コロレンコ 中村 融訳
(『世界文学大系93 近代小説集』(筑摩書房)所収)
《あらすじ》
クリスマスの前夜、厳寒の密林に迷い込んで死んだマカールは、数年前にやはり死んだはずの顔見知りの僧侶イワンに連れられて、主のもとへ行く。裁きを受けるマカールは主の面前で自身の生涯について語るのだが……
《この一文》
“一方、自分とても他の人々と同じように――大地も空も映している澄んだ、明るい目や、世のすべての美しいものに向かって開かれようとしている純真な心をもって生まれたのだということを承知していないはずはない。だからもし、今自分がおのれの暗い、恥ずかしい姿を地下にでもかくしたい気になったとしても、それは自分の罪ではない……では誰の罪か?――これは自分にはわからない――ただ自分にわかるのは、おのれの心の中では辛抱もついにしきれなくなったということだけなのだ。”
なんとも奇妙な味わい。不思議な感触です。これは、たしかに夢らしい。泣きながら目を覚ますときのような、あのやたらと悲しい感じ。
予想していた以上に、印象的で、面白い短篇でした。かなり面白かった。私がものすごく好きなタイプのお話です。素朴で淡々としていますが、非常に幻想的で美しい。特に、最後の場面は素晴らしいです。あの終わり方……! ああ、悲しくて、優しい話だ、と同時に静かに怒っているようでもあり。なんとも言えない気分です。
マカールが死んで、その生涯を裁きにかけられるとき、彼は自分の一生涯についてを説明させられるのですが、このあたりマカールと主とのやりとりがとても興味深いので、色々と熟考できそうなのですが、なんだか今はうまく考えられません。ここを深く考えたら、きっと面白いだろうとは思うのですが……。今は、この夢の余韻が胸にいっぱいで、あまりものを考えることが出来ません。
私は夢の話が好きです。異常に心惹かれます。内田百の諸作品、夏目漱石の『夢十夜』、ルイ=セバスチャン・メルシエの短篇「血税の島」なども猛烈に面白かった。私はこういう、ちょっと薄暗くて不気味、色鮮やかで幻想的ななかにも少し皮肉の風味が感じられるような夢の話を特に好みます。ここへ新たにこの「マカールの夢」も、お気に入り夢物語リストに追加しておきましょう。
他にも素敵な夢物語をご存知の方、どうか私に教えてくださいませ。あなた自身の夢のお話でも構いません。私は、どうしてだか、夢の話が好きでたまらないのです。
夢が題材の小説って本当にたくさんありますよね。有名なのを挙げても仕方ないですが、『真夏の世の夢』しかり、ボルヘス『夢の本』、シュニッツラー「夢小説」、ノディエ「スマラ」、『クリスマス・キャロル』、ネルヴァル『オーレリア』、国書刊行会のアンソロジー『書物の王国 夢』など、たくさんありますよね。
ロシア文学だと、いま思いつくものとしてはクズミーン「フロルスと賊と」(森鴎外『諸国物語』下、所収)、ツルゲーネフ「夢」(『ロシア神秘小説集』所収)。
あとたぶんもうお読みだと思いますが、小川未明「野ばら」と、余りにも有名な児童文学の名作、浜田広助「むく鳥のゆめ」は個人的に好きです。「野ばら」は夢が主体の話ではありませんが、それが効果的に使われてますよね。ちなみにこれ、アニメ化されていることはご存知でしょうか。瀬戸物を使った人形アニメが存在します。かなり綺麗なアニメーションです。
少しマイナーなのだとイスマイル・カダレ『夢宮殿』があります。夢が管理されている世界での物語。
そうだ、肝心なのを忘れてました。なんと言ってもパヴィチ『ハザール事典』です。これは「夢の狩人」の物語。もうお読みでしょうか。怪奇と幻想、ロマンティシズムの同居した、抜群におもしろい小説です。
あと、「あれは夢だったか」という語句が反復される箇所があったと記憶しているアンジェイェフスキ『天国の門』は、ぼくの中での10大小説の一つ。夢が題材ではないですが、なんとなく夢を見た後のような気分にさせてくれます。
『フランス幻想文学必携』には夢が題材のフランス小説がいくつか紹介されています。
『銀河鉄道の夜』は夢の話に分類できますが、それのアニメーションもなかなかいいです。あとアニメ版『ねこぢる草』も夢の話、だったと思います。これは見事な作品です。
人様のブログなのにこんなに書いてすみません。とりあえず今思いつくものを挙げてみました。一番のお薦めは『ハザール事典』です。でももうお読みかもしれないですね…
幸い(?)お教えいただいた作品は、ほとんど未読です!!
小川未明「野ばら」とノディエ「スマラ」は読んだかな……でもまったく内容を覚えてないからほとんど読んでないも同然です; シュニッツラーとネルヴァルは読もうと思いつつ、まだです。あとは初めて聞いた作品ばかりですね~~。面白そう♪ アンジェイェフスキは『灰とダイヤモンド』の人でしたっけ? 『天国の門』のほうがタイトル的には面白そう…!
「ハザール事典」はおそらく部分的に読んでるっぽいですね。『東欧怪談集』に入っていたような気がします。……でも忘れた!(私って……;)
『銀河鉄道の夜』はアニメ版のDVDを持っているのに、まだみてなくて。猫のやつですよね?『ねこじる草』って初めて聞きました。どういうのだろう。調べてみまっす!
いやはや、大変貴重な情報をありがとうございました~♪ 探して読んでみます(^^)
漫画だとウィンザー・マッケイの『眠りの国のリトル・ニモ』(アニメもあり)や柊あおいの『ユメノ街 猫の男爵』なんかがありますよね。
ちなみに『銀河鉄道の夜』のアニメ版は猫ですが、『ねこぢる草』も猫です。可愛くもちょっと不気味なお話。なんかntmymさんは好きそうですね。
『雲のむこう、約束の場所』も夢、というか眠りの話でしたね。
夢といえば安部公房の『カンガルー・ノート』なんぞもいかがかなとふと思ふ。夢過ぎる!
『銀河鉄道の夜』アニメは、絶対ntmymさんが気に入るぞっていうステキなシーンがありますが、ナイショにしておきます。ふふふ。
一番書きたかった事を書き忘れてしまい^^;
ボケておりますが・・・
鈴木清順の映画『ツィゴイネルワイゼン』はご覧になってますか?ますよね?ですよね?内田百ですし。。
*ペーチャさん
『リトル・ニモ』、面白そうですね。それに、柊あおい、銀河鉄道の夜、ねこぢる草……猫づくし。うふふふ。たしかに、いかにも私の好きそうな感じです。
『雲のむこう』を観れば、新海さんのはだいたい観たことになるのかな。観なくては!
*manimaniさん
『カンガルーノート』! あー、あれは夢ですね! なんていうか、悪夢~~(^^;) うんうん、確かに面白いです。『銀河鉄道の夜』は早く観なきゃですね。いや、手元にあるんですけどね…;
あ、『ツィゴイネルワイゼン』は百先生のだという話を聞いたことがあったので、いつか観ようと思って、そのまま忘れていました……; 思い出させていただいて、ありがとうございます!