9:00 この日の朝は10:00に集合の予定だったが、三人とも早起きをしてしまったので、1時間繰り上げ集合ということになった。場所は私が日頃から通い詰めているミスター・ドーナッツ。コーヒーなどを飲みながら、昨日H嬢が私の作ったものを見たいとかなんとか言っていたような気がしたので、前回の手作り市で大量に売れ残った品物をいくつか持っていって見せてみた。意外にも、H嬢は「
お馬のトーシカ」を気に入ってくれ、彼はめでたく御殿場へもらわれてゆくことになった。「
針山のネズミ」はU嬢のところへ行き先が決まった。ついでに「
モデュラスのバッグ」も。二人ともありがとう! トーシカもネズミもモデュラスも一生懸命にお仕えするのだよ。
その後、朝から「人はどう生きるべきか」というようなことについて激論になる。我々は三人が三人ともに丸っきり意見が違うけれども、私はそれだから楽しい。私の意見とかれらの意見が違うために、もっと考えないといけないんだと、これまでも何度となく思わされてきた。世の中の一般的な尺度に照らし合わせても、私は非常に甘ったれた思想の持ち主であるにも関わらず、二人ともよくぞ10年も付き合ってくれました。懲りずにこれからもよろしく。つまり、私が言いたいのは、私の今の状態は理想とは程遠いけれど、それをちゃんと認識した上で、現実の情けなさや弱さというものを何とか引っ叩いて目指す方向に近付けようとするのが闘うということだと思うわけです。自分の弱いところは無視も抹殺も出来ないのだということが、私は30年かかってようやく分かりそうです。私が「変わった」ように見えるとしたら、多分そのせいです。自分の弱さを自覚して、これは決して「弱いままでも良いのだ」と諦めることとは違います、むしろ、それを引き摺ってどうにかして鍛えない限りは(これは、無茶をすることとも違うと思うのですが)自分はおろか他人の幸福のことなど考えられないのではないか(弱さというのは思っている以上に破壊力のあるものです。その被害は自分だけに留まらず周囲をも巻き込んでしまうものだと私は思っています)、そしてまた、たとえ直ちに理想通りの強さを得られず現実がうまく運ばないとしても、そのことで理想がいくらかでも磨り減ったり汚れたりするものでもなく、それを掲げて進もうとすること自体になんらかの意味があるはずだ(あるといい)という発想を得たからです。そういう意味で、「自分を幸福(つまり理想をこう呼ぶならば)にするのは、自分自身でしかない」と言いたかったわけなのです。まだまだ未熟で不完全かつ相変らず身勝手であまりに抽象的な考えかもしれませんが、そのへんはまた議論しましょう。
12:00 ミスドで盛り上がり過ぎて、気が付くともう昼だった。とりあえず梅田へ出て、昼食を取ることにする。ヨドバシの上階のレストラン街でわっぱ飯を食べた。並ぶ時に店の人に名乗ったら「ノタさま、どうぞ」と言われる。また聞き取ってもらえなかったか……。私の発音が悪いのだろうか。とまた悩む。
食後、長い長い地下通路を通って、展望台のある梅田スカイビルへと向かうが、展望台には登らないで(私は高いところが苦手なので助かった)、映画館のチラシを眺めてうろうろした。「かもめ食堂」が面白そう。あ、ギリアムの最新作もやるのか! このスカイビルの地階は、なんだかレトロ調な町並みを再現した飲食街になっている。ちょっと楽しそう。外に出ると、築山に植えられた木々の間に小さな滝が作られていて、これまた小さな橋を渡ることなども出来る。スカイビルというのは、こういうところだったのか。
それにしても、この日は昨日とはうってかわって暖かな、むしろやや暑いとさえ感じられる春の陽気である。私は上着を脱がなければならないほどだ。
14:00 阪神電車の改札口近くのジューススタンドで、大阪と言えば有名な「ミックスジュース」を飲む。今日のような日には、こういう飲み物は冷たくて、ほんのり甘くて美味しいではないか。一息ついた後、H嬢とU嬢は、じきに誕生日を迎える私のために、何か贈り物をしてくれるという。忘れていても構わないのに……。しかし、ありがたいことだ。本を買ってもらおうかとも思ったが、本屋へゆく途中の雑貨屋で素敵なものを見つけたので、それを買ってもらった。写真はそのランタン。最高に素晴らしい贈り物をどうもありがとう。中に大切な灯をともして持って歩くというのは、どことなく象徴的ではないですか。しかも、私が以前から憧れていたそのままの形(そう珍しい形ではないけれど)なので、一層嬉しいですよ。大切なものをしまっておくのに使います。
15:30 歩き疲れて喫茶店を探すも、梅田は異様に混んでいて、しかも適当な店がないのでいつも参ってしまう。結局随分歩いてサンマルク・カフェで休憩することにした。ここも鬼のように混んでいる。まあ、日曜だからな。またおしゃべりを再開して、二人が口を揃えて言うので、私はエンデの『モモ』を読まねばならないと思う。いや、いつかは読まねばとは思っていたのだけれど。
17:00 新大阪まで見送ろうと思ったが、ここでいいというので梅田で二人と別れた。何となく、寂しいような気もするけれど、半年後には確実にまた会えるので、その時を楽しみにすることにした。それまで元気で。楽しい2日間をどうもありがとう。