴わない演説が得意なようで、政策決定でも同様の抽象論が主体になってしまう。前原が短期的な実験であるというのであるから、首相はこれを見守るか後押しするべきなのである。普天間問題も、高速道路料金も同じことである。
その一方で、かなり官僚に食い込むことになる事業仕分けが又始まる。こうした本質的な政府の動きとは無関係な雑事が膨らみ過ぎている。金の問題や基地の問題も同様である。こんなものは、政府の仕事の傍流でしかないはずである。あちこちへ笑顔を見せるから混乱が生じるのである。