宮沢賢治 (新潮文庫)
《あらすじ》
貧しく孤独な少年ジョバンニが、親
友カムパネルラと銀河鉄道に乗って
美しく哀しい夜空の旅をする、永遠
の未完成の傑作である表題作や、「よ
だかの星」「オツベルと象」「セロ弾き
のゴーシュ」など、イーハトーヴォの
絢爛にして切なく多彩な世界に、「北
守将軍と三人兄弟の医者」「飢餓陣営」
「ビジテリアン大祭」を加えた14編を
収録。賢治童話の豊饒な醍醐味をあ
ますところなく披露する。
《この一文》
” 河原の礫は、みんなすきとおって、たしかに水晶や黄玉や、またくしゃくしゃの皺曲をあらわしたのや、また稜から霧のような青白い光を出す綱玉やらでした。ジョバンニは、走ってその渚に行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらちらと燃えるように見えたのでもわかりました。
---「銀河鉄道の夜」より ”
色がとても美しいです。
こんなふうに透明な美しい言葉を遣ったならば、世の中はもっと美しく目に映るような気がします。
いろいろな悲しみを想像するならば、言葉は美しくならざるをえないのかもしれません。
もし、そうやって話すことができるようになったら、何気ない私の言葉に傷付くひとはいなくなるでしょうか。
「銀河鉄道の夜」を読むたびに、そんなことを思います。