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もやもや日記

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「マカールの夢―クリスマス物語―」

2009年05月11日 | 読書日記ーロシア/ソヴィエト


コロレンコ 中村 融訳
(『世界文学大系93 近代小説集』(筑摩書房)所収)



《あらすじ》
クリスマスの前夜、厳寒の密林に迷い込んで死んだマカールは、数年前にやはり死んだはずの顔見知りの僧侶イワンに連れられて、主のもとへ行く。裁きを受けるマカールは主の面前で自身の生涯について語るのだが……

《この一文》
“一方、自分とても他の人々と同じように――大地も空も映している澄んだ、明るい目や、世のすべての美しいものに向かって開かれようとしている純真な心をもって生まれたのだということを承知していないはずはない。だからもし、今自分がおのれの暗い、恥ずかしい姿を地下にでもかくしたい気になったとしても、それは自分の罪ではない……では誰の罪か?――これは自分にはわからない――ただ自分にわかるのは、おのれの心の中では辛抱もついにしきれなくなったということだけなのだ。”



なんとも奇妙な味わい。不思議な感触です。これは、たしかに夢らしい。泣きながら目を覚ますときのような、あのやたらと悲しい感じ。

予想していた以上に、印象的で、面白い短篇でした。かなり面白かった。私がものすごく好きなタイプのお話です。素朴で淡々としていますが、非常に幻想的で美しい。特に、最後の場面は素晴らしいです。あの終わり方……! ああ、悲しくて、優しい話だ、と同時に静かに怒っているようでもあり。なんとも言えない気分です。

マカールが死んで、その生涯を裁きにかけられるとき、彼は自分の一生涯についてを説明させられるのですが、このあたりマカールと主とのやりとりがとても興味深いので、色々と熟考できそうなのですが、なんだか今はうまく考えられません。ここを深く考えたら、きっと面白いだろうとは思うのですが……。今は、この夢の余韻が胸にいっぱいで、あまりものを考えることが出来ません。


私は夢の話が好きです。異常に心惹かれます。内田百の諸作品、夏目漱石の『夢十夜』、ルイ=セバスチャン・メルシエの短篇「血税の島」なども猛烈に面白かった。私はこういう、ちょっと薄暗くて不気味、色鮮やかで幻想的ななかにも少し皮肉の風味が感じられるような夢の話を特に好みます。ここへ新たにこの「マカールの夢」も、お気に入り夢物語リストに追加しておきましょう。
他にも素敵な夢物語をご存知の方、どうか私に教えてくださいませ。あなた自身の夢のお話でも構いません。私は、どうしてだか、夢の話が好きでたまらないのです。