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もやもや日記

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『フランス短篇傑作選』

2005年01月24日 | 読書日記ーフランス
山田 稔編訳(岩波文庫)


《内容》

長篇小説の国フランスでもいま短篇小説が注目されつつある。
作家たちは「フィクション芸術のエッセンス」とよばれるに
ふさわしい表現を目ざして芸を競い、おのれのエスプリを証
明する場として短篇を書くのだ。本書所収のリラダン、アポ
リネール、デュラスら、世紀末から現代にいたる作家たちの
技の競演に、読者は堪能されるにちがいない。


《この一文》

” はみ出るはらわたを両手でおしこみながら、彼は横になった。
  この工夫をたいそう面白がって、彼女は湯気の立つ虹色のはらわたのなかにバラ色のかわいらしい足を突っ込み、まあ、と小さくさけんだ。
  なかがこんなに温かいとは思いもしなかったのだ。 
      --「親切な恋人」(アルフォンス・アレー)より  ”


色々な作家の短篇が収められている本というのは、お得な感じがしてよいですね。
他にマルセル・シュオッブ(確か別の本で読んだ『黄金仮面の王』とかいう話が強烈に面白かった)、ヴィリエ・ド・リラダン(『未來のイヴ』の人)、アナトール・フランスなどなど、有名どころが目白押しです。
引用したアルフォンス・アレーの「親切な恋人」はこの部分だけ読むとホラーなのかと思いますが、実際はとても素敵なファンタジーです。
虹色のはらわた!
私はどうもこういう表現に弱いようです。
昔、こんなことを言った人がいました。
「この間、アップル社の抽選に当たって記念式典でリンゴの模型を一口かじる役をしてきたんだよね。これ、その時記念に貰った腕時計」
彼はアップル社の一口分欠けた七色リンゴのマークが入った腕時計をしていました。
しかし、なんて嘘くさい話!
もちろん、私はここまでは信じていませんでした。
でも少し面白そうなのでそのまま聞いていると、
「そのリンゴは、かじるとバナナのような味がした」
「!!」
最後の一言に私はすっかり魅了されてしまいました。
美しい文章です。音の響きも内容もいい。(と思うのは私だけだとしても)
この一文のために、あれから7、8年は経っていますがあの日のことを忘れることができません。